主人公芹澤は食品メーカーの人事・総務担当の常務。将来の社長候補だった。埼玉営業所の小堺次長が顧客情報を紛失した。懲戒解雇を考える芹澤。しかし小堺の妻珠美から連絡があり、ぜひ芹澤に伝えたいことがあるというので会うことにした。そして美しい珠美と関係を持ってしまう。それから小堺と珠美に脅されることになってしまった。そんな珠美との関係が、芹澤の無色の人生に彩を与えることになって…
「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」など、なんとも言えない白石ワールドが好きだ。ありそうな、なさそうな、リアリティが妙にあるような、それでいてないようなストーリーに独特の哲学を織り込む。大人の恋愛小説だと一応言ってよいと思う。あるいは、一人の女性が連れて行ってくれる、冒険小説とも言える。
様々な言葉がじーんと残る。
ふむ。だとすれば最初から愛情など抱かないほうが幸せになれるのだろうか。それとも心を蝕むのが人間の運命なのだろうか。
人は慣れる。ということか。
当たっているかもしれない。ラグビー五郎丸的に言えば、ルーティンとともに生きるということ。女性はどうなのだろうか。
仏陀とキリスト。人類などいないほうが世のためだということか。
過去の自分に治してもらう。なるほど。
この美人局のような珠美と言う女性が、実はすごくいい。ある種の理想の女性であり同時にまたファムファタールでもあるんだけれど。でも彼女こそがいい女って感じがする。
小さな事件の積み重ねによる、大人の恋愛+冒険小説。とても良かった。
今日の一曲
ずっとこの曲が脳内を流れていた。スガシカオで「愛について」
では、また。
「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」など、なんとも言えない白石ワールドが好きだ。ありそうな、なさそうな、リアリティが妙にあるような、それでいてないようなストーリーに独特の哲学を織り込む。大人の恋愛小説だと一応言ってよいと思う。あるいは、一人の女性が連れて行ってくれる、冒険小説とも言える。
様々な言葉がじーんと残る。
人と人のあいだに生まれる愛情という貴重な財宝は、ひとたび小さなひび割れが生じると、価値を失ったり減じたりするのではなく、そこから次第に腐敗が進行し、最後には猛毒に変じて、私たちを蝕み、苛み、破滅させる。
ふむ。だとすれば最初から愛情など抱かないほうが幸せになれるのだろうか。それとも心を蝕むのが人間の運命なのだろうか。
父と母が別々に暮らす道を選んだのは、結局、自分たちの罪を相手に擦り付けて、それをそのまま定着させたかったからだ。そうすれば自分の責任を常に軽くしていられるからね。
「一度結婚すると、独り身は耐えられないみたいよ」香代子は言い、「あなたみたいに独身が長いと、今度は誰かと一緒に暮らすのが耐えられないんだろうけど」
人は慣れる。ということか。
不惑を過ぎると、「男は、習慣と結婚する」と言う
当たっているかもしれない。ラグビー五郎丸的に言えば、ルーティンとともに生きるということ。女性はどうなのだろうか。
この世界は、子供のいる世界と子供のいない世界の二つに分かれていると私はずっと思ってきた。人間は大人になると「子供のいない世界」に身を置くようになるが、その大半が親となって、再び「子供のいる世界」へと舞い戻っていく。
釈尊は妻子を捨てて悟りの道へと踏み出し、自らの弟子たちに妻帯を禁じた。もちろん子供を持つことも許さなかったし、殺生全般への忌避から肉食さえも好ましいものとは考えなかった。イエス・キリストの場合は自身が妻を娶っていないし、子供ももうけていない。彼も弟子たちに妻帯を禁じている。そのため現代でもカトリックの神父は独身を通さねばならず、修道士は童貞をもって本分としている。
この世界で最大の尊崇を集めている二人が性交渉を拒絶し、人類の存続を全否定しているのは驚くべき真実だと私は思ってきた。
もしも彼らの教えを忠実に守っていたならば、とっくの昔に人類は絶滅していたに違いない。
この世界で最大の尊崇を集めている二人が性交渉を拒絶し、人類の存続を全否定しているのは驚くべき真実だと私は思ってきた。
もしも彼らの教えを忠実に守っていたならば、とっくの昔に人類は絶滅していたに違いない。
仏陀とキリスト。人類などいないほうが世のためだということか。
「そんなふうに心が参ってしまったときは自分自身に治してもらうのが一番なのよ。というか、自分の心は自分にしか自分にしか治せないのよ。病気や怪我だって実は同じなんだけど、心は特にそうなのよ。でも芹澤さんの心は弱ってるから、いまの自分に治療してもらうわけにはいかないでしょう。だから、過去の自分に会いに行って、その人に治してもらうしかないのよ」
過去の自分に治してもらう。なるほど。
この美人局のような珠美と言う女性が、実はすごくいい。ある種の理想の女性であり同時にまたファムファタールでもあるんだけれど。でも彼女こそがいい女って感じがする。
小さな事件の積み重ねによる、大人の恋愛+冒険小説。とても良かった。
今日の一曲
ずっとこの曲が脳内を流れていた。スガシカオで「愛について」
では、また。