頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『もう別れてもいいですか』垣谷美雨

2022-03-30 | books
暴力をふるうわけではないが、自分のことを下に見るし、感謝の気持ちもない夫と別れたくて仕方ない妻の話。

物語としては面白いわけではないけれど、ある種のドキュメントのようなリアリティがあった。もし自分がこの妻だったら、離婚を真剣に考えるだろう。

 

今日の一曲

NIAGARA TRIANGLEで、「A面で恋をして」



では、また。



コメント

『いえ』小野寺文宜

2022-03-28 | books
三上傑、スーパーに勤めて3年。パートさんたちとうまくやれてないのが悩み。大学生の妹若緒は、傑の小学校からの友人、サッカーもうまく勉強もできた大河と付き合っていた。大河が運転する車が事故を起こす。助手席にいた若緒は大怪我する。それから三上家はギクシャクし始める。

何ら期待を裏切らない小野寺ワールド。腰を抜かすような展開があるわけじゃなく、普通の人々の感じる苦しみと喜びと気付きが独特の「誠実な人」っぽい文体で描かれる。これがまた良いのだ。

 

今日の一曲

Olivia Rodrigoで、"drivers license"


では、また。
コメント

『シャルロットのアルバイト』近藤史恵

2022-03-26 | books
元警察犬のシャルロットと暮らす夫婦。迷子のトイプードルの謎、向かいに引っ越してきた家族の謎など日常的な謎を解くミステリー。

シャルロットがかわいい!犬好きにはたまらない。物語も何ともほっこりする。二作目から読んでしまったけど問題なし。

 

今日の一曲

Official髭男dismで、「アポトーシス」



では、また。



コメント

『タラント』角田光代

2022-03-24 | books
香川出身のみのりは、東京の大学で、ボランティアのサークルに入る。そこで色々考えさせられる。卒業してから海外でボランティアし、悩む悩む。過去を語らない祖父はちょくちょく東京で誰かに会っている。そしてバラリンピック。

人のためと思ってしたことが裏目に出て悩む主人公の内面描写が絶妙に巧い。下らないことでいつまでも悩むんじゃないよと思う人もいるかも知れないが、私自身を投影してるみたいで、分かる〜と何度もつぶやいてしまった。

何がテーマなのか、それはよく分からないけれど、面白かったことは確か。


今日の一曲

Creepy Nutsで、「のびしろ」



では、また。


コメント

『砂嵐に星屑』一穂ミチ

2022-03-22 | books
テレビ局内の連作短篇集。大阪の局で不倫がバレて東京に飛ばされ10年ぶりに大阪に戻ってきた女子アナの話。周囲で早期退職する人が増えてきたディレクターの話。ゲイに恋して同居するタイムキーパーの話。コミュ障なのに密着取材を強いられるADの話。

最初はどうかなと思っていたら、尻上がりに面白くなってきた。テーマが何なのか説明し難いけど。

 

今日の一曲

きいやま商店で、「きいやまのアカサタナ」



では、また。



コメント

『龍の耳を君に(デフ・ヴォイス』丸山正樹

2022-03-20 | books
デフ・ヴォイスシリーズ第二作。ろう者の通訳荒井の活躍、中短編三本。ろう者が強盗したとして逮捕された事件、ろう者がろう者から恐喝、詐欺した事件、殺人事件を目撃した子がろう者だった事件。

こんなジャンルの小説があったのかと感嘆するとともに、ミステリーとしての面白さを堪能し、人間ドラマの深さに溺れた。

そして自分の知らないことを知るのがこんなにエキサイティングなんだと久しぶりに教えてくれた。

 

今日の一曲

Led Zeppelinで、"Going To California"



では、また。



コメント

店名にツッコんでください283

2022-03-18 | laugh or let me die
店名にツッコんでください283
コメント (4)

『月の光の届く距離』宇佐美まこと

2022-03-16 | books
高2で妊娠し、行くところもなくなり、ビルから飛び降りようとしていた美優。ひょんなことから知り合ったNPOの女性千沙に手を差し伸べて貰った。そして奥多摩のゲストハウスに行くことを勧められる。そこで井川さんは恵まれない子を育てている。なぜ他人を救う活動をしているのだろうか。

最初は悲しい子の見る悲しい狭い世界の話なのかと思っていた。しかし、実は奥が深く、底は広い。人間は、なかなかいいもんだと思わせてくれた。

「 優しい人間は強い」という言葉が出てきてドキッとした。私自身が強くないから、優しくないことを、思ってしまうのかと思ったり、私自身は根本的に優しくない人間だから、強くないのだなと思ったり。

 

今日の一曲

奥田民生と山崎まさよしによるカバーで、「ルビーの指輪」



では、また。



コメント

『神よ憐みたまえ』小池真理子

2022-03-14 | books
美少女12歳黒沢百々子の両親が殺害された。ピアニストを目指す夢は絶たれるのか。優しい家政婦のたづさんや陰湿な祖母等様々な人に囲まれ、百々子はその後をどう生きるのか。

女一代記もしくは大河ドラマ的小説。犯人は誰かは割とすぐに分かるので、ミステリー的楽しみよりもドラマ的楽しみが多いように思う。殺人の動機は、すごくリアルに分かると思える部分と、いやいやそりゃ行き過ぎでしょと思う部分もある。この動機は作品全体を黒い影で覆うので、受け入れられないと凡作になってしまうと想像する。私はまあまあ受け入れられた。

 

今日の一曲

レキシで、「マイ草履 feat. にゃん北朝時代」



では、また。



コメント

『サンドの女 三人屋』原田ひ香

2022-03-12 | books
一つの店で、朝昼晩違う形態の店を営む「三人屋」の続編。今回はスナックの長女夜月が中心。小説を一冊出したきり書けなくなった作家、ゲイの豆腐屋と交際する男、携帯ショップの店員など。

相変わらず面白い。人情と愛情にあふれていた。

 

今日の一曲

Jaco Pastoriusで、"
Word of Mouth"



では、また。



コメント

『サンセット・サンライズ』

2022-03-10 | books
コロナ禍、釣り好きの西尾、リモートワークが許されることになった。ヒラメが沢山とれた宮城の町に興味を持って調べたら、家具付きの一軒家が月8万で借りられると知ってすぐ申し込んだ。震災の後ずっと使ってなかった家での快適な暮らしと釣り三昧。大家の娘は役所勤めで、西尾のタイプ・・・

読みやすく、期待したいたよりずっと面白かった。

ビジネス小説的な部分は、個人的にはどうでもいいのだけれど、生活小説(そんな言葉ある?)もしくは、恋愛小説として、たっぷり堪能した。


 

今日の一曲

神はサイコロを振らないで、「イリーガル・ゲーム」



では、また。


コメント

『黛家の兄弟』砂原浩太郎

2022-03-08 | books
江戸時代、架空の神山藩における筆頭家老は黛家。長男と三男は出世していくが、次男はやさぐれて、徒党を組んで酒喧嘩三昧。ライバルの漆原家は次席家老。娘を藩主の妾にし、息子を次期藩主にしようと画策している。ある事件で黛VS漆原の戦火が勃発する。

ううむ。しびれた。

主人公黛新三郎の目線で、静かに話は進む。いや、静かなのに熱い。どうすれば自分の家のためになるのか、自分のためになるのか、敵を欺けるのか。

江戸時代のある藩を舞台にした、普遍的な「闘い」を描く大傑作。

 

今日の一曲

Red Hot Chili Peppersで、"Black Summer"



では、また。


コメント

『サーキット・スイッチャー』安野貴博

2022-03-06 | books
完全自動運転が当たり前の近未来。アルゴリズムを開発した会社の代表の坂本の乗る車がジャックされた。動画のチャンネルでその模様を生中継しないと爆弾が爆発すると警告される。

苦手なテクノロジーだらけなのに、すごく読みやすい。

自動で何かがされる近未来。良いものなのかそうでもないのか、色々考えさせられた。

 

今日の一曲

Buddy Richで、"Caravan"


では、また。

コメント

店名にツッコんでください282

2022-03-04 | laugh or let me die
店名にツッコんでください282
コメント (4)

『残月記』小田雅久仁

2022-03-02 | books
月に纏わる短編二本と中編一本。ラストの「残月記」 が凄まじい。

近未来、全体主義的独裁政権下、重篤な感染症(月昂)にかかった者は捕らえられ隔離された。患者の一部の闘士による殺し合いが見世物に。主人公はそのうちの一人宇野冬芽。

迫るリアリティと切なさの詰まった、すごいディストピア小説だった。


 

今日の一曲

羊文学で、「夕凪」



では、また。


コメント