![JOYじょい](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/b0/efb0cf49f05cb1f1fb2ac71f95b676da.jpg)
DVDにて鑑賞
工事現場で働いていた宮迫は父が死んで遺産が。そして働かなくなる。離婚して一緒に住む娘は女子高生、仲里依紗。下心からはじめようと思った喫茶店。バイトとして入って来た麻生久美子に宮迫が惚れ・・・常連の小説家男性に里依紗が惚れ・・・
いやいや。意外なほど良かった。宮迫&仲の親子がうまいし、コテコテ昭和風な中にちょっと先が読めない展開がいい具合に絡む。麻生久美子の魂胆が分からなくて、ある種のミステリを読む気持ちで途中まで観た。
一番はやはり仲里依紗だろう。彼女が演じて一番しっくり来る。知り合いは、「彼女のために作られた作品だよ」と言っていたが、その通りだと思う。
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「幻の翼」逢坂剛 講談社 1988年
「裏切りの日々」、「百舌の叫ぶ夜」に続く公安シリーズ第三作、あるいは百舌シリーズ第二作。
稜徳会病院事件は闇に葬り去られた。しかし、事件の裏で動いていた者たちはまだ・・・倉木は拉致され、ロボトミー手術を・・・
うーむ。「百舌の叫ぶ夜」より面白いかも知れない。向かう方角がカッチリしているというか軸がしっかりしているように思った。手に汗にぎる感も高い。
後記で、逢坂剛氏が書いている。「ようやく準備が整い、昨昭和六十二年の夏から、満を持してこの『幻の翼』を書き始めた。ところがほぼ三分の二ほど書き進んだ晩秋にいたって、強烈なカウンター・パンチを食らうはめになった。そこから着想を得たと思われても仕方がないような、端倪すべからざるはずのスパイ戦の影の部分が、あっけなく白日の下にさらされてしまった。きわどいところで現実を先取りするのが、作家の才能の一つだとすれば、わたしはこの際読者のみなさんに、ご勘弁願いますといさぎよくあやまるしかない」
これを読んでピーンと来る方もおられるだろう。そうそれである。しかしそれからヒントを得ようが得まいが面白ければいいわけで、そしてとても面白いのだからよいのである。
戦後に日本で書かれたミステリー作品の中でもトップクラスの出来(シリーズ5作目以降は別)だと思う。特に「百舌の叫ぶ夜」、「幻の翼」、「砕かれた鍵」はスゴカッタ。「砕かれた鍵」はまだ再読していないのだが、読むのが楽しみである。
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DVDで鑑賞。CIAを馘になったジョン・マルコビッチ。腹いせに書こうとする自伝。妻は医師でジョージ・クルーニーと不倫関係に。スポーツクラブのインストラクター、ブラッド・ピットとフランシス・マクドーマントが謎のCD-ROMをロッカーで発見し、それがどうやら秘密情報らしいと分かってから・・・
いやいやいや。なんじゃこりゃ。面白かったぞ。フランシス・マクドーマンが全身整形したくて仕方ない中年女を演じてるが、これがうまい。実にめんどーな女で、しかも現実にいそうなタイプ。そしてブラッド・ピットがバカインストラクターを演じているが、これもまたうまい。iPodを聴きながら踊る変なダンス、台詞、全てがそれらしい。
コーエン兄弟作品らしく、実にブラックなコメディだ。
しかしまさか○○が死ぬとは思わなかったので、そのシーンでは思わず声をあげてしまった。そしてあんなラストとは・・・
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「四十九日のレシピ」伊吹優喜 ポプラ社 2010年
継母の乙美が死んだ。百合子は東京で夫と暮らしているが子供が出来ない。あろうことか夫は別の女を妊娠させてしまったらしい。百合子が思い出した優しい乙美の思い出とは・・・ 妻を失い、生きる意味を失ってしまった熱川。家事をやる気がしないし、食べる気もおきない。そこへ、妻に世話になったと言ってやって来た髪を黄色く染め、日焼けし過ぎた娘。よく分からない外国人。そして帰ってきた娘、百合子。
乙美は自分の四十九日には、法事などやらずに宴会をやって欲しいと書き残していた。生きる意味を失った夫と娘。49日間で果たして再生できるのだろうか・・・
いやいやいや。いやいやいや。最初の6頁を読んだだけで、もう目頭が熱くなってしまった。うまい。
乙美さんはこんな人なんだろう、その説明がこれから描写されるのだろうと、予想&予期してしまうのだが、そしてその予想はかなり高い確率で当たるという自信があるのだが(自信があるのなら、読まなくてもいいわけである。)しかし、その、ある意味、約束された物語に身を任せたいと思った。ただ身を任せれば、気持ちよくなれると分かったから。
大変気分よく読み進めた。それは予想通りだった。しかしガングロの井本も乱入や百合子の夫浩之の子を宿したという女の<めんどーな女具合>など意外な展開やエピソードがあり、予想以上に楽しんでしまった。(予想はやや外れた感あり。)
浩之は学習塾を経営していて、そこには「夢はかない、努力は報われる」という垂れ幕が下がっている。東京にどうしても戻らなくてはいけなくて、井本と一緒にその垂れ幕を眺めていた百合子の井本との会話(井本はこれが百合子の夫の職場とは知らない)
「どうしたの?百合っち」
ずっと垂れ幕を見上げていたことに気がついた。井本が心配そうな顔をしている。
「別に、何も・・・大丈夫」
「何か面白いものでもある?」
井本が顔を上げた。
「いや、垂れ幕を・・・見てただけ」
垂れ幕?と井本がつぶやいた。
「ああ、あれ。夢はかなう!気合い入ってるね」
「夢はかない、努力は報われるものだとしたら・・・夢がかなわなかった人は努力がたりなかったのかな」
そんなわけないじゃん、と井本が笑った。
「そんなの言い出したら、オリンピックなんて参加者が全員金メダルだ。みんな同じことを夢見て来てる。努力してない人なんていないし」
「一番努力した人が勝つってことじゃないの?」
ああヤダヤダ、と井本が肩をすくめた。
「そういう口当たりのいいことを言う人がいるから、真面目な人は病んじゃうんだよ。うまくいかなかった時に自分のことを責めちゃってさ。本当のことを書いてほしいよ
「本当のことって?」
「夢はかなわぬこともある。努力が報われぬこともある。正義は勝つとは限らない。だけどやってみなけりゃわからない。さあ、頑張ろう」
「やる気が薄れるわ・・・」
井本が笑った。
「そんな垂れ幕ダメっすかね」(118頁より引用)
ずっと垂れ幕を見上げていたことに気がついた。井本が心配そうな顔をしている。
「別に、何も・・・大丈夫」
「何か面白いものでもある?」
井本が顔を上げた。
「いや、垂れ幕を・・・見てただけ」
垂れ幕?と井本がつぶやいた。
「ああ、あれ。夢はかなう!気合い入ってるね」
「夢はかない、努力は報われるものだとしたら・・・夢がかなわなかった人は努力がたりなかったのかな」
そんなわけないじゃん、と井本が笑った。
「そんなの言い出したら、オリンピックなんて参加者が全員金メダルだ。みんな同じことを夢見て来てる。努力してない人なんていないし」
「一番努力した人が勝つってことじゃないの?」
ああヤダヤダ、と井本が肩をすくめた。
「そういう口当たりのいいことを言う人がいるから、真面目な人は病んじゃうんだよ。うまくいかなかった時に自分のことを責めちゃってさ。本当のことを書いてほしいよ
「本当のことって?」
「夢はかなわぬこともある。努力が報われぬこともある。正義は勝つとは限らない。だけどやってみなけりゃわからない。さあ、頑張ろう」
「やる気が薄れるわ・・・」
井本が笑った。
「そんな垂れ幕ダメっすかね」(118頁より引用)
てな感じ。伊吹優喜という作家に注目して、次回作を楽しみに待ちたい。
ご本人のサイトはWeb伊吹優喜
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と、ある日の朝。
コーヒーを持って書斎に向かう俺。
タバコに火をつけ、
紫煙をくゆらせる。
今日は何を執筆してやろうか。
パソコンの電源を入れ、
コーヒーを喉に流し、
ふと机の右側を見ると、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/50/aa1cc0b03b27654fb44a49bbc9ea6fd9.jpg)
ティッシュの箱に
蟻が大発生していた。
私は水玉が苦手だ。
小さなものが蠢いている様が
苦手だ。
さて、
どうしようか・・・
・・・(つづく)
・・・(いや、つづかない)
「ブルー・ゴールド」真保裕一 朝日新聞社 2010年(初出週刊朝日連載に大幅加筆訂正)
大手商社から関連会社の怪しいコンサルティング会社にとばされた主人公。社長から命じられ関わるようになった案件は水。長野県の南駒根町の地下水を狙う。今最もホットな資源「水」をめぐる、NPO法人、食品会社、ライバル商社・・・勝つのは・・・
うーむ。最初に大きく風呂敷を広げてしまった割に、途中から尻すぼみしてしまったように思う。158頁で襲撃されて入院している高坂は田伏とかつて衝突していたというような話が出て来るのだが、その辺りで急激に私は興味を失ってしまった(でも読んだけど。)水という大きなモノから、サラリーマンVSサラリーマンとか、あるいは後に商社VS商社に変質してしまうのが残念。
対立軸もどことどこにあるか、分かりにくい。いや分かりやすければよいというものではないけれど。うまく説明できないんが、AとBを対立させていくのなら、そう大きく構えて描写して欲しかった。それと感情移入しにくい。社長の伊比という男など破天荒で無茶苦茶で感情を移入できそうなキャラだし、主人公薮内もは無垢な(?)青年なので感情移入しやすいはずなのに、人物の作り方なのか自分を投影したり投影されたりできなかった。
「デパートへ行こう!」以来どうも真保裕一と相性が悪い。ま、こういう事もあるさ。まだ真保裕一は読むよ。
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「武士道エイティーン」誉田哲也 文藝春秋社 2009年
「武士道シックスティーン」と「武士道セブンティーン」に続くシリーズ完結篇。高校3年になった香織と早苗。インターハイを迎え・・・という主役二人の動向だけではなく、途中に香織の師匠桐谷の過去のエピソード、高校剣道部顧問の吉岡先生の過去などがちょうどいい具合に入り込んで、これまでとは違う構成になっている。
その違う構成が気に入った。香織+早苗だけで一冊の物語にするには薄くなってしまうように思うが、まさかそのキャラの過去についてこんなに詳しく書かれるのかという驚きと、読んだ面白さ両方を感じた。
映画で桐谷玄明を誰が演じていたのか知らないが、こんな過去を引きずった男を演じるのはきっと難しいに違いない&彼に興味を抱いた。
積ん読山脈に入り込んだ誉田哲也の他の小説を読んでみようかな。
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![まぜそば](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/b9/38c22e57f97a4085aebe18c955d3942b.jpg)
全国40万人の眠れない夜にシリーズファンのみなさま。大変お待たせいたしました。
ラーメン通だかなんだかの大崎とかいう男が監修したとかいうまぜそば。
これを夜中の3時に食す。
まあ焼きそばよりずっと太くて旨かったのだが。しかし、
夜中に飲む・食うからなかなか抜け出せない。
食いながら心臓発作でも起こして死んだら、
麺が口からこぼれたまま発見されるのだろうか・・・
「百舌の叫ぶ夜」逢坂剛 講談社 1986年
公安の凄腕倉木警部の妻が新宿の爆弾テロの犠牲者に。しかしどうしてそんな事件が起こったのだろうか(=謎その1)記憶喪失の男。どうやら自分は殺し屋らしい。しかしやくざのような奴らにどうして私が殺されそうになるのだろうか(=謎その2)刑事警察と公安の対立があるようだ。どんな対立?(=謎その3)警察庁の警務局特別監察官の津城警視正が警察内部の不正を明かすため動いている。そのターゲットは?(=謎その4)百舌とは何者か?(=謎その5)まっすぐな刑事、大杉、公安の女刑事明星、倉木、津城それぞれに待ち受ける結末とは(=謎その6)
いやいやいや。まいった。ジェットコースターのようだった。「裏切りの日々」の後にこれを読んだのだが、そして再読なのだが、ほとんど何も覚えていなかったので初めてのように読めた。まさにLike A Virginである。
フィリップ・マーゴリンやスティーヴ・マルティニなどの作品には人物造形や哲学的思想などを一切無視して、どんでん返しに次ぐどんでん返し、ジェットコースターのようなキレがある。私はこれが大好物なのだ。小説を読む、私の最大の楽しみは、美味なジェットコースターに乗ること。もちろんジェットコースターじゃなくても楽しいのだが、先の読めない展開に翻弄されていると、アドレナリンが噴出しまくる。
人それぞれ人生の楽しみがあるし、小説の楽しみも色々あるだろう。私はどんでん返されることに一番の幸せを感じる。みなさんは何に一番の幸せを感じておられるのだろうか。
私がどんでん返しを強く求めるのは、人生の中で、あるいは生活の中でどんでん返される機会がないからなのだろうか。よく分からない。ただ、日々の生活の中にそんなに意外性を望んでないような気がしないでもない。いやよく分からない。
法律とは何かとか、愛とは何かとか、人間とは何か。そんなことを求めている人にはこの小説はあまり得るモノはないだろう。しかしストーリー、プロット、ひねり、そんなモノを求めていて、しかもあまり逢坂剛を読んだことがない人にはぜひ薦めておきたい。
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