全職員の1割が退職 「町長許せない」 神奈川・真鶴町が異常事態
2022/07/01 17:37
(毎日新聞)
古い街並みや自然が残り、都会からの移住者も少なくない神奈川県真鶴町で、町職員の退職が相次いでいる。2021年12月以降、全職員の1割にあたる11人が退職し、その数はさらに増える可能性がある。人口7000人弱の港町で、いったい何が起きているのか。
「町長の反省のない振る舞いが決め手になった」。6月1日付で退職願を提出した町幹部は取材に悔しさをにじませた。退職した別の職員も「町長の態度で気持ちがついていかなくなった」と漏らした。相次ぐ退職の背景にあるのが、こうした松本一彦町長(56)への不信感だ。
松本氏は町民生活課長だった20年2月、選挙人名簿を不正に複写し、自身が当選した同年の町長選の選挙運動で利用した。21年10月に報道でこの問題が発覚すると辞職し、12月の出直し選で再選した。
だがその後も、複写された名簿には有権者の投票状況が分かる記載があったことなど、出直し選前には明らかになっていなかった新事実が判明。松本氏は町長として、自身を含む関係者の刑事告発を準備するという異例の事態となっている。
松本氏は何度も謝罪を口にしてきたが、再度の辞職は拒んできた。名簿の不正な複写は「役場の情報管理の問題」などと、自身の責任を役場に転嫁するかのような発言もしている。「一生懸命仕事をしているのに許せない」「松本氏を勝たせる町民にも失望した」と漏らす職員もいた。
職員の退職の動きは、21年12月の松本氏の再選直後から始まった。再任用のベテラン職員や特別職の教育長が相次いで退職。また町長の下で町政を切り盛りしてきた参事3人のうち1人も辞めた。もう1人の参事は不正に関与したとして同年11月に懲戒免職になっており、現在は参事が1人だけという「非常事態」に陥っている。
町によると、円滑に業務を行うには職員110人程度が必要だが、7月1日時点の職員は93人にとどまる。「窓口業務を回すのも難しくなりそう」などの懸念の声が上がるほか、松本氏自身も6月29日の町議会の答弁で「職員が混乱し、疲弊している」と認めた。
町は8月採用の内定を3人に出したが、1人は辞退。10月の採用に向けて募集をかける予定だが、経験がある職員の穴を埋めるのは容易ではなく、町政の一層の混乱が懸念されている。【本橋由紀】