セブン-イレブンは300円超え「明太子」 コンビニのおにぎりが今、変化しているワケ
2022/07/11 05:59
(デイリー新潮)
かねてより囁かれてきた「コンビニのおにぎりは具が少ない」という不満に応えたのか――。セブン-イレブンが6月末より売り出した、巨大な具のおにぎりが話題を呼んでいる。一方ローソンはブランド米を用いた新シリーズを7月からスタート。コンビニおにぎりにいま、何が起きているのか。
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6月28日から発売された「明太子おむすび」(税抜300円)と「ベーコンエッグおむすび」(250円)が注目をあつめている。どちらも具を包む従来のおにぎりとは異なり、巨大な具がご飯の上に“乗っている”商品。コンビニおにぎりにしては高価格だが、そのインパクトから売れ行きは好調なようだ。
同じタイミングでローソンが打ち出すのは「日本おこめぐり」というおにぎりシリーズだ。7月5日から来年5月にかけ、2カ月に1度のペースで日本各地のブランド米を用いたおにぎりを発売するという企画で、第一弾として北海道産の「ふっくりんこ」を使った「塩にぎり」(100円)と「焼鮭ほぐし大葉味噌」(148円)が発売中。今後は山形県産の「雪若丸」、石川県産の「ひゃくまん穀」が予定されている。
1年間で約60億個、コロナ禍の消費減でも約50億個が売れたとされるコンビニおにぎりは、日本人の国民食といっても過言ではない。マーケティングアナリストの渡辺広明氏は「コンビニおにぎりは時々の世相を反映してきた商品といえるでしょう」という。
「たとえば、2010年代のはじめに登場した『麦おにぎり』です。さきがけはナチュラルローソンの『もち麦入りおにぎり』シリーズですが、いまではセブンやファミリーマートでも麦おにぎりが販売されています。こうした健康・美意識の高いおにぎりが定着した背景には、女性の社会進出がありました。00年代まではコンビニ利用客のうち女性が占める割合は3割でしたが、現在では5割弱が女性となった。また、この頃には50歳以上の利用が4割を占めるようになってきましたから、ヘルシーなシニア向けの訴求もあったはずです」
見なくなった「100円セール」
世相の反映は商品そのものだけでなくキャンペーンにも。
「少し前まで、各社が頻繁に『おにぎり100円セール』を行ってきたことをご記憶の方も多いのでは。学生をはじめとする若い世代が手に取りやすい価格設定にして、将来的な潜在顧客を開拓する狙いなどがあった施策ですが、世相という点では、19年にセブンが行っていた『朝に2個買うと200円』というキャンペーンが分かりやすいでしょう。一見、1個100円より使い勝手がわるい企画と思われるかもしれませんが、これはシニアのご夫婦の利用を想定したキャンペーンでした。比較的接客に余裕のある通勤時間帯の前の『朝』に、早起きのシニアを呼び込みたいというわけです。コロナ禍で各社余裕がなくなり、こういったキャンペーンを見なくなったのも、また世相といえるかもしれませんが……」
セブンのおにぎりに見る「2つの世相」
ではセブンの異例のおにぎりには、どんな世相を反映しているというのか。渡辺氏は2つのポイントを挙げる。
「ひとつ目は『メリハリ消費』。また予断を許さない状況になってきてしまっているものの、コロナが落ち着いたことによって、消費活動が活発化の兆しがあります。分かりやすく言えば“コロナで我慢していたぶん、パーっと贅沢したい”という意識ですね。SNSを覗くと、〈セブンがヤケクソになっている〉といった声とともに、楽しんで手に取っている様子が見て取れます。ふつうのおにぎりとして考えると価格は高いですが、そこに面白さを見出すという意味では『メリハリ』の対象にもなっているようです」
もうひとつはやや切実な事情がありそうだ。
「ローソンは『おこめぐり』企画の理由に“世界情勢”を挙げています。世界の小麦輸出の3割を占めるとされるロシアとウクライナの情勢を受けた小麦の高騰が、秋以降、本格的にやってくると報じられています。岸田首相は9月まで小麦価格を据え置くと発表しているのと同時に、国産の米や米粉などに切り替えていく方針も打ち出しました。自給率の高い米を国内で積極的に消費しなくてはならない。そうした事情も、コンビニのおにぎり注力からは見て取れますね」
デイリー新潮編集部