乃南アサ「禁猟区」新潮社 2010年刊
前に知人が貸してくれた本の中にこの作家の本が沢山あった。ミステリーというよりは刑事のご苦労の心理描写が主のシリーズだったが、なんとなく惹かれていた。
それがあって、今回も図書館でつい借りてきた。
4篇からなる短篇集だが、いずれも警察の監察部署が最後に登場して、権力を利用して脅し,貪る(そんなに単純ではないが)悪徳警官を逮捕するという筋書きだ。
捜査の謎解きとか、犯人のアリバイ崩しとかなどではなく、この作家らしく、犯罪を犯す警官の人間関係や客観状況の描写に重きをおき、逮捕に至る過程などはあっさりと処理している。
警官が度々罪を犯すことはこの頃は珍しくなくなってきた。「立場を利用した密猟者=警官を細心の注意を払って狩り出す。そこはまさに禁猟区」と帯にあるのだが、権力の中枢を握っている警察内部の犯罪は、闇に葬られることが多かろうというのは容易に想像できるが、この小説のように淡々と摘発されることを願うばかりである。