高嶋哲夫「首都崩壊」幻冬舎刊 2014年
東京直下型地震を目の前にした、クライシス小説である。小松左京の「日本沈没」と趣が似ているが、あれはまだSFとして、純粋に仮定のこととして客観的に読めた。
この小説は、東海大地震の予告、福島原発事故、東北大震災、御岳噴火などの身近に起きているいろいろな災害の中なので、クライシスが起きてもおかしくないと思わせるのが、小説の域を超えて迫ってくる。
しかもこれが、国際政治の中で、サイバー攻撃や、投機マネーの動向、などと絡んできて、次第に日本が追い込まれてゆくところまでは、よくできたフィクションである。政治家の動きも、官僚の動きも概ねは納得できる。
ただ最後の収束に入るところから、余りにも上手く行き過ぎ、個人の善意がまわりを動かし、国際的にも収まる所に収まる、という具合に少々甘いのが残念である。