
米澤穂信「満願」新潮社 2014年刊
6篇の短編集からなる本書は「このミステリーがすごい」2015年版、週刊文春2014年ミステリーベスト10、「ミステリーが読みたい2015年版」のそれぞれの国内部門で一位を獲得し、第27回山本周五郎賞をも受賞している。
少々へそ曲がりな私は「へ~え」そんなもんかと、いささか斜に構えて読み出したがたしかに面白い。ストーリーの意外さ、さりげない伏線の置き方などプロ作家としてなかなかの力量とお見受けした。
勿論6篇ともが独立しており、類似性は見られない。万灯、柘榴、関守、満願の4篇で示される、人間のオドロオドロした部分も見事に書ききっている。これは傑作集と言って良い。インド旅行の行き帰りの飛行機の中で、残りの頁が薄くなってゆくのを惜しみつつ読んだ。