原宏一「ダイナマイトツアーズ」祥伝社文庫 H20年刊
たしかこの作家の作品だと思うが、築地の魚河岸を舞台に情報屋が主人公の「やっさん」という著作があったような気がする。この作家の一つの特徴として、ありえない仕事を職業として成り立たせる構成力がある。
この小説もその類で、ぐうたらな生活を送っていた若者二人が、義父の死をきっかけに自立を迫られ、アメリカに逃げて、ビル爆破作業に従事するというのがメイン。最後の日本に舞い戻ってきて、昔いた商店街の爆破を手掛ける云々は、取ってつけたようなもので、それほど説得力はない。
アメリカでの修行生活は、拾ってくれた黒人や大雑把な生活など如何にもありそうである。おおらかなアメリカの国民性が出ているようだ。エンターテイメントとしては、前半から中盤にかけてが面白く、わくわくさせる。
それにしても、作家というのは因果なもので、この作品を書くのにはかなり爆薬や、爆破自体の研究をしたのだろう。お疲れさまです。