初代アコード

 定期購読している月刊NAVI 5月号(二玄社刊、税込780円)が届いた。届いたのがちょうど昼前だったので、昼食を食べながらパラパラめくっていたら、「クルマ自慢・しまショー」(p.190-191)に初代ホンダアコードが登場しているのを見つけた。1800ccになった後期型の3ドアハッチバックだ。

 コンピュータが引いたのではなく、人間がその感性のおもむくままに、デザイナーが心地よいと思ったそのままに引いた線がクルマ全体を包み込んでいる。いい形だ。

 初代アコードは、1972年登場のシビックで本格的な四輪車進出を成し遂げたホンダが、当時の中型車に横置きFWD、ハッチバックという、現在に続くクルマの基本形を持ち込んだ画期的なクルマであった。このクラスにまでパワーステアリングとパワーウインドウを持ち込んだのもこの初代アコードであった。

 1976年にハッチバックのみで登場したアコードも翌年には独立したトランクと4枚のドアを持った「サルーン」を登場させているが、デザイン的にはオリジナルのハッチバックの方が優れて美しい。

 CVCCエンジンを積んだ初代アコードの動力性能は、残念ながら話題にするほどのものではなかった。シビックのRSに相当するようなエンジンにまで手を入れたスポーティーバージョンもなかった。つまり、形はスポーティーだけれど純然たる実用車であった。実用車だから10年経つと捨てられる。長くても15年後には潰されてしまう。だから今、路上で初代アコードにお目にかかることは、まず、ない。

 紙面に登場したダークブルーのハッチバックは見るからに程度が良さそうであるが、今の水準と比べればエンジンパワーは半分弱、シャーシー剛性は低く不整路ではボディーが大きくたわむ。引き換えに車重は875kgと今の軽自動車より軽いが、当時のCVCCエンジン搭載車の燃費は褒められたものではなかった。ATはストールトルク比の大きな2速ホンダマチック。ABSもエアバッグも付いていない。つまり、現在ではとても「考えられない」スペックだな。

 昨今の理詰めで無駄の無いクルマ、別な見方をすればゆとりの無い、ぎすぎすしているクルマとは比べ物にならない「ゆるさ」である。でも、いいじゃないか。昔はこんなに牧歌的なクルマがあったんだ。いま、こんなクルマに乗っていたら毎日もっと穏やかな気持で過ごせるんじゃないかなぁ。

今日の1枚は、桜の木の下で群生する花韮(はなにら)。
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