ご注意ください

 今日の新聞にケーズデンキのチラシが入っていたのだが、その中で一番目立っていたのがいま話題のソニーのNEX-5の広告。EVF(電子式ビューファインダー)やストロボが用意されていないのが郷秋<Gauche>としては不満だが(別に郷秋<Gauche>は買わないからいいけど)このクラスにAPS-Cセンサーを採用しながら同時にクラス最小最軽量を達成したことなどは大いに評価でき、2010年に登場したカメラとしては高い評価を与えられる一台となる事は間違いない。

 これからいろいろ書くに当たって予め断っておくのは、郷秋<Gauche>はこのNEX-5を使ってもいなし、カタログも見ておらず、あくまでもケーズデンキのチラシに書かれていることに基づく指摘であるということ。限られたスペースに、売りたい側の都合のよいことだけが書かれているのが新聞の折込チラシなので、あるいは誤解・勘違いがあるかも知れないが、それは多くの消費者が陥る過ちであるもあるわけであり、これは積極的に誤解をさせようという策略だと考えても良いのかも知れない。

 さて、ご注意いただきたい事の第一は「単焦点レンズキット」に装着される16mmレンズの画角である。APS-Cセンサーを使用したカメラの場合には焦点距離に1.5をかけると、永年なれ親しんだ35mmフルサイズにおける画角相当の焦点距離が算出される。つまりNEX-5に装着された焦点距離16mmレンズは、35mmフルサイズにおける24mmレンズ相当の画角となる。一般的なコンパクトタイプに使われているズームレンズは35mm相当からであり、広角側に拡張されたものの場合にもせいぜい28mmと云うのが相場である。

 そんな中で何故にソニーは24mm相当のレンズを単焦点レンズキット用に用意したのか理解に苦しむがその理由は、実は簡単。「奇を衒い」他社には無い超広角を用意しただけの話である。30年前の広角レンズは35mmがスタンダードであり、28mmはもはや超広角の入り口とさえ云われていた画角である。それが24mmなのだと云うのだから素人の手には余るはず。

 狭い場所で大勢の記念写真を撮る時には重宝する超広角だが、画両端にいる人の顔はそれぞれ外側に引き伸ばされ大きく歪む。手前にいる人は極端に大きく写り、二列目は良いとしても三列目にいる人の顔はかなり小さく写る。カメラ(レンズ)を上に向けてフレーミンクすると特に両端にあるものは画面の中央に向かって極端に倒れ掛かったようになる。ただし、いずれの場合にも画面に手前から奥までピントはきちんと合う。これらはいずれも(超)広角レンズの特性であり、だから(超)広角レンズは面白のだが、さすがに24mmともなると初心者にはちょいと荷が重いかも知れない。

 二つ目。ケーズデンキのチラシには「一眼レフカメラと同じセンサーだからキレイ!」と書かれていたが、レンズの性能に差がある、AF(オートフォーカス)の性能・精度に差がある、両腕を伸ばしての撮影スタイルから手(カメラ)ブレが起きやすいなどの条件が違うことから、「一眼レフカメラと同じセンサーだからキレイ!」を鵜呑みにするとがっかりすることになるので注意したい。

 三つ目。「とても簡単だからプロみたいに背景をぼかせる!」を真に受けないこと。特に16mmレンズが同梱される短焦点レンズキットの場合には先にも書いたとおり、被写界深度が深い超広角レンズの特性により「ボケ」はほとんど生じない。またダブルレンズキットの18-55mm(35mm換算27-82mm)のレンズでも大きな「ボケ」は期待できない。82mm相当の画角となる望遠側で、主たる被写体が極手前にあり背景が相当離れるところにあり、なおかつ絞りが開放の場合にはそれなりの「ボケ」を期待出来るが、この「ボケ味」に過大な期待をするとがっかりすることになる。

 本格的な「ボケ味」を楽しみたいのであれば、APS-Cセンサーを使用するカメラの場合にはやはり200mmまでの望遠ズームと自由に絞りとフォーカスポイントを選べる機構や、「ボケ味」を直接確認するための絞り込みボタンがあることなどが重要となる。例えばNEX-5を使って「ボケ味」を自由にコントロールするためには、レンズの焦点距離と被写体や背景との距離、絞りの値など幾つもの要素を加味する必要があるので、実はマニュアル操作の出来る一眼レフ以上に難しのではないかと思う。もしこれを「背景ぼかしコントロール」機能がすべて代行してくれるのだとしたら素晴らしいことなのだが・・・。

 以上、使ってもいないしカタログさえ見ていないNEX-5について書いてみましたが、大きく外れたことは書いていないのではないかと思います。「いやそんなことは無いぞ。偉そうに云うなら使って見ろ」との申し出があるならば、郷秋<Gauche>は喜んで使わせていただきますので、どうぞ遠慮なくお申し出くださいな。ソニーさん。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、干された麦。「実りの秋」と云う言葉があるように、米によって支えられてきた日本では秋が収穫の季節として認識されているわけですが、米の代わりともなる麦の収穫の時期は今、梅雨に入る前のこの季節です。ですから麦の収穫の時期を麦にとっての秋、「麦秋」(ばくしゅう)と云うのです。
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