「試作なし」で新製品を量産

 昨日届いた日経ビジネスにこんなタイトルの記事があった。他のジャンルの製品なら読み飛ばしてしまったかも知れないその記事も、モノがカメラのレンズとなると素通りできない郷秋<Gauche>である。

 なんでも昨年10月にキヤノンが発売したEF-S15-85mm F3.5-5.6 IS USMがそうなんだと云う。これまで一般的なDSLR用の交換レンズは開発から出荷まで15~16ヶ月かかったものを、設計段階で一度も試作品を作らず、CAD(コンピュータ上で行う設計システム)上だけで不具合を解決し量産の検討に入ることで、わずか10ヶ月で製品化する事が出来たのだと云うのだ。

 EF-S15-85mm F3.5-5.6 IS USMと云うレンズは、焦点距離レンジと明るさ、また、より廉価なボディ向けの同程度の焦点距離レンジ、同程度の明るさのレンズの2~3倍はする価格からも、Nikon(ニコン)で云えばAF‐S DX NIKKOR 16-85mmF3.5-5.6G ED VRに相当するものだろう。廉価な商品ではなく(準)高級レンズの開発に、まったく新しい手法を導入したところにキヤノンの自信を見て取る事が出来る。

 これまでの設計期間を2/3に短縮し、しかも試作品を作らなかったということはそれだけコストもかけずに開発できたことを意味している。キヤノンの高利益率体質と云うのはこう云う事を積み重ねの結果なんだろうな。この手法がDSLRボディにも応用可能なのかどうかは記事には書かれていないが、遠からずそう云うことになるんだろうな、きっと。

 工業製品は無駄を省いて、より低価格で高性能かつ信頼性が高い製品が登場すればそれはそれで嬉しいわけだが、手に持ってその重みと感触を確かめながら、ファインダーをのぞきながら使うDSLRや、微妙なボケや描写特性を楽しみたいレンズの「味」がなくなりはしないかと郷秋<Gauche>は心配だぞ。温室で一年中作られるキュウリやトマトのようなカメラやレンズは、ちょっとなぁ・・・。


 と云うことで今日の一枚は、人が自らの手で図面を書いて、人がその手で切ったり削ったりしながら試作を繰り返して作り上げた古きよき時代のカメラたち。
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恩田の森、更新

 昨日、恩田の森で撮影いたしました写真をこちらに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
恩田Now 
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