ゴエモンのつぶやき

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西日本新聞社説より

2007年01月12日 00時30分58秒 | 障害者の自立
今日は西日本新聞社説から「人口減に対応できる将来像を 安心できる社会保障」
と言うタイトルの記事を紹介します。
「難民」という言葉が印象に残る内容です。支援体制の不備を強く訴えています。
日本という国はこの先どこに向かうのでしょうか?我々当事者には「不安が一杯」
皆さんは、どう思われますか?

人口減に対応できる将来像を 安心できる社会保障 
 なぜ、このような言葉が使われるのだろうか。しかも、私たちが生きていくうえで、とても大切な、生活の基盤を支える分野でである。

 近ごろ、とみに耳にする「難民」と言う言葉である。一般的に戦争などで困難に陥った、とくに、戦禍を避けて流浪している人たちのことを指す。

 「介護難民」「がん難民」「リハビリ難民」…。病院や施設などにも受け入れてもらえず、行き場を失った人たちを例えているのである。

 悲哀さえ感じる言葉を用いなければならないほど、多くの人が将来の介護や医療に漠然とした不安を抱いているのではないだろうか。

 これまで、病を医療が支え、暮らしを福祉が支えてきた。

 だが、いまや医療と介護、福祉の壁はなくなりつつある。とりわけ介護保険制度が導入されて以来、その垣根は低くなった。


■足りない支援体制

 国は医療機関から在宅介護へシフトする施策を相次いで打ち出した。

 医療の必要の少ない人が入院する「社会的入院」を解消するため2012年度までに、現在、全国に38万床ある療養病床を15万床へ大幅削減する。さらに医療機関でのリハビリテーションも、昨年の診療報酬改定で病気の症状ごとに日数制限を設けた。

 その背景には、高齢者の増加で国民医療費が毎年約1兆円ずつ増え続け、医療財政を圧迫していることがある。もちろん、医療の必要の少ない患者を入院させたり、漫然とリハビリを続けさせるのは、医療財政面からも抑制すべきだ。

 問題は、病院から在宅へ移行する際の受け皿が十分でないことだ。介護保険のリハビリ1つ取ってみても、質、量ともに不十分である。

 介護保険が始まって、今年で7年目を迎える。医療と介護の見直しは、一応図られたといえるが、今後は双方が本格的に連携を図ることが大切だ。

 介護保険は、家庭内の介護を「社会化」したという点で画期的だった。

 しかし、とくに認知症の人がいる場合、介護サービスを利用しても、家族の負担は計り知れない。いつ終わるかわからない介護に心理的に追い詰められ、介護殺人や虐待などに走るケースが後を絶たない。

 だれにも気づかれず「孤独死」するお年寄りも増えている。なかには、生活保護を申請したものの認めてもらえず、餓死したお年寄りもいた。

 景気の回復を横目に、所得の格差は開く一方である。生活保護受給世帯は13年連続で増え続けている。

 だが厚生労働省は、福祉政策と受給財源の安定的な持続を名目に、生活保護費の一層の削減に踏み切った。

 生活保護受給者のうち、子育てをしているひとり親に一律支給している「母子(父子)加算」を08年度末までに廃止する。持ち家に住む65歳以上の受給者への支給も停止し、自宅を担保に生活資金を貸し付ける「リバースモーゲージ」制度を導入する。

 生活保護など福祉政策の前提として、個々人の努力が求められることは言うまでもない。だが、生活保護は「最後のセーフティーネット」でもある。本当に生活保護が必要な人々が、福祉の網から漏れるようなことがあってはならない。

 障害者自立支援法の運用でも、地域による格差が問題となっている。国は実態を直視して、障害者が地域の中で自立し最低限の生活を維持できるよう対策を講じてもらいたい。

 これからは医療、介護、福祉を地域社会の中で連携させることが欠かせない。そのためには「地域の目」が大切だ。孤立した世帯を早期発見するには「地域の目」をどれだけ増やせるかがカギを握る。

 そのために、介護支援を軸にきめ細かな地域づくりを手掛けてはどうだろう。地域の実情を熟知した支援相談員を養成し、医療や福祉との連携を図る役目を担ってもらうのである。


■65歳以上が4割に

 昨年末に公表された将来推計人口では、1人の女性が生涯に産む子どもの数が現状のままならば、2055年には総人口は現在より4000万人減り約8990万人になる。65歳以上は4割を占めるようになるという。

 この数字が示す人口減少社会は、社会保障制度が今のままで維持できるかを突きつけている。現在、1人のお年寄りを3.3人の働く世代が支えているが、50年後にはこれが1人を1.3人で支えることになる。

 将来にわたって持続可能で安心できる社会保障制度を築くには、いま1度、実態を個別に検証していく必要がある。無駄な給付の抑制や適正化は当然必要だが、社会的弱者がしわ寄せを受けないためにはどうすればいいか。

 安倍晋三首相は政権公約に「年金、医療、介護、福祉の一体的見直し」を掲げたが、まだ本格的な議論は始まっていない。人口減社会にあっても国民一人一人が安心や信頼を得られるよう、社会保障制度の将来像について明確なビジョンを提示するときである。

=2007/01/06付 西日本新聞朝刊=

2007年01月06日