ゴエモンのつぶやき

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【「技術と障害者」会議にて】 関根 千佳さん

2016年04月05日 03時29分36秒 | 障害者の自立

◆ 世界の常識に追いつけ 
 この原稿を米国・サンディエゴで書いている。31回目を迎えた「テクノロジー(技術)と障害者」会議に参加しているのだ。ロサンゼルスのカリフォルニア州立大学ノースリッジ校が主催し、数年前からサンディエゴで開催されている。私は1993年以降、ほぼ毎年参加している。

 世界最大の、障害者を支援するICT(情報通信技術)会議である。世界中から、この分野の研究者や、各国の政策担当者が集まり、技術や法制度の動向を話し合う。グーグルやIBM、フェイスブック、アマゾンなどのICT企業や、支援技術の専門会社、放送通信技術の企業などが、最先端の技術を展示し、研究成果を発表する。

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 初めて参加した日本人は、最初びっくりする。参加者は毎年3千人ほどだが、その大半が障害のある人なのだ。会場を、補助犬ユーザーや電動車いすユーザーが埋め尽くしている。多くのセッションで、手話通訳やパソコン要約筆記などの情報保障が入る。聴覚やディスレキシア(識字障害)への対応も万全だ。

 名刺交換するともっと驚く。当事者の多くが、大学教授や政府高官、企業の役職者や上級エンジニア、ベンチャー企業のトップなのだから。

 ここでは、障害があることは、誇らしい特性なのだ。当事者のニーズを明確に把握できてこそ、革新的な成果が出せる。「ダイバーシティ(多様性)はイノベーション(革新)の源泉」という意識が、徹底している。

 さらにICTの公共調達を、高齢者や障害者が使えるアクセシブル(共用)製品に限るという「リハビリテーション法508条」が86年に制定され、98年には違反した行政担当者を告訴できるように改正された。そのため、あらゆるICT企業は、誰もが使えるユニバーサルデザイン(UD)のものだけを、開発するようになった。そこには、当事者の力が必要だ。障害のある優秀な研究者やエンジニアは、高給で引き抜かれていく場合も多い。

 この状況は米国だけではない。欧州連合(EU)も2015年に同様の法律を制定した。ICT機器のみならず、Webサイトやアプリなどの情報サービスも、障害者に使えないものは作らない、使わないのが先進国の常識なのである。建物や公共交通が全てアクセシブルになったら、車いすユーザーであることが不利益ではなくなるように、全ての情報が各人に使えるUDな形式で提供される世界では、情報障害者という言葉は消えるのである。

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 この会議に日本政府の担当者が参加したことは、残念ながら一度もない。世界各国の公共調達基準が「環境とUDへの配慮」を前提とするようになれば、その法制度を持たない日本の産業界は世界の市場を失うことになると、国は気づいていたのだろうか?

 今年4月1日、ようやく日本でも障害者差別解消法が施行された。公共、民間問わず、障害を理由に人を受け入れないことは許されなくなる。全ての飲食店に盲導犬ユーザーが入れるようになり、全ての大学に車いすユーザーがやってくるだろう。あらゆる議会に情報保障がつくかもしれない。各国の差別禁止法に遅れること20年以上ではあるが、それでも大きな一歩だ。

 だが、この法律でも、情報や製品のユニバーサルデザインに関しては、とても曖昧なままだ。1億総活躍社会というのであれば、その中には障害のある人も含まれるはずだ。解消法の基礎となった国連の障害者権利条約の精神にのっとり、情報分野や製品開発においても、世界の常識に追いつくことを、強く望むものである。

 【略歴】1957年長崎県佐世保市生まれ。九州大法学部卒。81年、日本IBMに入社後、ユニバーサルデザインの重要性を感じ、98年にユーディットを設立。2012年より現職。著書に「スローなユビキタスライフ」など。

関根 千佳(せきね・ちか)さん=同志社大政策学部教授、ユーディット会長


=2016/04/03付 西日本新聞朝刊=


パレード 宮崎市で障害者ら200人 差別解消法と県条例施行受け 「やっと出発点」

2016年04月05日 03時25分57秒 | 障害者の自立

 障害者差別解消法と「障がいのある人もない人も共に暮らしやすい宮崎県づくり条例」の1日施行を受けて、障害者や家族らが2日、「だれでも入れるお店にしよう」「差別を知って差別をなくそう」などと声を上げ、宮崎市中心部をパレードした。

  約200人が参加し宮崎山形屋前から県庁前まで歩いた。県電ホールでは記念式典があり、河野俊嗣知事が「宮崎では10年後に全国障害者スポーツ大会が実施される。バリアフリーを率先して進めていく」とあいさつした。

 主催者代表で自身も脳性小児まひによる障害がある永山昌彦さん(61)は「差別解消のスタートラインにやっと立てた。障害者も地域で尊厳をもって生きていけるよう働きかけたい」と語った。またパレードに参加した視覚障害のある桑原靖さん(57)も「宮崎には盲導犬がいると入れない店が多い。そういった状況が変わっていけば」と期待を寄せた。

 法律は障害者への差別的な扱いを禁止し、負担が重すぎない範囲で、必要な配慮を公的機関に義務付け、民間事業者には努力義務を課している。県条例では差別的な扱いの禁止について、福祉や教育などの分野ごとに詳しく定め、相談員や差別解消のための協議会の設置を明記している。

毎日新聞    2016年4月3日


障害者と一緒に汗 スポーツ楽しもう 千葉で小中生にアスリート指導

2016年04月05日 03時17分42秒 | 障害者の自立

 健常者と障害者が一緒にスポーツを楽しむ「アスリート・スポーツ交流会」が三日、千葉市中央区の青葉の森スポーツプラザであった。県内外の小中学生六十五人が参加。五輪やパラリンピックに出場経験のある一流アスリートらの指導で、ハードル走やマラソンなどを楽しんだ。

 短距離は二〇一二年のロンドンパラ五輪の百メートルで、五位に入賞した多川知希選手(30)が指導。デモンストレーションでは健常者の選手と競り合うスピードを見せた。生まれつき右前腕部が短いという多川選手は「今まで健常者と障害者が一緒にスポーツをする機会は少なかった。スポーツは誰でも楽しめるんだと感じてもらえれば」と話した。

 障害者スポーツの体験コーナーもあり、千葉市立北貝塚小の前田航希君(9つ)は陸上競技用車いすに試乗。「想像以上に速い。ブレーキの操作なども楽しい」と笑顔を見せた。

 前田君は未熟児として生まれた影響で運動が苦手で、以前はスポーツが好きではなかった。だがこの日のイベントを主催したシオヤレクリエーションクラブ(SRC、千葉市)の会員となったことをきっかけに、徐々にスポーツを楽しむようになってきたという。

 SRCの塩家吹雪代表(44)は「障害は個性だ。健常者と分けるのではなく、一緒にスポーツを楽しめると伝えたい」と話した。SRCは二〇年の東京五輪・パラ五輪に向け、南関東を中心に同様のイベントを開いていくという。

 

子どもたちと一緒に走る多川選手(手前)

2016年4月4日    東京新聞


自立生活を送る障害者たち 新たなつながり求めて

2016年04月05日 02時55分54秒 | 障害者の自立

 重度障害者が共同で自立生活を送る「アルゴ」(山口市)のメンバー5人(男性3人、女性2人)は、ほぼ24時間の介護を必要としている。

 彼らの「自立」を支えているのが、ボランティアとヘルパーたちだ。買い物や料理、ゴミ出しなどのほか、食事や入浴、着替えなどの介助を行う。

     ◇

 ボランティアの一人で、山口大学2年の宮原望さんは、大学受験直後に友人に誘われ、軽い気持ちでアルゴを訪れた。「施設っぽいところをイメージしていたので、こんなアパートで暮らしているの? という感じだった」

 初日に大石さんの食事介助をしながら話を聞き、「暇だし続けてみようかな」と思った。「友人の家に遊びに来ているような感覚です。何か頼まれればOKと引き受ける。『してあげている』という感じではありません」と話す。

 山口県立大学社会福祉学部4年の女子学生(21)がアルゴに通うようになったのは1年生の春。知り合いのヘルパーから「大学生の介護ボランティアを募集している人がいるよ」と声をかけられ、友人と2人で訪れたのがきっかけだった。

 それまで障害者と関わったことはなく、「怖いと思ったらいけないと思いながらもすごくドキドキした」と振り返る。

 特に、初めてのトイレ介助は戸惑った。「同性とはいえ下の世話は初めてで抵抗があった」。最初は「手伝わなくては」と気負っていたが、「私は自分が行きたいときにトイレに行く。みんなしたいときにしたいという気持ちは分かるのでだんだん当たり前と思えるようになった」。

 アルゴでの経験があったことで、大学の実習で施設に行ったり、施設で暮らす人と出かけるボランティアに参加したりする際、相手が障害者だと聞いても「抵抗なく付き合えるようになった」という。将来は、高校の福祉科の教諭や福祉施設の職員として働く道も考えている。

 脳性まひで手足の自由が利かない大石勝さん(50)は「トイレ介助とか最初はびっくりしたかもしれんけど、そのうち『おしっこ』と言われれば、『はいはい』という感じになる。逆に専門知識ばかりだと、受け止め切れずにやめてしまう人もいる」と話す。

 私自身、約1年間アルゴに通い、今まで気がつかなかった街の中の小さなバリアーや、介助での悩みなどを具体的に知ることができた。「理解しよう」と思っても、相手のことを知らなければ何を理解すればいいのかも分からない。

     ◇

 だが、ボランティアの数は年々減少している。2000年ごろには、70人近くが出入りしていたが、現在は大学生4、5人ほどにとどまる。大石さんは「昔より大学生に余裕がなくなっている」と言う。

 大石さんによると、以前は大学の食堂に顔を出し、「ごはん食べさせてくれんか」と学生に頼み、食事中の会話を通してアルゴでの介護にも興味を持ってもらうようにしていた。ところが、最近は食堂で勉強していたり、授業があるからと断られたりするケースが増えているのだという。

 重度障害者の「自立」はリスクを伴う。一方、施設などに頼らず、社会とのつながりを維持することで、「共生」への理解は積み重なっていく。「障害者も同じ社会に生きているんだと知ってもらいたい」という大石さんらの思いの実現には、ボランティアら健常者との接点が何より欠かせない。

 高齢化の問題ものしかかる。共同生活を始めたときは20代だったメンバーも今では50代。体力は衰え、若い頃のような活動には限界がある。「活動のあり方を変えていかなくてはいけない。若い障害者も巻き込みたい」と大石さん。先月からはデイサービスにも通い、新たな「接点」づくりの模索を始めている。

写真・図版

学生ボランティアやヘルパーの介助を受けて食事をするアルゴのメンバー

2016年4月4日      朝日新聞デジタル

 

NPO法人み・らいず 障がい者に「当たり前」を 大学生活動、学習支援も

2016年04月05日 02時51分25秒 | 障害者の自立

 大学生たちが障がい者の余暇を支援する活動から始まった。ニーズに対して「なんとかする!」を合い言葉に、既存の福祉制度の枠からはずれるサービスの必要性を感じ、開拓してきたのが「み・らいず」だ。今もスタッフ約50人と大学生150人が、一般の塾では対応できない学習支援事業や、引きこもりの人の居場所作りと就労支援などに取り組む。

 きっかけは、代表理事の河内崇典さん(39)が大学1年のとき「割がよいから」と、内容を十分把握せずに請け負ったアルバイトだった。実際は障がい者の入浴介助だった。福祉はまったくの素人で「次にはやめようと」と2回目に行くと、障がい者のお母さんから山盛りのからあげをごちそうされ、さらに3回目も歓待された。やがて、お母さんの子どもへの愛情に接し、「尊敬できる人」と強く思うようになった。今度は、その障がい者が通う作業所のキャンプにかかわると、従来は「お湯が危ないから」とカップラーメンも食べた経験がないことを知った。当たり前のことができるように、工夫をして壁を取り除こうと、他の大学生と計4人でガイドヘルパー(余暇支援者)のサークルを結成し、2年後の1998年、「み・らいず」の設立に至った。

 支援の主力は大阪や京都の約20大学の学生。スタッフ4人が講義をする各大学の学生や、友人や先輩の紹介、口コミで学生が集まってくる。

 活動のメインは今も、障がい者がラーメンを食べたり、喫茶店へ行くなど外で当たり前のことができるように支援する「ガイドヘルプ」だ。

 その活動をするうち、「車椅子なので塾に通えない」とか、「きょうだいが不登校」、「学校で学びが遅れ勝ち」といった悩みが耳に入り、学習支援にも乗り出した。それが、個別の学習支援「ラーンメイト」で利用者は現在62人。通常の塾と違うのは、発達障害や不登校など子どもの状況に合わせて柔軟にプログラムをつくる点という。精神面で支えたり、社会性を身につけていくことを組み入れることも。1対1の支援だが、家庭教師派遣か塾通いタイプがあり、相談して決める。教師側は定期的に専門的な研修を受けている。

 今、力を入れているのは不登校や引きこもりの若者への支援という。堺市の委託では0〜39歳を対象とした「子ども・若者総合相談」を受け付けている。一緒におやつやクラフト作りをするなど、小集団でのかかわりをつくる中で、自信をつけ、働くためのサポートをするというものだ。

 堺市の事業などを担当する松浦宏樹さん(31)は「学校へ行けた、働けるようになったなど、できなかったことができるようになった人やその家族を見ていると、素朴にやっていて良かったと思う。福祉という領域はきれいごとだけではないが、楽しくクリエイティブな仕事です」と活動への参加を呼びかけている。

 補助金の有無は活動によってさまざま。支援者は有償もボランティアもある。

 

み・らいず(NPO法人)

名称由来:「未来図」と「me(私)−rise(上昇する)」から、かかわる人が未来に向けて上昇するという意を込めた。

所在地:大阪市住之江区南加賀屋4−4−19(堺市、高槻市、京都市などにも活動拠点)

連絡先:電話050・5840・3113

ホームページ:http://www.me-rise.com

メールアドレス:me-rise@me-rise.com

毎日新聞     2016年4月4日