猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

国家間が合意すれば個人の苦痛や損害はどうでもいいのか

2019-08-30 23:52:29 | 日韓関係


今回の、日本による韓国叩きは、日本が安倍政権の下に安定しているがゆえに起きた、という説明をしている保守派のテレビ評論家がいた。彼によれば、「歴史問題」をぶり返す韓国に、日本はずっと我慢していたが、いまなら韓国に殴り返しても、日本の政局に混乱を引き起こさないから、韓国叩きの絶好のタイミングだと言っているのだ。

しかし、日本の韓国叩きは、日本が韓国に暴力をふるうことである。暴力をふるう理由は、韓国が日本の言うことを聞かないからである。言うことを聞かすために暴力をふるうことは、決して、正義だと言えない。当然、そんなことをしたら、だめだと言って止める人が出てきそうなところである。ところが、自民党も公明党も維新も止めない。共産党と山本太郎だけが、止めようとしているようだ。このことをもって、政局に混乱が生じないと言っているのだ。

ここで、日本とか韓国とか言っているものは、第一義的には日本政府であり、韓国政府である。そして、日本のメディアは韓国政府、ムン・ジェイン政権の悪口を言い、ムン・ジェィン政権が倒れれば良いとまで言ってしまう評論家もいる。

ここに「愛国者」のいい加減さがある。政府と政府との争いで被害を受けるのは国民の一人一人である。peopleである。men and womenである。

安倍晋三は1965年の日韓請求権協定で、歴史問題がすべて解決したという。しかし、協定は軍事政権の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領と 安倍晋三の大叔父 佐藤栄作首相との間の合意であって、しかも、協定によって、韓国人が、個人として、日本に併合されていた時に受けた不利益が実際に賠償されたわけではない。

日韓請求権協定は、日韓基本条約の付随協定である。極東の安定を図るアメリカが、日本と韓国との間に大急ぎで平和条約を結び、日本が韓国の経済復興を助けるよう、1960年代に圧力をかけた。日本が韓国の経済復興に協力するかわりに、そのとき、韓国が賠償請求権を放棄した、というのが、日本政府の解釈である。

しかし、韓国人が個人として何か賠償金を得たわけではないから、不満が絶えず吹き出て、慰安婦像を韓国内やアメリカに建てたり、元徴用工が日本企業を訴訟したりが起きる。韓国内で不満が吹き出るのはしかたがないことである。そもそもの問題が1965年の協定にあるのだから、風波がたたぬようしておくしかないのに、今回、日本政府は韓国政府に「反撃」してしまった。

「歴史問題をぶり返すな」というのは、安倍晋三は、韓国併合が合法的に行われたと主張し、1965年に日韓基本条約が結ばれたのだから、日本政府と韓国政府との韓国併合の事実認識の違いについて、韓国人は口にするな、ということである。韓国人に無理な要求をしているのだ。

安倍晋三は個人より国家を優先する右翼である。しかし、国家より個人を優先する自由主義者の日本人なら、メディアまで、韓国叩きをするのは、おかしいと思うはずである。日本のメディアは、いつから、右翼に転向したのか。

吉田松陰は、尊王攘夷しかない、過激青年だった。現在、吉田松陰を尊敬する安倍晋三は、攘夷の「夷」を韓国に絞っている。アメリカは「夷」ではなく、祖父の岸信介、大叔父の佐藤栄作と同じく、日本の「ご主人さま」になっている。その結果、トランプの顔を立てるために、日本人のひとりひとりに、個人としての負担を強要している。国家主義者は強きにへつらい、弱気をくじく、本当に人間のクズである。