帰り道に南東の空を見上げると、低い位置にまもなく満ちるであろう弥生五日の月が望めた。その上方にひときわ鮮やかに明るく輝く星は何だろうと、にわか興味が手伝って天文手帳で調べると、どうも「おおいぬ座」マイナス1.5等星のシリウスらしい。そのうえあたりにはこいぬ座があるはずで、ひょっとしたら一月末に亡くなった母の愛犬キャバリアのBAGUクンが「僕はここにいるよ」って教えてくれたのだろうか?まあ、ちょっとセンチメンタルすぎるかな。
その日の深夜、メールの返信を書き上げ、送信ボタンをクリックしてから、ほっとして時計の針を見るともう零時を回ったところ、二十四節気のうちの「啓蟄 けいちつ」となった。この季節冬籠りしていた地中の虫たちが、ようやく目覚めて姿を現し始めるころ。
ふと、“ほぼ”満月の行方のことが気になってリビングのサッシを開けてベランダに出てみる。しんとしてひんやりとした真夜中の空気を感じながら見上げると、東から南方向の高い位置に上ったほんとに見事な正真正銘の満月!そしてなんと驚いたことには、満月の右側に天空を横断する長い長いひこうき雲が月明かりに映えてくっきりと、天地を上から下方に流れるように描かれているではないか。当たり前かもしれないけれど、ひこうき雲って深夜でもできるんだなあ、でもその時が生まれて初めて出会ったような気がする。やがてその軌跡はゆっくりと満月を跨いで、東の方向へと次第に流れていく。いったいこの月とひこうき雲が交差していく情景って、そのとき密かに思っていた心象の何かとシンクロしていてくれたのだろうか?
日常の合間のちょっとした奇跡のような真夜中の天体ショーを目の当たりにして、そのひと時の流れをうまく言葉にできなかったのは、人智を超えたような情景がひたすら美くしかったから。自然との出逢いのシンクロニティ、不思議な偶然に、来週末の旅の行方はどうなるだろうかと思いをめぐらす。
今朝は柔らかな雨が降り、ひと雨ごとに草木萌え動きだし、生命の息吹を感じて、季節の気配を想う日々。
(2014.03.07初校、03.10改題校正)
その日の深夜、メールの返信を書き上げ、送信ボタンをクリックしてから、ほっとして時計の針を見るともう零時を回ったところ、二十四節気のうちの「啓蟄 けいちつ」となった。この季節冬籠りしていた地中の虫たちが、ようやく目覚めて姿を現し始めるころ。
ふと、“ほぼ”満月の行方のことが気になってリビングのサッシを開けてベランダに出てみる。しんとしてひんやりとした真夜中の空気を感じながら見上げると、東から南方向の高い位置に上ったほんとに見事な正真正銘の満月!そしてなんと驚いたことには、満月の右側に天空を横断する長い長いひこうき雲が月明かりに映えてくっきりと、天地を上から下方に流れるように描かれているではないか。当たり前かもしれないけれど、ひこうき雲って深夜でもできるんだなあ、でもその時が生まれて初めて出会ったような気がする。やがてその軌跡はゆっくりと満月を跨いで、東の方向へと次第に流れていく。いったいこの月とひこうき雲が交差していく情景って、そのとき密かに思っていた心象の何かとシンクロしていてくれたのだろうか?
日常の合間のちょっとした奇跡のような真夜中の天体ショーを目の当たりにして、そのひと時の流れをうまく言葉にできなかったのは、人智を超えたような情景がひたすら美くしかったから。自然との出逢いのシンクロニティ、不思議な偶然に、来週末の旅の行方はどうなるだろうかと思いをめぐらす。
今朝は柔らかな雨が降り、ひと雨ごとに草木萌え動きだし、生命の息吹を感じて、季節の気配を想う日々。
(2014.03.07初校、03.10改題校正)