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まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

四月になれば APRIL COME SHE WILL

2015年04月24日 | 音楽
 朝日の爽やかな午前中、ふと思い出して引っ張り出してきた、サイモン&ガーファンクルのアルバム「サウンド オブ サイレンス」(1965年)九番目のトラックは、この季節にふさわしい「APRIL COME SHE WILL」、“四月になれば彼女は”というタイトル。
 同曲は、作者ポール・サイモンの同時期にリリースされたソロアルバム「The Paul Simon song book」のなかの四番目にも収録されている。わずか二分弱の短い曲だが、半年の短い時の経過とともに移り変わる恋人同士の関係性を月名称が韻を踏んで繰り返される印象的な歌詞にのせて美しく謳われる。永遠の青春時代の名曲のひとつ、といって良いだろう。

 あらためてその歌詞を聴き直してみると、とても不思議な内容であることに気がつく。はじまりは四月、僕のもとに彼女はやってくる、五月になれば彼女はここに落ち着くだろう、ぼくの腕の中でふたたび眠りながらと、ここまではいいのだが、六月になると彼女の気分は変わって落ち着かなくなり、七月彼女は予告なしにどこかへ飛んで行ってしまう。そしてなんと、八月に彼女は死んでしまい、九月になると僕はこれまでの愛を回想していて新しい成長を予感する、といった内容だ。その先にはまた冬を通り過ぎてやがて早春に至り、ふたたび彼女と出逢うのであろうかと思わせるような仏教における“輪廻再生”的な余韻を感じさせる世界がひらけている。
 どこかミステリアスな世界観は、村上春樹「ノルウェイの森」のワタナベ君と直子の関係を連想させて、新学期に大学キャンパスで出会った若者たちの繰り返される出会いと成長、別れの風景にふさわしい。もしかしたら、この曲は「ノルウェイの森」のモチーフのひとつになっているような、そんな気もしてくる。おそらく村上春樹は、ポール・サイモンを意識しているであろうし、そもそも両者はそのずんぐりした風貌や生まれと育ち、ノーブルで知性的な作風はもちろん、支持するファン層からして類似しているのではないだろうか。

 もうひとつ、S&Gの1964年のデビューアルバムのタイトル曲「水曜日の朝、午前三時」という曲について。こちらは、若気の至りで窃盗犯罪に手を染めてしまった若者が、真夜中にベットの隣で眠っている恋人の寝顔を眺めながら後悔の念にかられて夜明け前にそのもとを去っていくであろう情景を歌っているやさしげなメロディーが印象的な曲。ここでの水曜日にはどのような意味が込めらているのだろうか?休日明けから始まったウイークデーの中日、週末までにはまだ数日あり、どちらつかずの中途半端な曜日に若者の漠然とした不安や閉塞感を象徴させているようにも思える。そして午前三時はふつうは深く眠りに落ちている時間帯、この時間に目覚めてしまうなんて!最近の私みたいな気がして何があったんだろう、と。やっぱりね、嵐が吹いて遠くで雷が鳴り、光っていたのかもしれないし。
 
 ほかに曜日がタイトルの印象的な曲といったら、カーペンターズが1971年にリリースした「雨の日と月曜日は」がある。週明けの月曜日、雨の日と同様に感じるメランコリーな感情をほのかな恋愛感情に重ねて謳ったもので、イントロで流れるハーモニカのメロディーが印象的な曲だ。週末、主人公になにがあったのだろうか?日常感情のちょっとした行き違い、あまりふたりの関係はうまくいっていないのだろうか、あるいは倦怠期を迎えて何か新しい局面を期待しているのだろうか、この週明けの憂鬱で複雑な気分はそのせい?そんな大人びて聞こえる内容のビター&スウィートな曲で、今週の月曜日は曇りのち雨模様、まさしくこのタイトル曲にふさわしい天候なのでした。

 今日は金曜日、春爛漫の季節にふさわしい天気で庭の花水木やツツジが美しい。そろそろ、部屋を抜け出して近くのまほろ牡丹園を訪れて、いまが見頃の大輪の花々を眺めてこようか。

(2015.04.19書始め、04.24初校)