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まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

夏の名残りの江の島花火

2015年08月19日 | 日記
 夏の終わり、江ノ島まで花火見物にでかけた。

 仕事からの帰り道に小田急大和駅ホームで家族と待ち合わせ、しばらくして反対側のホームにすべりこんできた藤沢行きの快速急行に乗り込む。午後六時すぎの西の空には、まだ夕暮れ前の明るさが残っていて、丹沢のむこうにに沈もうとする太陽が最後の輝きを放っていた。下り電車の途中、湘南台から六会日大前を過ぎるあたりで、たなびく筋雲の空と富士山のシルエットがくっきりと浮かぶ。刻々と夕闇が増してきて暗くなる中、西方の澄んだ空が一日の名残の明るさを残しつつ、山並みの向こうにグラデーションを織りなすのを眺めていた。やがて電車が藤沢に到着する手前、JR東海道線と交差する鉄橋の上を通るあたりで、線路の建物の間のちょうど先を注視していると、ふたたび見事な末広がりのシルエットが闇の深さのなかに浮かんでいた。車内はしだいに花火見物の浴衣姿の若者の姿が増えてきた。

 片瀬江ノ島駅に到着して、どっと臨時改札へと流れる人ごみの中に混じり弁天橋を渡らずに、水族館のある西浜海岸の方向へと向かう。国道134号線を渡ると湘南海岸公園の東のはずれで、ちょっとした松林の先に芝生広場があって、そこでしばし浜風に涼みながら、ゆっくりと打ち上げ時間を待つことにした。正面海上の南の低い空には、眉のような若い月齢の上弦の三日月、左手方向に江の島のお椀を伏せたような姿と頂上燈台の青く光るLEDイルミネーション、島へと続く弁天橋の車のヘッドライトと赤いテールランプが渋滞なのかゆっくりと移動している。まだ西寄りの空にはしぶとく陽光が残っていて、雲の長い横筋をはっきりと見ることができる。

 やがて、暗さが増してきたころあいも程よい午後七時、最初の打ち上げ花火が始まった。見上げる位置のすぐ正面、江の島との間の海上が打ち上げ船場所らしい。ときおりのどよめきと歓声、子どもたちの無邪気な話し声の中、花火は次々と続いた。華やかに天空にひらいて輝き、あっという間に残像を遺して闇へと還ってしまう。ひとは、その儚さに意識しないとしても、生と死の両面を見るのだろう。始まって半時間ほどの最後は、暗闇の江ノ島全体に覆いかぶさるかのような大輪の華が開いて、いく筋もの光の流れががキラキラと落ちて海面につく前に消えていく。

 夏の終わりの花火は、どうしても内省的な気分になってしまう、ちょうど夕暮れに聴くヒグラシ蝉たちの郷愁を帯びた、もの物哀しい鳴き声のように。 ああ、実りの秋よ、早く来い!