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北海道現代川柳『泥』佐藤容子作品

2007年07月30日 | 川柳
 揺 れ る 水  



          陽が射すと咲こう咲こうとする仏

気負うなという兄がいて春風船
      二の腕をぷるんぷるんと春爛漫
            幾千語吐き終え蝶は耳を出る

                一年のわずか五日を咲く自愛
                    消えた人数えて指は不感症 
                       別れ以後水に根をはり十の指                    
                暗闇の指から発す声あまた

            誠実な指 一本の釘をぬく
     まだ生める十指か霧が纏いつく
  鈍刃を握り聖地を出ぬ背骨

             春泥に溺れてしまう低い月
                飯冷めて烈しさの増すパントマイム
            清め塩たっぷり狂はそこかしこ
                    凍天にさえる嗅覚 人を恋う
      一列に並び他人の影を踏む

                ひらり身を返し禁猟句の帽子
        アドリブの下手な夫婦がおりまして
逆行の机上 増殖する枯野
        沼の底生あるもののおびただし

                雨の日のポスト発酵する殺意
      哭く海を見届け封印念入りに

             あれはみな錯覚だった バスは来ず
                 後編はどんでん返し春の雪
                     一編は完結喉を過ぎる水

  魚の眼は今も楽園 テロニュース
       揺れる水 死はたやすいか紙の船
           壁の絵も老い錠剤がまた増える

            父と観た映画の銃が背を突く

                    句読点。さてこれからの泥あそび
コメント
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