ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#156

2019-05-07 12:00:41 | 刑事ドラマ'70年代









 
今は亡き市川森一さんが創造された、『太陽』セミレギュラー陣の中でも私が一番好きなキャラクター「鮫やん」こと鮫島勘五郎(藤岡琢也)、4度目の登場エピソードです。

大阪出身、かつてボス(石原裕次郎)と同僚だったハミダシ刑事で、人情に厚く、お節介がエスカレートして暴走する事しばしば。

そして今回、八方破れの度が過ぎて、いよいよ刑事を辞める羽目になっちゃいます。


☆第156話『刑事狂乱』(1975.7.11.OA/脚本=市川森一/監督=竹林 進)

鮫やんは1年前(第89話『地獄の再会』)、若き相棒刑事=青木を、自分の生命を狙う犯人に殺されて以来、失意の日々を過ごして来ました。何しろ、未来ある若者を、自分の身代わりで死なせてしまったワケです。

その、死んだ青木刑事の恋人だった女性=律子(五十嵐淳子)が、尾崎(山口 暁)という現在の恋人と別れたがってる。彼女は「三上 順」という、七曲署の新米刑事を好きになっちゃったのでしたw

こう書くと律子は恋多き女、魔性の女みたいに思われそうだけど(実はそうなのかも知れないけど)、これには事情があるのでした。

それはともかく鮫やんは、悩んでる律子を放っておけない。彼女から青木刑事というパートナーを奪った負い目があるだけ、普段にも増してお節介の血が沸いちゃう。

かくして、律子を諦めるよう説得すべく、尾崎のマンションを訪れた鮫やんは、そこでテキサス(勝野 洋)と鉢合わせし、驚愕します。テキサス=三上順は、死んだ青木刑事と瓜二つなのでした。

それもその筈、1年前(ジーパン時代)のエピソードで青木刑事を演じたのは、テスト出演で起用された勝野洋さんなのですw 今回は、同じ鮫やん編に勝野さんが別人役で出演されてた事実を活かした(あるいは苦し紛れに捻り出した?)ストーリーなんですね。

律子が、尾崎という新しい恋人がいながらテキサスに惚れちゃったのも、彼が青木刑事とクリソツだったから。

そしてテキサスがマンションを訪れたのは、尾崎に呼び出されたから。半ばストーカー化した尾崎は、律子から手を引くようテキサスを脅すつもりだったんでしょう。

ところが、まるで青木刑事の生まれ変わりみたいなテキサスを見てテンションが上がった鮫やんは、本来の目的を忘れてテキサスを連れ出し、徹夜で呑み歩いちゃう。

で、朝になって殺人事件発生の一報を受け、鮫やんと別れたテキサスは、アーチェリー場で尾崎の他殺死体と対面する事になります。

テキサスが律子と初めて出逢ったのも、同じアーチェリー場。容疑者として律子が捜査線上に浮かぶのは、もはや時間の問題です。

実際、尾崎を殺したのは律子でした。凶器はアーチェリーの矢で、現在ならばアーチェリー協会からのクレーム必至でしょうw

もっと早く尾崎に会って話をつけていれば、律子は殺人を犯さずに済んだ……鮫やんはまた、自分を責めます。

「青木は、わいの身代わりで死んだんや。わいは、あのとき死んだんや!」

鮫やんは、覚悟を決めました。

「あんた、人殺しなんかしてへん。わいが逃がしたる」

鮫やんは、自首しようとする律子を引き留め、殺人の証拠隠滅に奔走しますw

高視聴率により健全路線を突っ走らずを得なくなった『太陽にほえろ!』において、冤罪や正当防衛ならともかく、痴情のもつれで、明らかに殺意を持って犯行に及んだ殺人犯を、刑事が意図的に逃がすなんて事は、まず許されません。いや、高視聴率でなくても岡田プロデューサーが許さないw

だけど唯一、鮫やんだけはそれが出来ちゃう。何しろ岡田Pと小川チーフライターのチェックを受けない、唯一の脚本家=市川森一さんが生み出したキャラクターなんです。

それでも恐らく、この時期の『太陽』としては限界ギリギリで、鮫やんが最終的に刑事を辞める前提あればこその展開でしょう。

鮫やんだけじゃなく、藤堂チームの面々も今回ばかりはムチャをします。特に鮫やんと付き合いの長いボスは、彼の行動パターンをだいたい把握してる。なにせ単純な人だから読み易いw

「こうなったら……サメの流儀でやってみるか」

「鮫さんの流儀?」

「八方破れってヤツだ」

放っておけば律子の罪を全て鮫やんが被ってしまうと読んだボスは、トラップを仕掛けます。律子の自殺をほのめかした上で、わざとテキサスに拳銃をチラつかせる。案の定、焦った鮫やんはその拳銃を奪い、律子を匿ってる別荘にテキサスを連れて行きます。

「ホンマはわいやのうて、お前に連れて逃げてもらいたかったんじゃ、わしは」

最近モテモテのテキサスですがw、あのモナリザの一件で懲りたのか、律子と対面しても職務を忘れません。

「俺は刑事ですよ、鮫島さん」

「人間として、男としてどうなんや?」

「俺は刑事です!」

「やかましいわい! 刑事刑事って偉そうに言うな! わいはな、おのれが産まれた時から刑事やっとるんじゃ!!」

鮫やんの叫びは、あまりに生真面目な岡田Pに対する、市川さんの抗議に聞こえなくもありませんw

そこに駆けつけた殿下(小野寺 昭)が、決定的な一言を言います。

「律子さん。あなただって、これ以上鮫さんを巻き込みたくない筈だ」

「黙れ! やかましい、何も言うな! 言うな何も!」

これは勿論、律子じゃなくて鮫やんのセリフですw

「おんどりゃあ、わいをハメくさったな?」

これも律子じゃなくて鮫やんですw 律子がテキサスの拳銃で自殺を図ったんだけど、あらかじめ弾丸が抜かれてたのでした。

「鮫さんを助ける為ですよ」

元はボスが仕組んだ作戦とは言え、テキサスも刑事として成長したもんです。

「律子さん。僕は、三上だ。青木君じゃない」

泣き崩れる律子に、テキサスが言いました。確かに、青木刑事の代わりは誰にも務まりません。

最後に殿下が、実にキレイにまとめてくれました。

「たとえ、愛する者を亡くしても、あなたを愛してくれる者がいたら、その人の為に、生きる価値はあると思いますよ」

あまりに人間臭い鮫やんの大暴走を見た後だと、七曲署の刑事たちの言動が、ちょっと綺麗事に感じちゃいます。これはもしかすると、健全路線をひた走る『太陽にほえろ!』に対する、市川さん流の皮肉だったのかも知れません。

「ええ刑事になれよ。わいみたいになったら終いやぞ」

市川さんとしては、本エピソードをもって『太陽』を卒業したかったんじゃないでしょうか?

「ええ思い出は……ホンマひとつもあらへん」

これが当時の、市川さんご自身の心境だった……なんていうのは、ちょっと勘ぐり過ぎでしょうか? 勘ぐり過ぎですねw 現に市川さんは、1年後に鮫やんを探偵として再登場させておられます。(第205話『ジョーズ探偵の悲しい事件簿』)

サヨナラするにはあまりに惜しいキャラクターゆえ、番組側からの要望もあったでしょうし、市川さんとしても、鮫やんにはまだまだ元気でいて欲しいっていう、強い思い入れがあったんじゃないでしょうか。

それが市川さんの実質『太陽』卒業作となり、以降は別のライターさんに引き継がれ、鮫やんはマカロニからDJまでの歴代刑事達ほぼ全員と絡んだ、唯一のゲストキャラとして活躍する事になります。

そして、律子を演じた五十嵐淳子さんは当時23歳。

この時は旧芸名の「五十嵐じゅん」とクレジットされてますが、直後にゲスト出演された刑事ドラマ『俺たちの勲章』から淳子と改名。そこで出逢った中村雅俊さんと結婚される事になります。

それまで、マトモな恋愛経験はされてなかったんだとか。って事は、『太陽』出演時はバージンだった?
 
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『太陽にほえろ!』#153

2019-05-07 00:00:08 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第153話『モナリザの想い出』

(1975.6.20.OA/脚本=小川 英&田波靖男/監督=児玉 進)

当時、空前のブームを巻き起こした絵画「モナ・リザ」をモチーフにした、テキサス刑事(勝野 洋)の純愛ストーリー。ナット・キング・コールの歌唱で大ヒットした『モナ・リザ』のメロディも効果的に使われてます。

藤堂チームが収賄容疑でマーク中の土木公団局長=村松(根上 淳)は画廊を経営しており、そこで張り込んでたテキサスが、ひょんな事から村松の一人娘=聡子(藍とも子)と親しくなります。

村松が今は亡き妻をモデルに描いた肖像画に、聡子の面影を感じて見入ってるテキサスを、彼女は貧乏画家だと思い込みます。どっからどう見ても体育会系なんだけどw

村松の尻尾がなかなか掴めず苦戦中とあって、ボス(石原裕次郎)はそのまま貧乏画家になりすまして聡子に接近するよう、テキサスに命じます。

出逢った時から既に惹かれ合ってるテキサスと聡子は、みるみる親密さを増していき、手を繋いでデートする仲になっちゃう。

もちろん、最終的には村松を逮捕しなくちゃならないワケで、テキサスは失恋した上に「仕事のために私を騙し、利用した男」として、聡子から恨まれる羽目になっちゃいます。

だけど、マカロニ(萩原健一)がその試練を味わった『愛するものの叫び』やジーパン(松田優作)の『新宿に朝は来るけれど』は、いずれも好きになった彼女が殺人犯だった!という、あまりに救いようのないバッドエンドでした。

それに比べればテキサスの場合、まだ一般的な失恋に近い感覚で、だからこそ私はガキンチョ時代、このエピソードを観て号泣したもんですw

大人になった今観ると、前述の通りマカロニやジーパンに比べると甘い話なもんで、若い時ほど心は動かないですね。

「胸がキュウっと痛いか? 若い時にはよくあるもんだ」

ラストシーンでテキサスにかけたボスの言葉がコレですからねw

高視聴率によりマイルド化せざるを得なかったのかも知れないし、テキサス=勝野洋さんの純朴なキャラクターが、自然にそうさせた側面もあるでしょう。

山さん(露口 茂)も上半身を30度傾けながら「あいつ、生まれて初めて女の子に惚れたのかも知れんな」とか言ってるしw いくらなんでも20代半ばで、純朴にも程があるw

セクシャルな匂いが完全に取り払われ、良くも悪くも『太陽にほえろ!』がファミリー向けの番組にシフトしたことが、こういう部分でも確認出来ますね。

藍とも子さんは当時21歳。モデル出身で、前年放映の『ウルトラマンレオ』が女優デビュー作。映画『メカゴジラの逆襲』等、特撮ファンに馴染み深い女優さんです。

刑事ドラマにも数多くゲスト出演されており、特に『太陽にほえろ!』は通算5回と、恐らく最多出演作じゃないでしょうか?

中でも、本エピソードにおける天真爛漫なお嬢様役はとても魅力的で、強く印象に残ってます。
 
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