ここ数日の流れを受けてピンク映画と誤解しそうなタイトルだけど、この「ハァハァ」はあの「ハァハァ」ではなく、もっと爽やかな「ハァハァ」です。『スイートプールサイド』の松居大悟監督による、2015年公開の青春ロードムービー。
北九州市に住む女子高生の一ノ瀬(井上苑子)、さっつん(大関れいか) 、チエ(真山朔)、文子(三浦透子)の4人が、人気ロックバンド「クリープハイプ」のライブ会場で出待ちしてたらボーカルの兄ちゃんに「東京のライブにも来てね」と声をかけられ、すっかりその気になって東京は渋谷を目指し、無謀な自転車の旅に出かけるというストーリー。
途中で自転車がパンクしてヒッチハイクしたり、資金が底をついてキャバクラでバイトしたり等のトラブル&冒険を経て、対立と和解も乗り越えて、渋谷の会場まで「ハァハァ」言いながら走って辿り着いたら、もうライブ終了寸前で……と、つい最近レビューした『リトル・ミス・サンシャイン』を例に挙げるまでもなく、ロードムービーってだいたいこんな展開だよねって、冷めた言い方をすればそんな感想でした。
『~サンシャイン』の時ほど私がのめり込めなかった理由は、大雑把に2つあります。まず1つは、女子高生たちが夢中になってる「クリープハイプ」っていう実在の人気バンドにまったく魅力が感じられなかったこと。これは単なる嗜好の違いだから仕方ありません。
それともう1つは、本作の長所でもあるかも知れないんだけど、女子高生たちがまったく普通の明るい子たち、つまりマジョリティであること。『~サンシャイン』のファミリーみたいにそれぞれが深刻な問題を抱えたマイノリティじゃないんですよね。
彼女らの家庭環境とか学校でのポジションとか、背景がほとんど描かれてないから断言できないけど、見る限りじゃイジメられっ子でも極端な不良でもなく、学校にいる時も同じようにキャピキャピしてそうな普通の女子高生。それが悪いって言うんじゃ勿論ないけど、集団生活にまったく馴染めなかった私にとっては共感度が低いワケです。
クリープハイプってバンドがまさに、そういう多数派を喜ばせる為に音楽やってるミュージシャンの代表みたいに見えちゃう。実際はそうじゃないかも知れないけど、この映画で見る限りはそう感じてしまう。
窮屈な日常から脱出したい気持ちはよく解るし、自転車によるツーリングも学生時代に(日帰りだけど)したことあるから、まったく共感できないワケじゃないんだけど、他人事と感じてしまうとちょっと、こういう映画はノレないですよね。
けど、それでも最後まで楽しめたのは、女子高生を演じる若手女優さんたちの演技がとても自然で、芝居臭くないから。これにはホント感心しました。
もちろん松居監督の演出力も凄いんだろうけど、もし昭和の頃の若手俳優を使って同じことしたら、たぶん映画として成立しないんじゃないでしょうか?
それはきっと、演技力の問題とはまた違うんですよね。彼女らの演技がいくら自然で素晴らしくても、だからって多部未華子さんみたいにどんなキャラにでもなり切れるかといえば、多分そうじゃない。
監督はおそらく、4人のキャラクターをほぼ「素」で演じられる子たちをオーディションで選んだ(あるいは脚本を彼女らに合わせて当て書きした)筈で、彼女らが演じてるのは自分自身なんだろうと思います。
今の若い人らは生まれた時からカメラで撮られ続けて、すっかりカメラ慣れしてるもんだから、素をそのまま撮られることに抵抗がない。本作の素晴らしさは、彼女らのそんな資質をうまく生かしたのと、そうすることで今どき女子の生態をリアルに描き出したこと。それに尽きるんじゃないでしょうか?
だから、憧れのバンドがクリープハイプだろうがくりぃむしちゅーだろうが何だっていいんです。とにかく今を生きる女子高生、まさに等身大の17歳女子たちの言動を、犯罪を犯さずに覗き見できる、そこにこそ価値があるんだと私は思います。
自分たちの旅をSNSで公開し、助けを求めたりバッシングの的にされたり、カレシがいるくせに行きずりの池松壮亮(要するに見た目のいいヤツ)と簡単にディープキスしたり、まったく罪悪感なくタバコを吸ったり等、そういうのがすっかり日常風景になってる感じが、まあオジサンだからよく知らないけど多分リアルなんですね。
1つだけよく分からなかったのが、北九州から東京まで自転車で行くつもりの彼女らが、出発時に学校の制服を着てること。もちろん途中で着替えることになるんだけど、だったら最初から軽装で行きゃええやん!ってw、しょっぱなで疑問が沸いちゃったのも感情移入の妨げになりました。
朝から登校すると見せかけて……なら解るんだけど出発は夜だし、荷物が増えるだけの話で何のメリットも無い。もし、映像的に映えるからとか、ポスター写真を制服姿にしたかったからとか、そんなつまらん理由だとしたら心底ゲンナリです。
制服が窮屈な日常のシンボルで、最後にまた制服姿に戻ることが「旅の終わり」なんだと、そういう意味が込められてるのかも知れないけど、だとしたら演出過剰ってもんじゃないでしょうか? 何でもかんでも比喩すりゃいいってもんじゃない。
そんなワケでオジサンのハートに突き刺さるものは無かったけど、最初からオジサンなど対象外でしょうからw、なんの問題もありません。
クリープハイプってバンドがどれくらい人気あるのか知らないけど、ああいう音楽が好きなマジョリティにはオススメしても大丈夫そうです。
それと、今の若手俳優たちの凄さですよね。『スイートプールサイド』にせよ『アルプススタンドのはしの方』にせよ、今でなければ成立しそうにない。そこは素直に拍手を贈りたいと思います。
素晴らし過ぎます!
なんで写真にセクシーショットがないんだー!
と、メチャメチャ謎になり本文を読んで納得
自分のエロ思考がウルトラ恥ずかしいです(笑)
すごいタイトルてすね!
つられましたww