1880 空を飛ぶ
いま書店の棚に福永武彦 の小説を目にしなくなった
自宅に眠る文庫本の中から福永武彦『廃市、飛ぶ男』を手にした
10年前に読んでいた
「君は夢の中で空を飛んでいることはないかい」( 『廃市、飛ぶ男』180頁)
自分は月に1、2回空を飛ぶ夢を見る
両手を広げ鳥のように羽ばたきながら飛んでいる
大海や大河の上を飛ぶ夢は最高に気持ちがよく、このまま夢の世界であって欲しい、と願う
彼の身体は半ば死んでいるのだ
彼の両脚は、腰から下は、痺れたまま何の感覚もなく、歩くことができなくなった
ベッドの上で仰向けになり、かろうじて寝返りはできる
ベッドで寝ているだけの生活
それは「生活」と呼べるのだろうか
彼は身体の左側を下にして、病室の窓の方を見ることが好きだった
窓ガラス越しではなく、窓を開け、空や白い雲などを見る
空は黄昏になり薄暗くなると夜勤の看護婦が様子を見に
病室のドアを開き、この窓を締めて行くだろう
「彼は窓の外を見つめていた眼を室内に移した眼は部屋の中を暗く、そして狭く感じた。
鎖された部屋の中で、ベッドに固定されたまま、彼は一人だった。彼はぼんやりと壁に出来たしみなどを見ていた」。
彼は空を飛ぶこと夢を見続けながら、臨終の日を迎えた
いま書店の棚に福永武彦 の小説を目にしなくなった
自宅に眠る文庫本の中から福永武彦『廃市、飛ぶ男』を手にした
10年前に読んでいた
「君は夢の中で空を飛んでいることはないかい」( 『廃市、飛ぶ男』180頁)
自分は月に1、2回空を飛ぶ夢を見る
両手を広げ鳥のように羽ばたきながら飛んでいる
大海や大河の上を飛ぶ夢は最高に気持ちがよく、このまま夢の世界であって欲しい、と願う
彼の身体は半ば死んでいるのだ
彼の両脚は、腰から下は、痺れたまま何の感覚もなく、歩くことができなくなった
ベッドの上で仰向けになり、かろうじて寝返りはできる
ベッドで寝ているだけの生活
それは「生活」と呼べるのだろうか
彼は身体の左側を下にして、病室の窓の方を見ることが好きだった
窓ガラス越しではなく、窓を開け、空や白い雲などを見る
空は黄昏になり薄暗くなると夜勤の看護婦が様子を見に
病室のドアを開き、この窓を締めて行くだろう
「彼は窓の外を見つめていた眼を室内に移した眼は部屋の中を暗く、そして狭く感じた。
鎖された部屋の中で、ベッドに固定されたまま、彼は一人だった。彼はぼんやりと壁に出来たしみなどを見ていた」。
彼は空を飛ぶこと夢を見続けながら、臨終の日を迎えた