老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

1273;時間がざざらざらと私からこぼれる

2019-11-07 05:11:34 | 読む 聞く 見る
時間がざざらざらと私からこぼれる

高見順『死の淵より』講談社 文芸文庫 の94頁に
「過去の空間」がある。

『死の淵より』に邂逅したのは 32歳のときだった

「過去の空間」の最初の連に

手ですくった砂が
痩せ細った指のすきまから洩れるように
時間がざらざらと私からこぼれる
残り少ない大事な時間が


咽頭癌を患い死を宣告された
作家 高見順

夏 海辺で子どもと砂遊びに戯れたとき
砂山や砂の器など作ったことを思い出す
そのとき指のすきまから砂が洩れ落ちる
何度も何度も手で砂をすくい砂の山をつくり
次に砂山の下を掘りトンネルづくりに挑む


高見順の場合
手ですくった砂が
癌で痩せ細った指のすきまから
ざらざらとこぼれ落ちる

砂時計の砂がさらさらと流れ落ちてゆく様は
指のすきまからこぼれ落ちる風景に似ている

指のすきまから落ちゆく砂も
砂時計の砂が流れ落ちてゆくのも
残り少ない砂は時間を意味する

残り少ない大事な時間が 
無常の潮風となり消えてゆく





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2 コメント

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さらさら ざらざら (Ray)
2019-11-09 19:25:36
こんばんは☆星光輝さま☆
寒くなって参りました・・☆
その後、お身体の調子は、いかがでいらっしゃいますか?
お大事にお過ごしくださいませ・・☆

  *  *  *

ずっと、星光輝さまの、こちらの日の日記が
気になっておりました。


プロフィールにも記していらっしゃる、…「砂時計」 ・・

ママのおなかの中から始まる、心臓の動き。
それも、わずか、妊娠6週目から、規則正しく動いている心臓・・

砂時計は、その 「心臓」 の脈を 思い浮かべてしまいます。・・脈の数を・・


最後のひとつぶは 心臓の最後の音のような・・



そう、考えると、ドキドキするほどに、恐ろしくなってきて。

かといって、永遠に生きることも、また、深い悲しみを まとってしまいそうで・・


結局は、最期を迎えるまでの日々を
大切にしたい。。と・・


星光輝さまのお話を読ませて頂いて
気持ちが新たになったような・・ そんな、気持ちになりました・・

うまく、表現できなくて、申し訳ありません・・
Ray
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心臓の脈は時間の音 (星光輝)
2019-11-10 05:05:09
Rayさんへ

おはよう~
休日の朝は 早く目が覚め
蒲団から芋虫のように這い出る
休日位遅く起きたら、と
wifeから苦言されてしまう自分

時間(とき)を刻む砂時計は
”心臓の脈の音であ”る、という
Rayさんの話になるほど、と頷いてしまった

羊水は海水であり
胎児は海波や砂浜の音を聴きながら育つ
そんな妄想をイメージしながらも
一番は母親の心音や言葉を聴きながら
安らかに育つ

作家 高見順の詩集『死の淵より』
(講談社文庫または角川ハルキ文庫のどちらかです)
を読み、すごい刺激を受け
彼の詩のなかから 砂時計を連想してしまいました

人生において
砂時計は数個あり

大まかに分けると
幼少期の砂時計
少年期の砂時計
青年期の砂時計
壮年期の砂時計
中年期(熟年期)の砂時計
高年期(老年期)の砂時計

6つの砂時計があり
それぞれの時期(時代)
落ちる砂を楽しむ

そして幼年期に比べ高年期の砂が落ちる速さは
各段に速い

そんな風に感じています

Rayさんがおしゃるように
「永遠の生は深い悲しみをまとってしまいそうで・・・」
そう思います

永遠の生
もし老いの時期が長く続くとしたら
自殺者が増えるかもしれない

生命は有限だから 尊いのだと思う

秋の日の 青い空の下 碧い海の前で
素敵な時間を お過ごしくださいませ






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