老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

湯たんぽで躰を温めたヘルパー

2024-01-29 21:21:30 | 老いの光影 最終章 蜉蝣
2020 低体温


犬も老いてくると体温調節が上手くできなくなる
寒がりの”元気”、赤い服を着せた。ぐっすり眠っ
ていた


スマホの着信が鳴った。
出てみると、ヘルパーから「小澤桐さん(67歳)が低体温の状態です」。
低体温の様子を伺うと
最近は雪が降り外気はかなり冷え込むでいる。

部屋の中は寒々していて息は白い。
マッチで点ける石油ストーブの石油タンクは「空」のまま。

桐さんは尿で濡れたズボンを脱がすに薄い毛布を被っていたから
余計寒く震えている。
唇は紫、指の先まで氷のように冷たい。
35.0を下回り、低体温症で死ぬところだった。

濡れたズボンを取り替え
(ガスは点くので)お湯を沸かし湯たんぽに熱いお湯を入れ
彼女に抱きかかえさせた。
熱いスープを作り食べさせた。

躰は少しずつ温まり低体温から脱却できた。

夫は、石油ストーブのタンクに灯油が入っているかどうか確認せぬまま
朝早く仕事に出かけてしまった。

仕事中なので電話はつながらず、
A3サイズほど大きな紙に黒マッジクで
「灯油がない。桐さんは低体温になりあわや死ぬところだった」、と
書置きをした。

16時過ぎ、ヘルパーと一緒に夕方同行訪問した。
桐さんの顔色はいつも顔の表情に戻り、ホッとした。
湯たんぽのお湯を取り替え
石油ストーブのタンクを振ると、ちょぼちょぼと音がしたので
(実際にちょぼちょぼ、と音がしたかどうか擬音語の表現は難しい)
ライターで火を点けると半球が赤く点った。

はかなく頼りない温かさが伝わってきた。
「桐さん 死ななくてよかったな~」
押し入れのなかには薄い掛蒲団があった。
「掛蒲団あるのになぜ掛けないんだ~」
「重いし、面倒くさい」、と言葉が返ってくる。

彼女の震えから能登半島の人たちを思い出した。
極寒と空腹は躰に応え、一日も早い復旧を望まずにはいられない。






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