老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

一杯の味噌汁

2024-02-07 20:59:58 | 老いの光影 最終章 蜉蝣
2027 乗り遅れそうな乗客を待つバスの運転手



味噌汁は“おふくろの味”ともいわれ、家庭によって味が違う。
三木春治さんにとって家庭の味といえば妻志乃さん(77歳)がつくる“味噌汁”であり、元気の源でもあった。

しかし、桜の花弁が散る4月の或る日の朝の出来事。
春治さんは、今日の朝 起きてみると腹が脹れ(はれ)あまり朝食を食べたいとは思わなかった。
けれども、妻が想いをこめて作ってくれた豆腐入りの味噌汁を味わった。
ご飯は茶碗半分余り残し箸を置いた。

どうもお腹の脹れと胸のあたりが急にむかつきはじめ苦しくなり、食卓にうつ伏せ状態になり倒れた。
救急車で病院に搬送されるも 力尽き永眠された(ご冥福をお祈り申し上げます、78歳)。
昨日まで元気な様子であっただけに、突然の訃報は驚きと同時に深い悲しみを抱いたのは、わたしだけではなかった。

春寒し2月の頃、三木さんのお宅を訪問したときに春治さんと出会った。
そのとき彼は「自分が元気になれば、妻の手伝いをしたい。雪かけや野菜作りをしたいと、
生活への意欲と希望を抱いていた。
志乃さんは春治さんと54年間ともに生きてきた人生を振り返り、
彼の人柄についてしみじみと語ってくれた。

彼はトラックの運転手をされた後、路線バスの運転を24年間務めたときのこと。
「バスが発車する時間になっても、いつも乗車されているひとりの女子高校生がまだ来ないため、五分間待つことにした」。
その女子高校生はバスが待ってくれたことに“泣き”、
感謝の気持ちをいっぱいにし、学校へ行くことができた。

時間に遅れる方が悪いし“時間の大切さ”を自覚させるためにも時刻表とおりにバスを発車させた方がよい、という考えもある。
しかし、その時間に乗り遅れたら都会みたいに数分後にバスはやって来ない。
「バスが発車する間際、急いで駆け付けてくるお客様の姿が、バックミラーやサイドミラーに写るのを見たとき、
バスを出さずに待っていてくれたことも度々あった」と、
妻は、スーパーで地域の人たちから話を聴くことも多かった。

病いを患ってから4年余日が過ぎた春治さん、愛妻が作ってくれた一杯の味噌汁を忘れずにいることと思う。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ピエリナ)
2024-02-08 12:08:00
優しい方でしたね。

きっと今頃は天国で幸せにお暮らしかと思います。
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Unknown (星光輝)
2024-02-09 05:19:08
おはようございます
そうですよね。幸せに暮らしていますよね。

京都 嵐山電鉄にも
若い運転手は優しかった。

ミラー越しに見える婆さんが重い荷物を持ち
ホームを歩いている姿が映る。

運転手は電車から降り
婆さんの重い荷物を代わりに持ち
座席まで運ぶ

その優しさに惚れた若く美しい女性は
彼に求婚(古い言葉ですね)をされ
めでたく結婚された。

BSNHK「沁みる夜汽車」というタイトルの10分間番組で観た
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