老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

帰りたい 帰れない

2022-01-21 11:57:56 | 歌は世につれ・・・・
1779 帰りたい 帰れない



淋しかったら 帰っておいでと
手紙をくれた 母さん元気
帰りたい 帰れない
帰りたい 帰れない
もしも 手紙を書きたくなっても
僕は書かない 母さん


都会に出た息子は
老いた母の棲む故郷に 
帰りたい 帰れない

いまコロナウイルス感染で
家族の棲む故郷に
帰りたい 帰れない

路に迷った惚け老人は
路を戻ることができない
帰りたい 帰れない

介護施設で暮らす老人
死に際は 長年住み慣れた家に
帰りたい 帰れない

釜ヶ崎で暮らす人たちは
世捨て人ではない
帰りたい 帰れない

ハンセン病を患った人は
故郷からも家族からも棄てられ
亡くなっても故郷の墓に入ることもできない
帰りたい 帰れない

天国で暮らす人たちも
この世に
帰りたい 帰れない

家があっても
独りで暮らす老人は
冬のデイサービスから
帰って来るときは
家の中は暗く寒い
帰りたい 帰りたくない

それでも家では
仏壇のお父が待っている

自分の生まれた家はなく
父も母もこの世にはいない
帰りたいが 帰る家はない







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