老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

1471;スプーン一杯の蜂蜜

2020-03-27 04:32:23 | 空蝉
スプーン一杯の蜂蜜



春から夏にかけ 色々な花が咲き
ミツバチは、スプーン一杯の蜜を求め
花の上を飛び交う。

ミツバチは働くためにこの世に生まれてきた。
ミツバチの世界は階級社会である。
一匹の王女蜂と数万の働きバチ(すべてメスのハチ)がいる。

この数万の働きバチは、子どもを産む機能はなく
ただひたすら働きづめに働いて死んでゆくのである。
卵を産み子孫を残していけるのは女王蜂だけ。

女王蜂は、ロイヤルゼリーを餌として与えられ、数年生きるのに対し
働きバチの命はわずかひと月余りでしかない。

成虫になった働きバチの最初の仕事は、巣のなかで働く(内勤)。
巣の中の清掃、幼虫の子守、巣を作る、蜜の管理などを行う。

そして働き盛りを過ぎて命の終わりが近づくと
巣の外で蜜を守る護衛係であり、外敵と闘う危険な仕事に就く。

そして、最後の最後に与えられる仕事は
花を回って蜜を集める。その期間は2週間。

密を集める仕事は、常に死と隣り合わせの仕事にあり
クモやカエルはミツバチを狙う天敵であり、いち命を落とすかわからない。
雨風に打ちつけられ死ぬこともある。(志賀直哉『城崎にて』参照)

老いたミツバチは、花から花へと飛び回り、蜜を集め巣に持ち帰る。
これを2週間、働き続けどこかで命尽き死んでゆく。
一匹のミツバチは、働きづめに働いて、やっとスプーン一杯の蜂蜜を集める
(稲垣栄洋『生き物の死にざま』草思社 149頁)


志賀直哉『城崎にて』の短編小説のなかで、蜂の死が描かれている。

或朝の事、自分は一疋蜂が玄関の屋根で死んで居るのを見つけた。
足を腹の下にぴったりとつけ、触角はだらしなく顔へたれ下がって
いた。他の蜂は一向に冷淡だった。巣の出入りに忙しくその傍を這
いまわるが全く拘泥する様子はなかった。忙しく立働いている蜂は
如何にも生きている物という感じを与えた。その傍に一疋、朝も昼
も夕も、見るたびに一つ所に全く動かずに俯向きに転がっているの
を見ると、それが又如何にも死んだものという感じを与えるのだ。
それは三日程その儘になっていた。それは見ていて、如何にも静か
な感じを与えた。淋しかった。他の蜂が皆巣へ入って仕舞った日暮、
冷たい瓦の上に一つ残った死骸を見る事は淋しかった。然し、それ
は如何にも静かだった。



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2 コメント

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Unknown (星光輝)
2020-03-27 16:29:28
スプーン一杯の蜂蜜
天敵を避けながら必死で集めた蜜
スプーン一杯の蜂蜜をパンにつけたとき
蜜蜂に感謝しながら味わう
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Unknown (Unknown)
2020-03-27 07:54:22
一匹のミツバチは、働きづめに働いて、やっとスプーン一杯の蜂蜜を集める・・・人間に教えたいですね
返信する

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