花弁をもつ花には当たり前ながら色があります。色は花の主張です。無駄に色が付いているわけではなく,虫を呼び寄せる戦略として身に備わっているものです。
花の色には多種多様あります。それでも,大ざっぱにいえば,よく目に付く色とそうでもない色とがあります。というか,わたしたちの目から見て目立つ色と地味な色があって,その間のいずれかに位置しているように思えます。これって,とても主観的ないい方で申し訳ありません。
それはさておいて,冬から早春にかけて目立つのは白とか黄色です。なかにはサザンカやホトケノザのように赤いものもありますが,ふつう目にするものは白・黄が断然多いように思います。
我が家の庭もそうです。サザンカもありますが,ただよく考えてみると中心にある蕊は白と黄で彩られています。 花粉も黄色です。蕊の色は「中心においしいごちそうがあるよ」というシグナルにちがいありません。やはり白や黄はたいせつな色なのでしょう。観察をしていると,昆虫の動きから推論できます。高遠な理論を引き合いに出すまでもなく,納得できる事実です。
サザンカのほかに,ロウバイとマンサクの花が咲いています。どちらも黄色を主体にした花です。マンサクは中央付近が紅色をしています。萼までも! そこにごちそうがあることを教えているのでしょう。黄色い花弁をパァーッと広げ,たくさんの花が共同して盛んにアピールしているにちがいありません。冬から早春にかけては,ただでさえ昆虫の少ない季節です。少ないその昆虫になんとか来てもらえないかと願っていることでしょう。
加えて,中心部にある花粉も黄色。花はとにかく黄色尽くしです。
そのほか,街中で気をつけて見ていれば,黄色い花の一つサンシュユが目にとまることも。「ロウバイかな」と思って近づくと,それがちがうのでびっくりした経験があります。フクジュソウもその一つ。
花が黄色をしているという点に大きな意味があることは,たとえば昆虫学者の次の記述からも窺えます(『動物はなぜ動物煮なったか』日高敏隆著)。ただ,チョウを例示した話題なので,嗅覚の発達したハエ類にそのまま適応できるかどうか不明ですが。
- チョウは花の形でもにおいでもミツのかおりでもなく,ただその色だけによって,花に飛んでくる
- 「色」にはいくつかのものがあるが,紫と黄色がもっとも効果が強い
昆虫は色をたいせつな識別情報にして訪れるのですから,花の少ない季節にわざわざ派手な色でアピールするまでもありません。競争相手がたくさんあって,色とりどりに咲き誇らなくてはならない頃とはまるでちがうのですから。
匂いにしても,強烈な匂いを放ってまでアピールする必要はちっともない季節です。微かに芳香を放つ程度で十分なのでしょう。寒風に身をさらしながら,数える程度の昆虫の訪問が実現すれば,もう十分とでも言いたげな咲き方です。
こう考えてくると,この時期に咲く花はまことに上品で味わいのある姿を見せているように思えてきます。