元ラーメン屋店主のツイート集

ラーメン屋を10年経営し、今は閉店し、介護士をしています。

なんちゃっ亭ラーメンの販売期間終了

2007年03月31日 | れいんぼ~情報
期間限定創作ラーメン 様式美麺 第23弾
なんちゃっ亭は4月2日を持ち終了いたします。

4月4日からは「今風、昔らーめん」という
新メニューを始めます。

この相反する2つを組み合わせたのは、10年
以上前の石井竜也の個展「未来遺跡展」から
ヒントを得ました。

どういったラーメンなのかの全貌は、近日
ブログ内で公開いたします。

ヒントだけ言いますと新旧の融合型ラーメン
です。

RAINBOW ROAD~様式美麺れいんぼ~への道10

2007年03月31日 | RAINBOW ROAD
僕が24歳、当時の話を続けます。

福岡のアパートで毎週土曜日はラーメン作りに
没頭し、仕事では日々製麺やラーメン屋の
厨房に立ち充実した日々を送っていました。

ハードロックバンドから足を洗い、もうバンド
をやりたいという情熱も無くなっていましたが、
ラーメン作りに煮詰まった際の一番の気分転換
が楽器演奏でした。ギターやベースやキーボード
などを少し演奏すると気分がスーッとし、また
ラーメンに打ち込めました。

ラーメン作りに限った話ではありませんが、物を
作ると言う事は、今まで自分でも気づかなかった
自分自身に気づかされます。色々と深く掘り下げ
て考えているうちに、自然と自分発見の迷路を
彷徨う事がよくあります。

ラーメン作りは技術、知識、経験よりも、アイデア、
魂、根性が大切だと思います。覚えた技術だけを
使っているラーメン屋もあるでしょうが、それは
ピュアな心から出てきた物を形にしたとは言えま
せん。

僕はトリビュート・ラーメン。今風に言うと、
インスパイア系ラーメンかな。そういった他の
ラーメンのコピー型は何度か実験するうちに、す
ぐ飽きてしまいました。忠実に再現するよりも、
自分自身の考えをラーメンに投影させる方が
遥かに有意義で、満足できました。
「将来はラーメン屋になれたらいいな」と
軽く憧れを抱き出したのも、この頃です。

自分がラーメン屋をするなら、他に似たタイプ
が無い、僕だけのラーメンを作らないと、僕が
やる意味が無いと思っていました。

今でも思いますが、僕は僕でしかないです。
金子みすずや、相田みつをの詩じゃないですが、
他に憧れ、他を妬むよりも、自分らしく自分のやり
かたで生きる方が素晴らしいです。スマップの「世界で
1つだけの花」みたいな思想です。

いまだに他の人が作れて、僕には作れないラーメン
製法なんて山ほどありますが、それでいいです。
僕だから作れるラーメンもあります。

僕はオリジナルスタイルを貫かないと、自分自身を
納得できないタイプです。お客様には申し訳ありま
せんが、今もラーメン作りの第1目的は「自分の
やりがい」です。それに共感してくださり「良い」
と評価してくだされば素晴らしいです。当店のよう
に、どんどん違う方向に進み続けるラーメン屋は
勇気もいります。商業ベースで考えれば、そんな
りリスキーな商売はありえず、味の安定をすべき
ですが、僕はあえて挑戦し続ける店をしたかった
です。ネットで若きラーメン屋店主のブログなど
を拝見すると、僕同様に「進化しつづける
ラーメン業界のニューウエーブになりたい」とい
う店主が多く、日夜あらゆる調理実験をされている
ようです。

24歳当時の話に戻ります。
インプロヴァイズ型のフリースタイル製法から、
徐々にコンセプトを持った製法へと移行していき
ました。まだまだ、頭に思い描いた予想図と
かけ離れた完成形にしか出来ませんでしたが、
その時、その時のベストを尽くしていました。
「完全に満足出来るラーメンがいつか作れる」
と信じて、味噌ラーメン、醤油ラーメン、
塩ラーメン、豚骨ラーメンなど作っていました。

ある日、ジェネシスを聴きながら、ラーメン構想図を
描いていました。あぁあああ!!これだ!と、ある
事が閃きました。そう、ジェネシスです。
ジェネシスの音楽のようなラーメンです。
CDラックに駆け寄り■キングクリムゾン■ドリームシ
アター■イエス■ピンクフロイド■エイジア■カンサス
■ジェスロ・タル■グルグル■ボストン■ラッシュ
などのCDを引っ張り出し、片っ端から聴き直しました。
そう、プログレッシブ・ロックスタイルのラーメン
です。もっと分かりやすく説明すると、ビートルズ
の最高傑作で、ロック界の名盤「サージェント・ペ
パーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のよう
な実験的、前衛的なアート・ロックです。

プログレッシブ・ロックを直訳すると、先進的ロック
です。ブルースの発展型のロカビリを基調としたロック
スタイルが一般的な時代に、ロックにとらわれず自由
な発想で、古楽、クラシック、ジャズ、民族音楽など
何でも吸収したジャンルでした。なので、プログレは
一般ロックとは一線を引き、コアな音楽フリーク向け
なジャンルでもありました。

プログレッシブ・ロックで、今第1線のバンドは
なかなかいないので例を挙げづらいですが、フュー
ジョンとプログレッシブ・ロックを融合させたような
スタイルで言うと、人気急上昇中のピアニスト
上原ひろみがまさにそうです。あの自由で独創的な
演奏と楽曲の要素があるラーメンと想像して頂ければ
分かりやすいと思います。

そのプログレッシブ・ロックの創作姿勢と、精神に
インスピレーションを受けました。

当時からラーメンは「インパクト」「インパクト」
と雑誌、本、テレビ、ラーメンフリークが多様してい
て「そんなにインパクトって重要か?そもそも、
ラーメン以外の食べ物に対してインパクトって言葉
は使わないのに、何故ラーメンは「1口目からイン
パクトがあり・・・」なんて表現をするのだろう?」
と疑問でした。

僕が作りたかったプログレッシブ・ラーメンは、
インパクトがあります。しかし、天邪鬼な僕はインパ
クトを消したかった。巷で騒がれている、インパクト
系ラーメンのようなの物は作りたくなかった。ここで
矛盾が生じますが、斬新、新感覚、先進的、独創的、自由
でありながら、インパクトはなく、さりげなく表現する
のが難しかったです。

インパクト系は、出汁を効かせコッテリ、魚介や
ニンニクなど臭いが強烈、具財が斬新、油や背油
の油コッテリ、味付けが濃いなどありますが、そ
ういった要素を全て削ぎ落としたラーメンを開発
しようとしました。

1口目の強烈な旨みではなく、味の時間差で、
じわじわ旨みを感じ取れるラーメンの開発には
やや難航しました。あっさりだけど、薄いだけの
ラーメンでは駄目です。しっかりコクがあり、
ラーメンとしての適度な重さと、食べ応えは
必要です。

イメージだけはしっかりあるのに、そういった
僕の理想のプログレッシブ系ラーメンの前例が
無いだけに相当悩みました。

ある日、メロウ・キャンドルというプログレッ
シブ・フォークのCDを買いました。
袋小路に入り込み、五里霧中な状態をメロウ・
キャンドルは救ってくれました。真っ暗闇の
思考の迷路に一筋の光が差し込み、ようやく
自分のハッキリとした道筋を理解する事が
出来ました。

僕のラーメンのアイデア、悩み解決は、
ラーメン屋でも、ラーメン本でも無く、音楽
によりラーメン道を開眼しました。