元ラーメン屋店主のツイート集

ラーメン屋を10年経営し、今は閉店し、介護士をしています。

リアリズム・コメディ「東京03」の爆笑を解析

2008年01月12日 | 店主の人生哲学
僕は近年のお笑い界では「東京03」が一番好き
です。



近年のお笑いは、過剰演出ぎみのネタが多すぎる。

それが悪いとは思わないけど、ベタでオーソドックス
な自然なボケ、ツッコミが減少傾向にあるのは少し
寂しいです。

例えば「笑い飯」の1パターン・ループ・スタイルの
Wボケや、「ポイズン・ガール・バンド」のシュールで
斬新な独自性、「アンジャッシュ」の誤解が生む新展開の
コントスタイル、「陣内智則」の音声や映像を使った
ありえないシチュエーションなど、いずれも面白いです。

でも、そういった芸人側の創作力重視で、芸人と観客の温度差
があるようなスタイルにばかり傾くのは如何なものかと思い
ます。芸人がターゲットを絞るのはいいとは思いますが、その
ターゲット層が最近はより狭くなっている気がしてなりません。

すなわち、大衆演芸の分野であるべき「お笑い」が、「お笑い
マニアの一部の人に分かればいい」と、芸術家思考になって
いる気がします。多分「松本人志」が作り出した、脱力系&
斬新&シュールがお笑い界に革命を起こしたのは間違い無いです。
でも、「松本人志」は類まれなる天才です。アドリブのトークで
も爆笑に引っ張れる「松本人志」に匹敵する芸人は「伊集院光」
(ラジオ番組の伊集院はテレビとは別人です)や『太田光」
ぐらいだと思います。

脱線しましたが「松本人志」は
「僕のギャグで皆が笑うが、僕のギャグを完全に理解してほんま
に笑える奴は5%もいない。僕のギャグを理解するには24時間
365日笑いの事だけを考えている奴だけだ。
僕は視聴率25%でも嬉しくない。僕のレベルなら視聴率100%
とれるはずだけど、まだ一般人はレベルが低すぎる」
とか言っているように、マイナーな松本人志ワールドを築いて
います。そして、松本人志に憧れ芸人になった、松本チルドレン
が増殖し続けています。

すなわち、難易度が高く、芸人側が「別に分からない奴には笑って
もらわなくていいよ。頭の固いオジサン、オバサンに笑ってもら
おうなんて思ってないし」とか平気で言うように成りました。

僕も頭が固いのか、会場中大爆笑の「バカリズム」の「トツギーノ」
や、「なかやまきんに君」や、「ネプチューン」の「堀内 健 」
とか一体に何が面白いのか理解出来ません。

さて、前置きが長くなりましたが「東京03」は、正統派大衆演劇
スタイルのコントです。特殊なシチュエーションではなく、リアル
な日常を笑いにしています。

日常の「アルアル」ネタ系の笑いはある種ブームになりつつありま
すが、誰しも共感しやすい、ありがちな日常の断片を笑いに変える
のは相当難しいと思います。例えば「中川家」はショートネタで、
よく見かける人間行動などを模写したネタをしますが、日頃は何に
も気にならない行動を、改めてネタでされる事で
「いる、いる、そういう奴」と面白くなります。
日常とデフォルメの狭間という、ギリギリのラインが「東京03」
の笑いスタイルです。「友近」や「柳原加奈子」が得意とする
「いる、いる、そういう奴」という笑いも、ただの形態模写や
リアルなモノマネでは、たいした笑いにはなりません。より
オーバーにする事で、デェフォルメと日常が結びつき、立派な
笑いネタになります。

日本には「落語」という素晴らしい古典芸能があり、僕も大の
落語フリークです。

落語にもファンタジー系の話や、SFチックな話などありますが、
殆どの落語はオチが付いている町民の人情話です。落語は、一人
何役も演じたり、扇子・手ぬぐいだけで、あらゆる場面を作り
あげる話芸の真髄です。何故、落語がいまだに多くの人に大衆演劇と
して愛され続けているかというと、登場人物の、会話や、気持ちが
観客に共感出来るからだと思います。時代背景こそ違えど、今も
昔も、同じような事で喜怒哀楽していたからこそ、落語が楽しめ
ます。

今の笑いは使い捨て型です。常に新作・新作で、テレビで数回やった
ネタは封印したりするようです。要は刹那的な笑いであり、同じネタ
を10回でも100回でも聴きたい落語とは明らかに違います。

だから、今の芸人のネタは50年後、100年後、300年後に
語り継がれるネタでは無いと思います。あくまで、今の若い世代が
笑えばそれでいいというネタです。

僕は「やすしきよし」や「ドリフターズ」が大好きで、今見ても
充分に笑えますし、50年後の人が見ても、多分面白いです。

しかし、今の多くの芸人のネタは旬の今しか通用しません。
また、世代の違いや、外国ではウケないようなお笑いばかり
です。

「チャールズ・チャップリン」 「バスター・キートン 」
「ハロルド・ロイド 」「ローレル&ハーディ」のような
スラップスティック・コメディのように、時代や国境を超え
笑わせる事が出来るコメディアンは日本にはいないと思います。

日本に「ミスター・ビーン」のようなサイレント・コメディが
根ずくのを心待ちにしていますが、今のエンターテイメント界
では期待出来そうも無いです。

アメリカのコメディアンはスタンダップ・コメディ出身者が
殆どですが、日本にはスタンダップ・コメディは皆無です。
漫談がそれに近かったものの、漫談は日本の芸能の一線から
は消え去っています。「綾小路きみまろ」が最後の漫談家
だったかもしれないです。「長井秀和」はアメリカの
スタンダップ・コメディを意識してるっぽい、ブラック
ジョークを言っていましたがネタがイマイチでした。

・・・・・あれ、「東京03」の話から脱線しまくって
一体何の話をしているんやら・・。

「東京03」は落語の世界のように、現代の日常を見事に
表現し、ヒューマン要素や、笑うポイントが見事な程
散りばめられています。また、3人組でありながら、
3人それぞれにキャラが異なり、3人が主役です。
「インスタント・ジョンソン」が、面白いのに落ち目に
なったのは、一人のキャラだけが目立ち、他2人の
印象が薄かった事に問題がありました。
でも、「東京03」は奇跡とも言えるほど、見事に
バランスがとれ、演技力が凄く高いのので、自然に
設定場面を把握できます。

ベタ漫才の「ダイノジ」や、ベタコントの「東京03」
のように大衆演劇であるコメディスタイルは、今後も
継承し続けて欲しいです。