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読参~「機動戦士ガンダム 一年戦争史」~ 第8回 ソロモンの海(後編)

2008年07月22日 | 読参小説(ガンダム 一年戦争史)
●嵐の前の

 宇宙要塞ソロモン。
 来たるべき連邦艦隊の襲来に備え、慌ただしく人々がひしめき合っているであろうその巨岩の内部と同様、海兵隊のザンジバル級戦艦:リリー・マルレーンもそれと変わりない。
 その内部の一角、MS格納庫においては既に戦場のような状況である。
 
 しかし、周囲の喧噪等まるで関係のないかのようにラサ曹長はユキ中尉へと機体の説明と、最終確認を行っていた。

「整備は完了しましたが・・・余り無茶はしないでください。新しいものは、常にデータが足りていません。無茶は厳禁です。
 それと、返ってくる場所があることを、どうかそれを忘れずに・・・」

 いつものように明るい声を伝える曹長。
 しかし、最後の台詞のみにおいては帯びている物が違っている。声のトーンも落ち、表情も彼女に似つかわしくないものが見て取れる。

「ええ、分かっているわ。でも、これは自分で決めたことだから。
 ・・・でも、ごめんなさい。なんだか巻き込んでしまったみたいで・・・」

 申し訳なさそうにうなだれる。さながらそれは子犬のようだ。
 ユキから海兵隊に入ると聞いて、ラサ曹長は海兵隊へと志願した。そのことに責任を感じているらしい。
 そんな彼女を見て、数回瞬きをした後に軽く笑う曹長。さも、それが楽しいといわんばかりに。
 
「おやおや、〝これは自分で決めたこと〟ですよ。誰かに言われたわけではありません。
 それとも・・・ふふっ、私が中尉に惚れているとでも?」
「ッ!? そんなこと思ってないわよ、馬鹿! ・・・もう、行ってくるわ」
「ええ、お気をつけて」

 余りのことに顔を赤らめると、ユキは感情を表すかのように機体を出した。
 その荒々しい出撃の後ろで、無事を祈る少女の思いが紡がれ、そして彼女もまた自分の戦場へと意識を向ける。
 整備兵に、終わりなどはない。


 
●先行×閃光×穿孔

 闇を穿つ幾百の光彩が、明滅を繰り返しては宇宙を鮮やかに明らめる。
 遠目に見ればさぞ美しく映るであろう、それ。が、それら一つ一つは命の輝きそのものであると言っていい。
 巨大な岩塊である宇宙要塞ソロモン内部、その司令官であるドズル・ザビ中将は敵主力と思しき艦隊に対し、反攻の断を下した。
 これには間に合わないのではないかとさえ囁かれた新型MSも多数入り混じっている。
 惜しむらくは、生産や訓練などの都合で、前線の熟練した兵よりも学徒兵らに多くが出回ってしまったことか。


 交差したヒートホークがジムSCのモニターを急激に押し潰す。慣性の法則に忠実な衝撃で機体が弾かれ、欠けたバイザーが煌めく中、ビームライフルが一閃する。
 爆散した敵機を背に、トーマ曹長は賞賛の口笛を吹いた。

「凄いですね、その新型!! もう4機目! 俺も早く乗りたいですよ」

 トウヤの機体は新鋭のMS-14A ゲルググ、しかもカスタム済みである。
 そしてその肩とビームコーティング仕様の楕円形シールドには、彼固有の交差したヒートホークが、誇らしげに描かれていた。
 対して、トーマ曹長の機体はザク改。悪い機体ではないが、これでは憧れるのも無理もない。しかし、トウヤはそんな彼に淡々と口元を動かす。

「確かに凄い機体だが・・・相応の練度がなければ意味がない。学徒兵たちが現に振り回されている」
「ぐっ!? た、確かに中尉は相応の訓練をしていましたが・・・」
「相応というより、むしろ過剰。いえ、異常といってもいいわ。私たちがガス抜きをしていなかったらどうなっていたことか」

 練度不足では使えないと返すトウヤの説得力にトーマが思わず慌てるも、そこにリックドム・ツヴァイのシズネが一機を屠りつつ、呆れ交じりに声を入れる。
 
「だが、それがこうして出ている。
 生憎俺は、赤い彗星みたいな天才型じゃないんでね。だから鍛えるしかないんだよ」
「物にも限度があるって言ってるのよ! 全くもう・・・」

 マイペース過ぎるトウヤの返答に、普段は軽いノリの少尉殿もご立腹。
 胸の内では、軸がぶれてる人間とはこんなにも扱い辛いものかと素敵に思っている事だろう。

「でも、新型もありますし、今回は楽に行けそうですね。現に、こちらが押している風に感じます!」

 事実、戦況は押していた。ジオン有利のまま事が運んでいるのは確かだ。宇宙空間での戦闘技術の差もこれには出ているだろう。重力のこともあり、地球上がりに360度を全て把握する感覚は中々慣れるものではない。
 だが、だが、それでも尚・・・。

「・・・二人とも、油断するな」
「わかってますよ。噂では〝連邦の白い悪魔〟もこちらにいるみたいですし、そんな気持ちでいたら落とされてしまいますからね」
「・・・違う、そういう意味ではない」
「えっ? ・・・それってどういう・・・」

 トーマの返しにトウヤはこの上なくはっきりとした口調で答えをだした。

「連邦の物量とは、本当にこの程度だったか?」

 一呼吸を置き、重々しく言葉が流れていく。それがどういう意味なのか、自分でもわかるから。

「シズネもトーマも、ルウムでは戦ってはいなかったと聞いている。
 だが、俺は違う。ルウムで実際に戦った。そしてルナツーでもだ。
 だからこう感じる〝この程度なのか〟とね」

 トウヤは手に滲んだ汗に気づいていない。綴られるそれは、彼の体験そのものであった。
 そして予言めいた彼の言葉は、哀しいかな現実のものとなってしまう。

「つまり・・・わああああ!? い、一体何が!!? ソロモンの部隊が次々と!!??」
「な、なんなの、あれはっ!!??

 ロマンチストが謳うならば、宇宙を灼く一振りの剣といったところだろうか?
 集約された光が次々とソロモン部隊を薙ぎ払っていく。戦艦やMS、防御施設など手当たり次第にそれは刈り取っていく。悪夢のような光景であった

―――ソーラシステム―――
「アルキメデスの鏡」の原理を応用した超々巨大な太陽光兵器である。

『・・・せよ・・・ソロモン要塞に対し、別・・・隊が侵攻・・・。こち・・が本体であると・・・』

 更に、飛び込んできた通信が状況に拍車をかける。
 ジオン将兵にとって、それは聞きたくもない最悪と言えるものであった。

「・・・悪い予想は当たるものか。トーマ、シズネ、二人とも落ち着け!! 
 味方が焼かれ、別動隊が出現した。だが! それでも尚、まだ何も終わってはいない!!」
「りょ、諒解!!?」
「やるしかないわね、こうなったら・・・っ」

 混乱をきす中で隊長は激昂する。吠える感情により、強引にでも統率を崩さない。
 ただ、目の前のおぞましい光によって、戦いがまだまだ続くことは認めざるを得ないことであった。



●光り当たらず。されど、我らは此処に在り

 ソーラシステムの照射後、その強大な破壊力によりソロモン防衛部隊は混乱に陥ってしまう。
 第2射は隕石ミサイルの助けもあってどうにかコントロール艦を破壊出来たものの、当初にソロモン部隊と戦っていた艦隊は囮であった。
 通常では不可能な戦術―――しかし、この大規模な物量こそが連邦なのだ。

 防衛戦でありながら、ジオンの不利は誰の目にも明らかであった。
 更には敵の本体から矢継ぎ早にビーム撹乱幕が敵艦隊とパブリクにより打ち出され、ジオン艦隊と要塞設置の遠距離ビーム兵器は次々に無効化されていく。
 期待出来るのは装備されたミサイル群だが、敵艦隊を狙うには距離があり過ぎた。
 が、それでも、前衛の援護は可能だ。それぞれの艦に命令が下され、一斉にそれが闇夜の嵐の如く吹き荒れる。
 そしてジオン海兵隊は、敵本隊との戦闘へと入っていくことになる。これはひとえに配置された場所が大きい。

 ユキはその中で奇妙な落ち着きと共に眼前を凝視する。
 余計な思惑をすべて排除し、彼女はただ戦闘へと意識を向けた。

「敵も新型を出してきてる、か・・・だけど、それはこちらとて同じ!
 各機、艦隊の次の援護の後に突入。攪乱して乱戦に持ち込む! 海兵隊の力を見せつけてやりなさい!!」
「へへっ、中尉のお嬢ちゃんも随分と張り切ってるなぁ。それじゃあ、行こうかねぇ!!」
「おお! 連邦野郎なんぞ蹴散らしてやらねぇとな!」

 各々が息まく中、後方からの援護が次々に放たれる。前方が次々に爆散していく宇宙、それを追い超すかのように海兵隊は切り込みにかかった。

「遅いわね、そんな腕では私と、この新型は落とせないわ!!」

 急激に機体を加速させつつ、腕部速射砲が唸りを上げる。慌てて敵はガードを固めるも、すれ違いざまにビームサーベルがジムを薙いだ。
 そして勢いそのままに、敵の後方支援機を血祭りに上げていく。ボールが蹴飛ばされ、鈍重なガンキャノンが立て続けに撃ち抜かれる。
 ユキはそれらに満足せずに、仲間と共に更なる戦果を求めて敵を仕留め続けていく。

―――MS-14F ゲルググマリーネ―――
 海兵隊専用に作られた強化型ゲルググ。
 ルナツー戦での海兵用高機動型ザクと同様、装甲を犠牲に機動性等の能力を高めた機体である。
 ただし、その性能は新型ゲルググの中でも突出している程だ。

「前線の状況はどうなっている?」
「戦況は以前変わらずですが、中々気張ってますね。あのお嬢ちゃんも活躍してるみたいです」
「ふん、当然さね。何せ私が鍛えてやったんだからねぇ」

 狐の笑みというものがあるのなら、今のシーマ中佐がそうなのだろう。強かな感性を漂わせ、それは見るものを圧倒する。
 そんな彼女をよそに、デトローフ・コッセルの胸中は複雑である。口には決して出さず――というか、出すとどんな仕打ちがされるのか――自然と背中に冷たい物が流れる。

(おお、おっかねぇ・・・シーマ様がもう一人出来たらそれこそ笑えねぇ。まあ、頼もしいとは思うがよ)

 ばしりっ! 突如、線となった扇が振り下ろされる。
 そこには圧倒的な光彩を放つ統率者がいた。己が何者かと自覚するリアリストが。数秒前の笑みを浮かべていた女性とは思えない。

「さあ、アンタ達も気張りな! 前線が崩れたら、こちらもただじゃすまないよ!!
 こんなくだらない戦争なんぞ生き抜いて見せな!!」
「「「諒解!!」」」

 陰口を叩かれ、ジオン内部でも特に忌み嫌われる海兵隊。
 しかし、それでも彼らは自分を見失うことはない。
 そこには強靭な統率と明確な意思を持ち、折れぬ刃を抱いて生きる人間が、確かにいるのだ。


●落日のソロモン
 
 ソロモン要塞の運命は決まった。
 既に司令部は直属の精鋭部隊を投入したが、それですら敵を抑えきれない。
 また、負けと判断したためドズル中将自身もビグ・ザムで出撃、数多の敵を叩くも撃破されている。
 司令官の撃破―――事実上、これで勝敗は完全に決したといえる。
 増援であったマ・クベのグラナダ艦隊が動けばまた違った形にもなったであろうが、彼は損耗を嫌い、あれこれ理由をつけて防衛戦には関わっていない。
 彼のした事といえば、味方の撤退を援護するため、レビル大将率いる主力艦隊に陽動目的に噛みついた事であろう。
 歴史にIFがあるならば、このときのマ・クベ大佐が本気でレビルを討とうとしたならば、後の歴史も大幅に変わったはずである。
 しかし彼は、軍人という職業に、余りにも遠過ぎたのだ・・・。

 既に何度目の出撃だろうか。トウヤ達は戦闘と補給を繰り返すも、最早状況は火を見るよりも明らかだ。
 加えて、絶え間ない連戦による消耗は誰も変えることなどできはしない。

「トウヤ中尉、戦線は・・・もう・・・」
「ああ、分かっている。マ・クベの下衆に助けられるのは癪だが、撤退するぞ」

 オデッサでの状況が嫌でも胸に去来する。
 二線級の機体で捨て駒にされたフェープ少佐率いる〝レビル暗殺部隊〟の仲間たち。
 南極条約を無視し、実戦で使用された核兵器。
 そして何より、碌に指揮系統も残さずに敵前逃亡したという事実。
 本当の敵とは奴のことではないのか? が、今はそんな殺意を弄ぶ時ではない。

「シズネ! トーマ! 武器はどうなっている!?」
「バズもシュツルムも完全に打ち尽くしたわ。残っているのはマシンガンとマガジンが少しだけよ」
「こっちも似たような状態です。それと、シュツルムが残弾1です」

 味方の艦隊は近い。戦闘での損傷も加味し、切り上げなければ後が続かないだろう。
 そう判断したトウヤは、撤退を促す。これ以上は無意味だ。

「了解した。早く艦隊の方へ行った方が・・・全員、散れぇッ!!?」

 怒声が狭いコクピット内に響き、それを受けての回避が入る。閃光が横切るも、仲間の装甲がレアステーキとなっただけで済んだのは、不幸中の幸いだろう。だが、以前状況は予断を許さない。
 心臓の鼓動が強くなり、余裕が少しづつ削られていくのが分かる。今為すべきこと、それは・・・。

「二人とも、早く行け!! むざむざ死んでやる義理はない!!」
「し、しかし!?」
「武器も碌になくてか!? 足手纏いだ!! 早く離脱しろ!!」
「くっ!? 諒解!!」
「戻ってこないと承知しないわよ!!」

 悔しさを滲ませ、トーマもシズネもそれに従う。ただし、弾幕の置き土産は忘れない。
 敵はそれをバラけて回避する。それら鉛の暴風が吹き荒れる中、回避行動をとったジムLアーマーを、一条の光が射抜く。

「当て易くて助かる。機体に驕るとはまだまだ未熟だな」

 機動性が売りの機体だが、回避場所が予測出来れば容易いことだ。まして、射撃を得意とする者が相手では運が悪い。
 盾を構えたままに高機動で機体を激しくぶらせ、トウヤはそのまま更に次の機体へ狙いを定める。

 「墜とせる」と感じた。
 
 だが、現実は違う。研ぎ澄まされたその中で、1機のジムコマンドによって妨げられた。
 伸び進んだビームを楕円の盾に助けられると、危険と感じて機体を下げさせる。
 パッと見、お情け程度となった盾を付けていたが、相当の戦闘をこなしているということなのだろう。

(恐らくは隊長機。あれを防ぐか。だが・・・命はやれんな!)
 
 後退と見るや、俄然迫りくるジムコマンド。ビームガンが次々に放たれ、要の楯も削られていく。
 揺らめく様に、そこで銃身が動いた。重金属粒子が何度も放たれる。向けられたそれはジムコマンドには当たらない。いや、狙ってすらいない。
 だが、突如としてジムコマンドは身を引いた。何故? それを確認もせず、ゲルググも宇宙へと消えていく。
 後に残ったのはジムコマンドと、欠損部分から火花を散らすLアーマーだ。
 
「少佐、申し訳ありません。俺がもっと上手く出来ていれば・・・」
「いや、生き残って何よりだ。下手をすれば、お前もやられていたかもしれん
 ・・・ファウン准尉は、残念だったが・・・」

 そう、あのときのゲルググが狙ったのはLアーマーの方であった。
 ジムコマンドの方ではない。

「敵にかまけて部下をやられる、その愚を犯さずに済んだのだ。
 むしろ、私の方こそ感謝している。すまなかった」
 
 男は通信越しに頭を下げた。そのさまを見てLアーマーのパイロットは慌てて「気にしないで下さい!?」と口にすると、彼は次いでジオンのことを罵った。
 少佐と呼ばれたこの男が引いた理由。それは戦闘中に入ってきたある通信のためである。

『―――功に走って部下を見殺しにするか、連邦の隊長機』

 抑揚のない言葉、しかし痛烈なまでに心を抉るそれ。
 身を何合と打ち込められるよりも痛い。隊長機のパイロットは、それを思い返して顔を殺意と恥辱によって歪ませる。
 そしてあの紋章。シールドに刻まれたそれが、鮮烈なまでに焼き付いている。

「・・・しかし、〝双頭のヒートホーク〟奴がそうか。
 話には聞いていたが・・・くっ!! スペースノイドめっ!!」

 少佐と呼ばれた男は、熱を帯びて怒りをぶちまける。
 忘れない。いや、忘れようもないだろう。あの忌まわしい紋章を。
 奴は自分を虚仮にした。それも、互いが命をやり取りする戦場で。断じて許すわけにはいかない。
 ああ、そうだとも・・・貴様は私が倒してやろう! 
 我が名、ジャン・ジャック・ジョンソンの名に賭けて!!


 時はU.C.0080.01/01
 後に一年戦争と呼ばれるこの戦争は、新たな年を迎えていた。



●今回の大雑把な結果
・ソロモン陥落
・ドズル中将戦死
・カニンガム提督の増援
・一年以内で終わらない一年戦争


今回の選択機体:MS-14A
当時の選択可能なジオンの機体
(ただし、物によって、階級、記章などの制限あり)

・MS-06F2(ザクⅡ後期生産型)
・MS-06S (ザクⅡS)
・MS-09R (リックドム)
・MS-14A (量産型ゲルググ)
・MS-14B (高機動型)
・MS-14C (ゲルググキャノン)
・MS-14F (ゲルググマリーネ)
・MS-18E (ケンプファー)
・MA-05  (ビグロ)
・ガトル戦闘機


●あと☆がき

はい、どうも。
海兵隊をちょっと優遇してる気もしますが、こんなのも悪くはないのではないかなぁ、と。
予想外に出張ってしまった感はありますけどね。

さて、ソロモンは史実通り陥落し、ドズル・ザビ中将もビグ・ザムを駆って戦死をとげました。
ある種、史実のとおりといえます。
違うといえば、第一回で死亡予定だったNPCのカニンガム提督の増援でしょうか。
相変わらず「誰てめぇ」と思えてしまう。1stには出てきてませんしね。

※追記
恐らく、ロドニー・カニンガン准将のことっぽいです。
本誌ですと『カニンガム』と明記されてたのですが、ポジショニング的にこの方で間違いないかと(-―;)

・・・それはそうと、大分文字数が増えてるような・・・。
なんか第一回目と5000字以上違うのですが(爆)
うう~む、こんな長くするつもりなかったのに(駄目過ぎ)

※尚、この回の結果は「ゲームギャザ 2001:1月号 vol.17(HOBBY JAPAN)」に収録されたものとなります。

読参~「機動戦士ガンダム 一年戦争史」~ 第8回 ソロモンの海(前編)

2008年07月11日 | 読参小説(ガンダム 一年戦争史)
●自分の道

―――ジャブロー戦より数日後

 強い光の中ながらも締めきられた一室。その中に存在する影が3つ。
 1人は黒髪のユキ少尉。1人は肌蹴た軍服から鍛え上げた筋骨が印象的な巨漢。
 そして最後に、これからユキの上官となる存在。狐を想起させる女性であった。

「アンタかい。物好きだねぇ。上からの転属命令もあったとはいえ、望んでここにくるなんてさ」

 その女性が口を開いた。口元に微笑を銜え、実に楽しげに。
 
「実力は聞き及んでるよ。ジャブロー撤退時での敵MS部隊を単騎で撹乱、撃破。これにより味方の部隊を救ったとか・・・。
 しかも、怪我を押しての出撃でとね」

 勢い、握られた扇子が向けられる。
 刃の如きそれに対し、ユキは淡々と返答をする。熱を帯びずも、彼女の視線は変わることはない。

「まあ、いいさね。来た以上はしっかり働いてもらうよ!!」
「・・・はい、そのつもりです。
 中佐、お願いがあります。私を強くしてください。その為に、此処に来ました」

 まるで子供のようなセリフだ。普通は誰しもがそう思うだろう。
 しかし、逸らすことのない正面からの視線。そして、その意思を伝播させる表情が、そこに確かな説得力を与えている。
 それに対し、目の前の上官はうっすらと口元を歪ませた。

「黙ってアタシについてきな! そうすりゃ強くもなれるもんさね。いいかい?」
「はい!!」
「そうそう、こいつを預かった。何でも、先の戦功の報いってやつらしい。受け取りな!!」

 明確な返答に満足げな表情を浮かべる女性。それは、紛れもなく猛禽の笑みだ。
 その捕食者じみた笑みの後、放られたそれが光を受けて反射する。
 中尉の記章、昇進の証である。

 敬礼をし、退出をする。
 静まり返ったその部屋の中で、巨漢の男、デトローフ・コッセルは一つの疑問を口にする。

「しかし、宜しかったので? 海兵隊の戦力増強はありがてぇですが、時期にどっかへ引き抜かれるんじゃねぇですかね?」
「構やしないよ。一人抜けた程度で海兵隊がどうなるもんでも無し。
 そうならなければそれで良し。もし引き抜きならば、そのときは思い切り高くふっかけるだけさね。
 いずれにせよ、珍しく良いカードが来たもんだ。どう転ぼうが、あたしらにとって損はないのさ」

 新しい玩具に満足する子供のように笑う女傑、シーマ・ガラハウ中佐。
 そう、どう転ぼうと構わない。MSパイロットという時点で貴重なのだ。額面通りの能力でなくとも、用途などいくらでもある。
 彼女にとっては、ジオンや連邦などくだらない馬鹿騒ぎをしているに過ぎない。 自分たちはそれに付き合わされているのだ。故に、せいぜい美味い汁を吸わせてもらう。
 かつて、自分たちが払わされた毒ガス虐殺という汚名の代価。未だにそのツケは頂いてはいないのだから。



 自室に戻ったユキは、真っ先にベッドへと向かった。
 与えられた個室で着の身着のままそこへ寝転ぶと、深く溜息をついた。

「あ、あははは・・・おっかなかったぁ、シーマ中佐・・・」

 その情景を思い返し、苦笑いと共に軽く震えた。我ながらよくあんなこと言えたものだと少々呆れてしまう。

「・・・自分にあれだけ度胸があるとは知らなかったな。
 でも、単に震えてるより、虚勢を張れる分だけましかも」

 やや自嘲気味にそんなことを考えるも、傍目で見るとかなりネジが緩んでやがる。
 無意識に手元に枕を抱きよせつつ、震える手と共に抱きしめた。
 新しく変えた枕の匂いが沁みて、若干の気はまぎれた。うん、悪くない匂いだ。
 それにホッとしたのか、此処最近の蓄積されていた疲労と、先程までの緊張感の消失により、意識に反比例して次第に瞼が重くなる。
 
「流石に疲れちゃっ・・・た・・・かな」

 すぅすぅとかすかに響く寝息が部屋の中を微弱な波紋のように広がり、泡沫の如く消えていく。
 ユキはいつしかまどろみの中へと落ちていた。



 日も段々と傾きかけ、次第に濃緑の精細が欠けていく剝き出しの密林群。それに合わせてか、南米の湿気を帯びた空気も、寒さを感じさせるものへと穏やかに変化していく。
 そんな天然の世界の中、明らかな異形が確かにあった。
 そしてそれを駆るパイロットは、未だかつてなかった感覚に囚われていた。

(なんなの、これは!? この感覚は!? 
 訳の分からない嫌だと感じられるこの感覚・・・)

 突発的に身に降りかかった得体の知れない何か。自分は一体どうしてしまったのだろう。
 そんな最中でさえ、未だ治らない傷が相変わらず痛みを放っている。
 だが、すぐにどうでも良くなった。自分と友軍を焼こうとする者、それが理解出来る。
―――――――――――敵!!

『そう、そこから狙おうとしてるのね? 墜ちなさい!!』

 言葉と同時、死角から飛び出したジムが即座にバランスを崩した。完璧な奇襲となりうるはずであった攻撃。が、それは許されない。果たして、パイロットは何が起こったのか理解すら出来なかったであろう。
 幾つもの空薬莢が止め処なく転がり、その熱を次々に大地へと伝わらせていく。
 崩れ落ち、大質量の金属音を響かせる敵機。それが、一方的な戦闘の始まりであった。
 密林の中を軽快に駆ける蒼い機体。地上戦に特化したグフ、それを更に改良したグフカスタムだからこその機動性。そしてそれが、次なる獲物を定めた。
 機体の反応はミノフスキー粒子の影響か、把握できていない。が―――――――
 
『隠れてても無駄、逃がさない!! いけっ!!』

 両腕に装備されたガトリングシールドが、容赦なく火線を作る。それはこの葉を散らせ、同時、幾許かの火が鮮やかに灯される。
 コンピュータに表示されない【Ⅹ】。だが、それは紛れもなく存在し、陸線型ジムという名に・・・いや、ただの金属塊へと名を塗り替えられた。
 
 此処でやられてはたまらない、そう踏んだのだろう。その場所からさらに2機の機体が飛び出す。
 共に陸線型ジム。1機が火器での支援、もう一機が銃器と盾を構えての突撃という具合だ。
 両腕の火器で牽制をかけつつ、すぐさまユキは最も都合のいい位置を取った。
 点は交わり線となる。支援機と突撃機、それが直線となる場所だ。射線が重なり、これにより、数の上の2対1は崩れ、手持ちの弾丸も、左右の盾を駆使し前後2体へと注がれることになる。
 だが、これには当然敵も動く。が、ユキもそれに合わせて一定の距離を保ちながら牽制を交えつつも機体を動かす。
 その短いやり取りの中、突っ込んできたジムに対し、彼女は更に2つの動作を追加する。
 ガトリングを防ぐ盾、そこに撃ち込まれる弾丸が凪のように消え、それにとってかわったワイヤーが途端に高圧電流を走らせる。幾重もの火花が走り外観からも分かるほどに鮮やかな光が、ジムを包んだ。
 一瞬、そのわずかな判断で勝負がついた。物言わぬ木偶となったその時に銃弾が幾つも撃ち込まれ、更なる金属塊が出来上がる。

「なんなのよ・・・なんなのよ、あれは・・・っ!?」
 
 支援していたジムのパイロット、ジェニファー・トリット少尉は、今の様を見て愕然とした。
 敵は、明らかに理解の外のものだ。
 奇襲や前衛の対処だけでなく、自分が位置を変えようとした際、まるで移動先を知っているかのように銃弾を放ってきた。現に幾つかの損傷も受けている。碌に動けなかったのもこの為・・・。

 一体、自分は何と対峙しているのだろう・・・。
 そんな彼女の思考を遮るように、敵は悠然と大地を踏みしめる。それはまるで、昔語りの鬼の如く。
 足が震え、手は竦み、ついには恐慌状態となって彼女は逃げ出した。先ほどからの余りに異様な戦闘、その重圧に耐えられなかったのだ。

"ばっ、化け物よ!? 誰か、誰か助けて!!"

 忠実に人間なジムが音を立てて密林の濃い方へと逃げていく。
 それを見る中で、ユキはさらに奇妙な体験をする。

『私が、化け物・・・?』

 聞こえるはずのない声に戸惑うユキ。ありえない、だが、確かに聞いた。なんでこんなことが・・・。
 幾許かの沈黙がコクピット内を支配する。が、やがて、その世界に一つの答えが下された。
 操縦桿がゆっくりと傾き、そしてトリガーへと指が掛けられる。

『いいよ…それで。でも、アナタも逃がさない!!!!!』




「きゃぁぁああああッ!!!???」

 悲鳴と共に飛び起きた。
 部屋の中ではじけたそれは、他ならぬ自分のものであると知り、若干の溜息が漏れる。
 そのまま寝てしまった服も、所々でべたつくのを感じる。胸元を軽くはだけると、実際にそれが見て取れた。着替えないと寝れないなぁ、と思うも、それもすぐに先程の夢にとって代わられた。

「・・・夢じゃ、なかったんだけどね」

 でも、あれは一体何だったのだろう? まるで敵が全て見えるような・・・ううん、もっと広い。全てを把握できるような感覚・・・。
 敵味方のそこにある息使いや殺意、そういうのが分かるような、得体の知れない何か・・・。
 あの時、鎮静剤はとうに切れていたし、それはアドレナリンの興奮作用なんかでもない。
 そして自分でも信じられないことだが、あの時こそが先の上官が話していた戦果につながった。

 ぶるっ

 反芻するユキ。しかし答えは出ず、やがて背中が冷たくなる。
 それを抑え込む様に身体を抱えるも、得体の知れない何かのために不安は抑えきれない。
 そしてそれは、敵兵の口にした(と感じた)〝化け物〟にどうしても繋がってしまう。

「強く、ならないと…。心も、体も。あのとき、ルナツーで助けてくれたシーマ中佐みたいに。
 だからこそ、ここに来たんだから…っ!」

 明るくも広いとは言えない個室。そしてその中で震える一人の少女。
 しかし、その双眸の強さだけは、決して少女のものではなかった。




―――ソロモン要塞内、某所―――

「ああ、こんなところにいたんですね。探しましたよ」
「どうした、トーマ。そんなに慌てて」
「どうしたって・・・あれ? 何をなさってるんです?」
「見てのとおりだ。今は自主学習中だよ。熟知するに越したことはない」
「・・・またですかぁ? まるで恋人に付きっきりみたいですね」

 見易い様にと付箋が幾つも張られた取説を片手にトウヤはトーマ曹長へと軽く返し、それに呆れた様な、というか、「この人は、全く・・・」と聞こえそうなぐらい思いっきり呆れて更に返す曹長殿。
 そんな彼を尻目に、コーヒーのチューブドリンクを片手に取説へと目を戻すと、トウヤは先程の疑問点を再度口にする。

「で、用事はなんだ?」
「そ、そうでした!? 例の機体の整備と特殊チューニング、ともに完了した様です」
「そうか・・・では、試してみるかな」
「へっ・・・? ちちちょっと待ってください!? 話しはそれで終わりじゃないですから!?
 というか、また訓練なんですか!?」

 足早に格納庫へと向かおうとする上官を必死に止めるトーマ曹長。
 此処のところ、トウヤは毎度こんな感じで訓練漬けである。しかも、睡眠時間などを削っているのだろうか、目の隈や以前よりも痩せた頬など、憔悴しているのは誰の目にも明らかだ。

 出会った当初ほどでないとはいえ、どこかしら無機質―――機械的な一面のある人だと理解はしていた。しかし、同時に自愛して欲しいとも思う。
 が、それが口に出せないのも彼の性分ゆえか。
 
「なんだ? まだ何かあるのか?」

 早く機体を試したいのか、余り興味なさそうにそれを聞くも、返答はあらぬ方向から返された。

「ええ、とっても。偶にはお姉さんと付き合って欲しいかなぁ、なんてね?」
「誰がお姉さんだ。
 今は、早くこいつに慣れたいんだ。それゆえの訓練。
 良き収穫を期待するなら、上質の土や肥料が不可欠だよ」

 そう言い切るトウヤ。が、シズネもそれに微笑をもって軽く返す。

「あら? 土いじりの趣味があったとは意外ね。
 でも、如何に肥料や土が良くても、水のやり過ぎは腐ってしまうだけよ。育つ物も育たないわ。 
 そんなわけで、今しばらくは息抜きといきましょう。アジアで暴れていた時みたいに、碌に休養をとってないんでしょ?
 そんなに張りつめてると、身につく物も身につかないわよ」
「植えた物にもよるだろう。価値なく腐り落ちるのか、意味ある成長を遂げるのか。物によって変わりもする」

 しかし、トウヤは相変わらずだ。
 それにシズネは困ったように肩をすくめる。

「まったくもぅ。ホント、頑固ねぇ・・・。
 トウヤ中尉がなんでそこまでするのかは知らないわ。
 でも、いつもイの一番に危険を引き受けてるのは知っている。そのお陰で助けられてることもね。
 だから、こっちも何かしらお返ししたいのよ。少なくとも、仲間ってそういうもんでしょ」

 一転、向けられた笑顔に対し、若干の目が開かれる。
 幾許かの沈黙・・・次いで、トウヤは小さな溜息を漏らすと、しぶしぶと言った風体でそれを了承した。
 尤も、過去に似た様なことが何度かあったため、「多分、何言っても無駄だろうなぁ」と諦め気味の心境も入ってはいるが。

「そんな顔しないの。女性からのお誘いにそれは失礼よ。ねぇ、トーマ曹長」
「・・・少尉、そこで俺に振らないでくださいよ。
 しかし、うちのチームはホントに軍隊っぽくないというか・・・。まあ、そこが気楽でいいんですが」
「隊長が気にしてないもんね。最低限の軍紀さえ守ればそれでいいっていうし。余所じゃ考えられないわ」
「確かにそうですね」
 
 ふるもっこである。

「・・・拘り過ぎるとロクなことがないんでね。実際に動けるならそれでいい。
 勿論、度の過ぎたものは論外だが」

 盛大な溜息を吐いたのち、トウヤは取説をぱたりと閉じた。
 それの表紙がかすかに映るも、手早くそれを鞄にしまう。

「ほら、行くぞ? 休養を取るんだろ?」

 若干渋い顔をしつつ、応じたトウヤ。
 それに満足そうに笑って手を引くシズネと、ほっとした表情のトーマ。
 しかし、そんな彼らと上官の思案先は、彼らに悪いと思うも、それでも尚別の方向を向いている。

―――MS-14A ゲルググ―――

 ジオニック社より新たに配備された新兵器。
 そして、トウヤにとっての為すべきことをする道具でもある。

(・・・これ以上、仲間が死ぬのは御免だ)

 あのとき確かに受け取った火は、消えることなく未だ燃え続けている。
 全ては、大事なものを守るために・・・。



●あとがき

お久しぶりです。
なんかもう色々纏まらなかったというか…(汗)

あと、ホントはグフカスタム無双書きたかったんですが、助長になり過ぎるので色々カットにorz
ネタは結構考えてたんですけどね。
ワイヤーアクションなんて、ファミコンの『ヒットラーの復活』やSFCの『海腹川背』よろしく、面白い動きができる機体ですので。

さて、とうとうゲルググが登場しました。
この機体、ファーストの史実といわれているものでは、ア・バオア・クーで漸く本格投入された機体です。
それがソロモンで出たのも、ひとえに今までの動きがあったからに他なりません。
この時のジオンPLの方々は、リアルで士気上昇されたことでしょう。
ええ、私もその一人です。

はい、それでは前編終了です。
後編は・・・うん、いつだろ(コラ)

読参~「機動戦士ガンダム 一年戦争史」~ 第7・5回 (外伝) 北米での微風

2008年05月19日 | 読参小説(ガンダム 一年戦争史)
 清潔に整った広大な空間・・・。そこで一人、安っぽいお茶を事務的に機械から取り出すと、心なしか音が強く響くような感じがした。
 かつては喧噪のあった日々のこの場所も、今となってはその主人も失せ、その広い空間とテーブル達が往時の姿を偲ばせている。
 ジャブロー攻略失敗。どうにか無事に帰還できたものの、その結果の一端を垣間見えるようで、トウヤは虚しくなって溜め息をついた。
 
 どこかしら居たたまれない。そんな気持ちがあったのか、外に出て風を浴びる。
 地球に降りて以来、天然の風というものは何故か心地良く沁みわたる。
 それは、トウヤにとっては、最も大きな収穫の一つなのかもしれない。

 それなりに気持ちが切り換えられると、握られたカップから、浅い琥珀にも似た色の雫が落ちていたのに気づく。
 どうやら余程頭が飛んでいたらしい。
 手にかかった幾許かを見つめると、勢いのままに飲み干されるそれ。正直、あんまり美味くない。
 
「問題は、これからか・・・さて・・・」

 眠い、というのとは少々違う。ジャブローでの激戦のせいか、どこかぼんやりしているのが自身でわかる。
 既に、トウヤたちの部隊は宇宙への転属が決まっている。間違いなく激戦地だろう。
 一瞬、今の内に上官と挨拶でも交わしておくかと考え、即座に馬鹿馬鹿しいと首を振った。

 この男。普段は口数も少なく、人とも必要以上には混じわらない。そして表情も無愛想で近寄りがたく、オマケにパイロット特有の馬鹿騒ぎや女遊びなどの必要悪さえも見かけないのである。
 正にこっちくんなフィールド全開。まあ例外として、自分のチーム連中とは相応に話したりしている。
 そんな訳で、彼は異動先の上官にとって微妙に扱い辛いのだが、毎度毎度ある程度の戦果をあげているのだから、嫌でも上手く使わざるを得ない。
 ぶっちゃけ、配属替えで一番喜んでるのはそんな上官殿だろう。

「どうしたんですか? 中尉。こんなところで」

 紫紺の髪に陽気で人懐っこい声。見慣れたその少年は部下であるトーマ曹長だ。

「ああ・・・いや、風を浴びて頭冷やしていた。こうしているのも悪くはないな、と」
「そういえば、アジアの時も出撃前とかはよくそんなことをしてましたっけ。珍しかったのでよく覚えてますよ」
「あらあら? それは初耳ね。麗しい殿方だけの秘密ってとこかしら♪」

 振り返ると、そこには悪戯っ子の微笑を浮かべ、鮮やかな長い麻色が飛び込んでくる。 
 年上の女性ながらも同じく部下であるシズネ少尉だ。
 
「変なこと言わないでくださいよ、少尉!
 確かにトウヤ中尉は女っ気がない上に女遊びしませんけど、きっと大丈夫・・・なはず、ですよね?」

 フォローになってないフォローな上、半信半疑。てか、むしろ疑の方が強いんじゃね?
 仲間のそれに若干ため息をしつつ、トウヤはどうでも好さ気に解答を出す。

「疑問符付けるな、疑問符を。
 俺にとってはどうでもいいだけだ。女遊びなんか興味ないんだよ」
「じゃ!? じゃあ、やはり男しょ・・・がふっ!?」
「・・・少し、頭冷やすか?」

 大変珍しいことだが、口より先に手が飛び出した。次いで、脅し文句を+α
 この場合、後で雑用増やすわよん?とかの軽いことではなさそうだ。曹長は慌ててそれを訂正した。

「あら、残念ね。トウヤ中尉の場合、それはそれで面白そうだったのに」
「シズネ、勘弁してくれ。俺は、単にそういうことに線を引いてるだけだよ。それに、ユキのことも気になるし・・・」

 若干、げんなりしたご様子の中尉殿。
 しかし、そんな彼の零したとある単語を、シズネ少尉は興味深げにつつき出す。

「へぇ~・・・恋人がいたなんて知らなかったわ。私としては是非ともお聞きしたいですねぇ、ユキギリ中尉?」

 変わらぬ口調ながらも、不思議と笑顔が怖いです。てかさ、呼び方変わってるよ。
 でもって、トーマは遠巻きににやにやと楽しんでるし。

(別段、仲間というだけで極端に親しくもないし、何故怒った風なのだろう?)

 そんな風にトウヤは疑問に思いつつも、溜息交じりの返答をする。

「恋人なんかじゃないよ。ただの仲間だ。だが、人事異動の都合、オデッサから離れ離れになってね。以来、どうにも気になってるんだ」
「なんだ、そうだったんですか・・・・・・・・・・・つまらないなぁ」
「・・・聞こえてるぞ、曹長。詰まらなくて悪かったな」
「わぁあ!? そんなに睨まないでくださいよ。しかし、オデッサですか。酷い戦闘でしたね」

 うんざりした表情で誰へともなく呟くトーマ。アジアに逃れる際に聞いた話では、彼も結構な目にあったらしい。
 
「ま、どこも酷いものよ。私もアジアでは苦労したしね。トウヤ中尉が来てくれてそれなりに助かったんだけど」
「まさか、そのままチームを組むとは思わなかったけどな」

 その言葉を聞いてくすりと笑うシズネ。
 機嫌が直ったのか、用意していたプルトップが軽く放られる。同時、缶の水滴がいくつか飛んだ。よく冷えている証拠だ。
 慌ててそれを受け取るも、ラベルを見て開けるかどうか躊躇する。うん、酒だよ、これ。

「・・・ここじゃ飲めんだろ。他の連中に悪い」

 外とはいえ、ここはあくまで基地の一角である。
 専用の酒保でもなく、働いてる連中もちゃんといる。そんな中で酒を飲んでいたら、流石に罰則もんだろう。
 しかしそんなことなど見越していたのか、ふふんと得意げに猫を連想させるような悪戯っぽいな微笑が向けられる。

「ええ。だから、中で飲みましょ。働きづめでぶっ倒れられたら困るのよ。
 それとも、おね~さんのお誘いを断るのかしら♪」

 猫の笑顔からととんと一転。無邪気な笑顔にウインク一つ。
 大抵の男ならまず魅力的に映るであろうそれがセットでは、さしものトウヤも断ることはできなかったらしい。
 そして何より、自分を思ってくれてのことが嬉しかった。

「わかったよ。ただ、程々にしてくれ。そんな酒は強くないんだ」
「それじゃあ飲みましょうか! 折角なんですし!!」
「・・・聞いちゃいないな」
「ふふっ、まあいいじゃない。こんな日があっても、罰は当たらないわよ」

 手を引かれるように連れていかれる我らが中尉殿。
 しかしその内では、こんな日も悪くないのかな、とまんざらでもなかったとかなんとか・・・。




 
 え~・・・ごめんなさい。ソロモン戦とかなんとかいいながら、結局外伝書いてしまいました。
 いあ、地上にいるんですし、こういうほのぼのとしたのがやってみたくなったというか…。
 殺伐とした戦場だけだとどうにも物足りないんですよね。
 戦争中の凪の様なものとご解釈くださいませ。

 しかし、トウヤんが大分丸くなったような・・・(汗)
 まあ、戦場に入ったらすぐに切り替わりそうですが。

 あっ、書き方大分変わってるのは仕様です。こういう回では相応の書き方のが楽しいですので(オイ)
・・・・・・・・・・コミカルチックに描いてる方が合うんでしょうかねぇ。こういうの好きですし。

 では!!

読参~「機動戦士ガンダム 一年戦争史」~ 第7回 ジャブローへの道のり

2008年04月28日 | 読参小説(ガンダム 一年戦争史)
●少女、戦場に

 格納庫へと続く廊下。その途中、ユキは腕に巻かれた包帯を強引に破り捨てると、必要な分だけを残し、残りは手近のダストへとぶちこんだ。
 そんな彼女に対し、友人のラサ曹長は必死に止めようと食いさがる。

「無茶ですよ!? アジアでの怪我だってまだ治ってないんですよ!?」
「それが何? 今は一人でも兵士が必要なの。それに、このくらい大したことないんだから!!」

 だが、ユキは引かない。それが自分の責務だと。為すべきことだと譲らない。
 しかし、それは曹長も同じだ。彼女にとって、友人をみすみす死にに行かせるのは耐え難いことだ。

「正気ですか!? そんな怪我ではやられるだけです!!」
「・・・私は、必ず帰るつもりでいつも出ているわ。
 それに・・・それに、怪我を理由に肝心の時に役に立てない、もうそんなのは嫌なのよ!!」

 ぞくり、あまりの剣幕に空気と共に背筋が凍る。
 目の前にいる少女は、自分の知っているユキではない。普段の明るい彼女とはかけ離れ過ぎている。
 
 もう格納庫はすぐだ。淡々と腕と脚のテーピングを更に固く締める。
 そして一転して抑揚のない声と共に〝どいて〟とラサ曹長を見つめる。それは、邪魔すれば容赦しないという意思表示に他ならない。

 完全に動けなくなったラサ曹長を除けると、素早く機体に乗り込むユキ。
 乗るや手早く機体を始動させると、それをガウ攻撃空母へと積みこませた。

―――MS‐07B-3 グフカスタム―――
 量産型グフの上位機。
 従来のものよりも、装甲・機動性などあらゆる面で性能の底上げがされた地上専用機。
 また、マニュピレーターを元に戻し、ヒートロッドもアンカーワイヤーへと改良が施されている。

 ジャブロー攻略ということで、使えるものを強引に回してもらった。これには、機体はあれど、扱えるパイロットの不足という点が後押しした結果でもあった。

「搭載の準備はこれでよし・・・いいわよ」
「おいおい、いいのかい、少尉? あんた、身体が・・・」

 ガウの搭乗員からの通信。ユキの包帯を見とっての弁。だが、返答などは決まっている。
 彼女はそれを、躊躇なく言い切った。

「人には役割がある。貴方が自分の役割を果たすように、私はパイロットとしてのそれを果たすだけよ」

 もうあんな思いは嫌。もし自分が万全だったら、あんな風にならなかったかもしれない。だから、出来るだけのことはする。
 後悔だけは、したくない!!

 胸に去来するはルナツーでのあの出来事。
大尉が死に、トウヤが変わらざるを得ないキッカケとなった戦場。
 その戦場では、彼女は負傷が原因で途中に身を引いた。そして、悲劇はその後に起きてしまった。
 
(あの時のことは忘れない。だから今度は違う。変えてみせる! 私は、もうあの時の私じゃない!!)


●密林の死闘

 鬱蒼と茂る雑多な木々。それは完全に密林というものであり、統制されたスペースコロニーでは絶対にお目にかかれない光景である。
 そしてその天然の要塞に、幾重もの炎が奔る。砲撃音が止むことなく響き渡り、空を覆う黒雲からは鋼鉄の兵隊たちが次々と吐き出されていった。

 バズによってガンペリーを叩き落としつつ、トウヤはガウの搭乗員達へと礼を口にする。そして、すぐさま進撃を開始させた。
 目的は連邦軍本拠地、ジャブローの攻略。
 だが、はたしてそれが可能なのか・・・。
 アジアでの経験により、既にこのような地形は知っていた。知っていたからこそ、尚更それが分かる。
 アジア以上に遮蔽物の多いこの地形。加えて、そこかしこに満ち満ちた水の流れ。それは守りには易く、攻めるには難しという世界だ。
 更に、ミノフスキー粒子による大規模な相互不通が畳み掛ける。
 粒子はこちら側が仕掛けたものだが、それでも圧迫的な感覚は残る。個々の兵士それぞれは、改めて何と闘っているのかを思い知らされた。

(オデッサの際、敵の大物をこちら側につけたというのもあっての立案との噂だが・・・それだけでは・・・)

 所詮は噂、取るに足らない都市伝説。首を振って切り替えようとするトウヤ。だが、相も変わらず圧迫感は消えはしない。
 一つの気安い声が響くまでは・・・。

「中尉。折角昇進したんですし、楽に行きましょう。なぁに、きっと上手く行きますよ。それに、俺のグフがいるんですからね!!」
「・・・だな。しかし、少々頼りないのが困りものだ」
「ひっで!? 俺だってちゃんと戦力になるんですからね!!」

 陰った気を吹き消すようにトーマの声が流れてくる。
 トウヤへと続くその声は、仲間のシズネ少尉にも伝わっており、心なしか空気が軽くなった。

「ふふっ、ダメじゃない、中尉。部下は可愛がってあげないと」
「…シズネ少尉、少し待て」

 軽口を無視し、先頭を行くドム。それが後続へ止まれの合図を促す。
 それに仲間は即応じると、臨戦態勢へと移行する。

(センサーに感あり・・・。強化チューニングが功を奏したか)

 今回のジャブロー戦に備え、トウヤは愛機にセンサー強化と、あるマーキングを施していた。これらは、少尉以上の特権である。
 そして、センサーのそれに対してある判断を下した。

「藪撃ちをする。相手が顔を出し次第、そこを撃て。いいな」

 いうや、バズが数発叩き込まれる。
 燃え上がる木々の中、銃を打ち鳴らしながらジム達が慌てたように顔を出す。そして、それで終わりだ。
 哀れな彼らは、構えたグフとドムによって鴨撃ちをされる羽目となった。

「撃墜スコアは貰いです!! いい感じですね」
「ハシャギ過ぎね、全く。でも、悪い気はしないわ。このまま行きましょう」


●青の銃士

 一機、二機、三機・・・青の上空を飛び交うトリアーエズが次々に撃ち落とされていく。
 近くにいたのか、援護にとコアブースターがメガ粒子を捲き放つも、勤勉なそれは、同じ運命へと向けさせられることとなった。
 
 両腕に装備された異形の盾。盾でありながら、束ねて延びた砲身が禍々しくも鈍く輝き、辺りには役目を終えた無骨な筒が熱気を帯びたまま横たわる。
 それが飛び交う鳥達を穿った犯人である。

「・・・ガトリングシールド、意外と使えるみたいね」

 ユキは軽く深呼吸をすると、ジャブローの大地を進んでいく。
 彼女にも仲間がいたが、彼らは不運であった。降下途中に撃たれたり、降下前にガウごと撃破されてしまった。
 故に仲間はもういない。生き残るのなら、どこかの部隊と合流するのが一番だろう。
 だが、ユキはそれよりもまず敵を求めた。自分の倒すべき敵。それがここに在る。
 敵地の中で単機。それがどれほどの危険かは彼女も理解している。
 だが、それでも。

「弱音は…吐かない! やってみせる!!」

 唇がを強く閉じられる。同時、一機のグフが繁茂した密林の奥へと雄々しい青を進ませていく。
 蛮勇の火を灯し、ただ前だけを見つめる瞳。それ全て、為すべき事のために。
 

●生き延びるために

 既に陽光は陰り始め、天然の緑に埋め尽くされた大地も少しづつ帯びた熱を払ってゆく。
 その中に蠢く無数の鉄の塊。それらが或いは砲火を交え、或いは切り結ぶ様相も、時と共に次第に変わらざるをえなくなっていた。

「・・・撤退命令。ここまでだな」
「ていうことはつまり・・・」
「曹長、そこから先は口にしないの。あとは合流予定地点へと行くしかないわね」

 ジャブロー強襲。オデッサを取られたジオンにとって、乾坤一擲であったこの作戦だが、既に開始よりかなりの時間が経過している。
 成功なのか、失敗なのか・・・個々の兵士達にそれを知る術などあるはずもなく、ただ終わるまでに戦い続けているしかない。
 しかし、明確に分かったそれに対し、やるべきことは一つ。
 生き残ることである。

「引くぞ。まだ弾はあるな?」
「はい、中尉。味方の残してくれた武器とかもありますから、そこは大丈夫です。尤も、残してくれなかった方がよかったのですが・・・」

 要は、撃墜された機体から〝借りていくぜ〟と拾ったものだ。それに愚痴とも哀悼とも取れる言をこぼすトーマ。
 だが、トウヤはそれを話半分に打ち切った。

「・・・ならばいい。敵だ。正面から3機。一度散開、合図と同時に一斉射撃。いいな?」
「…っ!? りょ、了解!!」

 2機のドムに1機のグフ。それが散らばり、弾幕が一点へと注がれる。それにより一機が崩れ、残りの2体からの斬り込みがくる。
 接触。そして相見える敵。それに若干の汗が浮かぶ。敵の機種、それが問題であった。
 アジア戦線で現れた新式、陸戦型ガンダムである。

「エース機、か。俺は敵の隊長機に当たる。少尉と曹長は残りを!!」

 通信途中の最中、両肩を黒く染めた敵機が斬り込みをかけてきた。
 抜かれるヒートサーベル。赤熱化した刃と、重金属粒子で形成されたビームサーベルの鍔競り合い。それより何合かが打ち放たれ、そして距離をとる両者。

(決断が早いな。手練れのエース機、そしてこの地形では・・・)

 強敵への対処へ思考を巡らす中、当然の如く銃弾が襲いくる。
 さながら、頼まれもせずに届けられるダイレクトメールにも似た、不快なそれ。回避行動に火器での応戦と牽制を織り交ぜるも、この戦闘は不利と言わざるを得ない。
 重MSながらも圧倒的な高機動性を誇るドムだが、ここではその利が完全には発揮出来ないのだ。入り組んだこの地形では機動性が殺され、その自重も小回りの足枷となる。
 では、どうするか? トウヤは一つの決断を下した。
 銃器を棄て、急激に正面から機体への負荷を無視して一直線に進ませる。敵機からの弾幕がくるが、それはどうでもいい。ダメージは装甲の厚さに補ってもらう。

「お互い命賭けだろう! さあ、どうする! ガンダム!!」



 この無茶な特攻に、陸戦型ガンダムの乗り手であるロバート大尉はわずかな焦りと恐怖を覚えるも、これはチャンスであるとも思った。
 見たところ、銃器はない。正面からの近接武器だけ。ならば後はガンダムの能力でかわし、小回りが利かないところを撃ち続ければそれで済む。

「焦りか自棄か? まるで牛だな。いずれにせよ、愚直なジオンらしい」

 口元が三日月に歪む。吠えていた銃を止め、サーベルを構えさせる。相手に迎え撃つと誤認させるために。
 後はタイミングよく逃げればいい。まだ、まだだ・・・よし、今だ!!

 彼の行動は決して悪いものではなかった。避けて美味しく調理すればいい。
 しかし、それは悪くはなくも、最善ではなかった。
 最初に閃光が走る。ほんの僅かな目くらまし。予想外の一撃。しかし、既に機体は回避のための跳躍に動いている。まず安心のはずだ。

「目潰しだと!? だが、かわしたぞ! 俺の勝ち・・・ぐわぁーーっ!!?」

 そう、普通ならば当たるわけがない。普通ならば・・・。
 唐突に遮るもののない空中で衝撃が走り、そのままガンダムは大地へと振動を響かせる。
 色彩を変化させ、鮮やかな弧を描いた灼熱の棒。投げつけられたそれが、空で直撃したのだ。
 警告音がビービーと鳴り響く。機体が深刻な、そして自身が危機的状況である証拠。

「ぐぅ・・・・・・こ、こんなところでぇーーーっ!!」

 しかし、まだ動ける。衝撃で出血と共に意識が流れ行く中、ロバート大尉は意地で緊急信号弾を発信させた。
 朦朧とし、やがて霞から0へと消える。彼が覚えているのは、そこまでであった。



「少尉! 曹長!! 二人とも無事か!!?」
「ええ、何とか無事よ。右腕やられちゃったけどね。でも、トーマ曹長がいなければ危なかったわ。助かっちゃった」
「は、ははは! 敵機撃破! いやぁ・・・でも怖かったぁ」

 相変わらずの軽口に若干苦笑するも、直ちに次の判断を下す。
 
「(先程の妙な信号、増援の可能性も十分有りうる・・・)二人とも、引くぞ。生き延びるのが最優先だ。此処にもう用はない」
「了解! ちゃんと帰りませんとね!!」



――――――信号弾、発信よりおよそ十数分後――

「生きているか、ロバート」
「・・・何・・・ぐぅ!? あ、ああ。怪我しちゃいるがまだ無事みたいだ」
「まさか貴様がやられるとはな。だが、生きていてくれて何よりだ」
「僚機は、やられちまったか・・・」
「・・・ああ」
「くそっ!! あのジオン野郎! あんな手で、よくも!!」
「落ち着け。傷に障る。しかしそのジオンだが、どんな奴だったんだ?」
「スカート付きだ。変わったマーキングをしていたから、よく覚えている」
「ふむ?」
「交差させた二本の斧・・・それも、ザクの斧だ」
「二本のヒートホーク、か。わかった。上に入れておこう。ん? どうかしたか」
「いや・・・お前に限ってまず無いだろうが、気をつけろ。ジオンは、強いぞ。舐めてかかると俺みたいになる。
 ・・・やられんなよ? 俺達の夢、易々と終わらせたくはないからな」
「ふん、当然だ。泡沫などにはさせんよ。救護班、面倒をしっかり見てやってくれ。私の大事な友人だ」
「了解しました、少佐!」
「しかし、2本のヒートホークか・・・まさかな」
「どうかなされましたか?」
「いや、少々思い当たる節があってな。尤も、馬鹿馬鹿しい話だが。さて、私もいくとするか」
「そうですか。では、お気を付けて。ジョンソン少佐」




――――次回、ソロモン攻略戦――――


●今回の大雑把な結果
・ジオン
ジャブロー攻略に失敗。
が、ジャブロー内部にて、それなりの破壊工作に成功。

・連邦
防衛に成功。
しかし、艦船ドッグや居住区で破壊工作が行われる。
戦艦等の8隻に損害があり、内4隻が緊急修理。このため、星一号作戦が7~10日延長されることに。
(残りの4隻は作戦参加を断念)

これにより、天秤はジオン有利のまま。



今回の選択機体:MS-09ドム MS‐07B-3 グフカスタム
当時の選択可能なジオンの機体(ただし、物によって、階級、記章などの制限あり)

・MS‐06J
・MS‐06S
・MS‐07B グフ
・MS‐07B-3 グフカスタム
・MS‐07H-8 グフ飛行試験型
・MS‐09  ドム
・アッガイ
・ズゴック
・ドップ
・ガウ攻撃空母


え~・・・はい、かなり久々と相成りました。ジャブロー攻略戦です。
結局、ジャブローは落ちませんでした。う~む、さすがに堅い堅い。

今回のジャブロー攻略は史実のものと同じ、無謀かつ投機的なものです。
シャアのマッドアングラー隊なども動いていますが、攻撃地点がもっとはっきりしていれば結果も変わったんじゃないかな、と。

・・・・・・・・・・・・しかし、どっかの裏切り者は、データをジオンに渡さなかったのか、それとも単に持ってなかったのか・・・。
ゲームぎゃざでは触れられていませんので、エルランのことはどうにも判断がつきません。

そうそう、今回トウヤが施していたチューニングですが、書いたとおり、少尉以上の特権です。
参加者、各々がそれぞれ好きなものを選択し、機体の強化を楽しんでおりました。

で、次回はソロモン戦となります。
ニューヤークとかはー? ってのは禁句です。はい。
史実とは明らかに変わってきた一年戦争史。次回は面白いのが色々と出ますので、お楽しみに。


※尚、この回の結果は「ゲームギャザ 2000:11月号 vol.15(HOBBY JAPAN)」に収録されたものとなります。

読参~「機動戦士ガンダム 一年戦争史」~ 第6回 アジアの戦場

2008年04月02日 | 読参小説(ガンダム 一年戦争史)
 俺の新しい相棒、か・・・。
 胸中で呟きながら黒光りするそれを見上げて、トウヤはオデッサでの出来事を振り返る。
 あのとき、この機体があれば・・・。
 オデッサでの戦闘。それは、トウヤにとって忘れようもない酷い有様だった。
 2線級の機体での無謀な任務。そのツケは、部隊員全てで持って払わされたのだ。今、自分がこうしていること自体、一種の奇跡と言っていいだろう。
 やや感傷的になる自分を笑うと、胸の内で改めてそれを見る。

―――MS-09 ドム―――
 ツィマッド社により新規に開発された、ジオンの重MS。
 熱核ホバージェットによる高機動性と、それを受けての重装甲を持つ強力な機体である。
 オデッサではそれなりの数が導入され、その性能に見合った戦果をあげている。
 この機体は、今までの功績が評価されてとのことらしい。少尉への昇進と合わせての、一種の勲章みたいなものか。
 いずれにせよ、長らく二線級であったザクから最新鋭機へ一足飛びに与えられた事は大きく、自然と気持ちも高揚する。

「・・・大した機体だ。こいつが安定供給されれば、戦線もかなり楽になるだろうに」
「いいなぁ・・・と、こほん。
 し、しかし、そうも言ってられませんよ。少尉もご存じのように、それだけコストがかかりますからね。ザクのパーツとかがもっと流用出来ればよいのですが・・・」

 与えられた機体をそう評価する中、傍らにいるパイロットのトーマ・ハーディン曹長は羨望の声をうっかり表し、次いで溜息交じりに肩をすくめる。この人懐っこい曹長は、アジア方面へと逃れる際に知り合い、撤退戦の際には何度も轡を並べている。その縁もあって部下として配属された。
 ジオンに余裕などあるはずもない。物量差は如何ともしがたく、それはMS開発の遠因でもある。
 先のオデッサの件もあり、確実にジオンは危険な状況に陥りつつあった。

「苦しいのは毎度のことですね。いい時なんてありません」

 面倒そうに呟く曹長。そんな彼にせめてもの希望を言うと、トウヤは兼ねてから気になっていたことを問う。

「今度はユーリ・ケラーネ少将が指揮を執るそうだ。オデッサの時より遥かに救いはある。
 ・・・ところで、頼んでおいた件はどうだ?」
「パイロット仲間とかに聞いたのですが、特にこれといったのは何もありませんでした。向こうさんも、色々としているのは見るんですがね」

 社交性の高いトーマをあてにしてみたが、予想通り上手くはいかないらしい。そうか、と呟くと、腕を組んで思案にふける。
 そんなトウヤを見て、トーマは不思議に思う。これだけ冗長な少尉が珍しいのだ。
 尤も、オデッサ撤退時よりかは遥かに口数は増しているのだが、それが自分の与えた影響だとは気づいていない。
 理由を知りたいという欲求が沸き上がる。それは人の性分として当然だろう。が、それは抑えた。恐らくは、教えてなどくれないだろうから。

(オデッサほどの戦線ならば或いはと思ったが・・・まあいい。戦っていれば、いずれ分かることだ・・・)

 少尉、黙考中。だが、そんなことはお構いなしに、曹長は時を告げる。

「少尉、そろそろ時間です。しかし、今回も楽には行きそうにないですね」
「楽な任務などあったか? これがジオンだ。出るぞ!」

●トリガー
 ガラクタと変えられたジムが崩れ落ち、すかさず次のMSへと銃口が向けられる。どうやらまだ新米らしい。ドムの機動性に戸惑い、ロクな回避行動もとれぬままにスクラップへと変貌する。
 高機動性を誇るドム、そして腕に信頼のある者のみで構成された高速小隊。無傷ではないにせよ、これまでに3小隊分ものMSを撃破していた。

「馬鹿だな、素人を動員とは。さて、もうしばらく粘るか?」
「それもいいわね。けどユキギリ少尉、そうも言ってられないわよ?」

 そう思った矢先、同じパイロットのシズネ少尉から通信が入る。どうやら敵の部隊がそれなりの数でこちらへと向かってきているらしい。
 
「流石に焦ったみたいね。戦力差が違うもの」
「藪はつついた。戻るぞ」
「ふふっ、蛇ではなくて鬼が来てるわね。だったら、鬼さんこちらってとこかしら?」
「ならば、手も鳴らしてやるのが礼儀だ」

 浅く笑うシズネ少尉。他の機体にも合図を送り、すぐに撤退行動を開始させた。
 トウヤは殿に廻ると、バズと90mmマシンガンを後方へと撃ち鳴らす。同時、追われる小魚のようにその場を引いていく。
 果たして、敵は追撃をかけてきた。銃弾の雨を降らせ、意気軒昂と襲いかかってくる。このまま、数の有利で圧倒するつもりなのだろう。
 この場所での仕事は済んだ。では、次の行動は?

(如何に上手く逃げるか・・・。ザクならきついが、それでもドムならば!)

 重MSの本領発揮どころだ。多少の損傷ならば分厚い装甲で許容範囲。そしてそこにドムの回避性能も加えれば、容易くはなくとも、不可能ではない。
 トウヤ本人は気づいていないが、彼はこの困難な任務を半ば楽しんでいた。

「そう、それでいい・・・そのまま、こい!!」

 森に近い位置へと逃げた3機のドム。そこで最前列のドムが発光弾を打ち上げた。
 一閃。数秒の間を置き、そして世界が変わった。

 突如、連邦部隊の周囲が吹き飛ぶ。凄まじい量の弾幕が襲ったのだ。それが「それなり」の数ならばまだしも、その量が違い過ぎた。「桁違い」なのだ。
 連邦の部隊は、これによって完全に混乱、瞬く間に撃破されていく。
 配置された伏兵からの交差射撃。それも、遠距離からの一斉砲火である。

「少尉、ご苦労様です! しかし、これじゃ訓練射撃と変わらないですよ!!」
「ああ、だろうな。そして、仕上げも頼む」
「了解! しっかりと料理してやりますよ!!」
「碌に食えそうにないがな」
「この場合は褒め言葉と受けとっておきます!!」

 陽気な声が心地いい。通信先のトーマは実に軽快だ。
 それはトーマだけではない。伏せられていたMSや砲兵部隊、それらがこれまで退いてきた鬱憤を躊躇うことなく吐き出していた。
 トウヤが胸中で呟いた「如何に上手く逃げるか」。
 それは、敵を引き付け、かつ、やられずにそれを誘導できるかということである。おびき寄せと見抜かれずに逃げ、また撃墜されてもならない。困難な任務だ。

「遮二無二、がむしゃら、無鉄砲・・・馬鹿だな」

 戦場における自分のことなどどこ吹く風。目の前の敵に対し、そう評する。
 しかし、悲しいかな、全てその結果である。
 鋼鉄と光弾の中、何機かが逃亡を図ろうとする。個々のパーツが塵と飛んで雨とかし、あちらこちらで火花を放つそれ。
 しかし、逃げることは許されない。既に伏兵から包囲の輪が出来つつある。最早できることと言えば、降伏の旗を上げるぐらいであった。

「さて、上手くいったな。トーマ、次の準備に入るぞ。件の嫌がらせだ。既にいくつかは済んでいるのだろう?」
「はい、少尉。その辺は滞りなく行われております。しかしまあ、これ・・・かなり性格が悪いというか・・・」

 作戦計画書を見返すトーマ曹長。それを見て、さも嫌そうな顔になる。
 何とも底意地の悪いと思える。提案者は恐らく相当のサディストだろう。

「立つ鳥、後を濁さずって言葉がありませんでしたっけ?」
「俺たちは人間なんでな。泥臭く濁ってて丁度いいんだよ」

 今回、用いられた戦い方。一つは囮を用い、主力の伏兵たちのもとへ誘い出して包囲殲滅する戦術、「釣り野伏せ」。
 日本における、遥か彼方の戦国期にて用いられた島津軍のお得意戦法である。
 そして目標を狙うのではなく、予め設定された地点を狙い、練度を不要とする射撃法。こちらはナチスドイツに対し、人材不足のソ連が編み出した戦術である。

 そしてそれらを駆使しての目的は2点。ひとつは敵にこちらが圧倒的戦力を持っていると錯覚させること。これにより、慎重に動かざるをえなくさせる。
 その合間に地雷の設置と撤退。これも一工夫あり、初めに多くの地雷を設置、次に偽物を。更に、そこから本物と偽物を交互に入れ、敵の兵器ではなく、精神を削らせる。
 これもまた、大幅な時間のロスを余儀なくさせる技術だ。

 つまるところ、トウヤ達のしていることは心理戦を織り交ぜた遅滞戦術である。
 これには、東アジアの湾岸港地帯、そこから船でのアメリカへの脱出や、宇宙港からの宇宙への脱出が最大目的とされている。
 既にアジア情勢が変えられないことは、物量の差から考えて明白であった。


●白いMS
 トウヤ達が戦っていたころ、当然他いくつもの戦場が存在していた。
 シンガポール方面からの連邦海軍による湾岸都市の奪取や、マドラス連邦軍基地からの追撃など、枚挙にいとまがない。
 これは、そんな戦場の一角である。

 聳え立つ木々。その中で、ユキはかつてない敵と対峙していた。機体性能もさることながら、それを扱う実力が確かにある。

「白い新型MS・・・!? くっ、強い!!」

―――RX-79[G] 陸戦型ガンダム―――
 RX-78ガンダムの余剰パーツを用いて作られた機体。
 陸戦に特化し、その性能は量産型の一線を遥かに超えている。紛れもない連邦の特別機である。
 敵は単機でありながら既に2機のザクを撃破、そして残るのは自分のグフだけ。背中に嫌な汗がにじんでくる。
 
「でも! それでも私は、ちゃんと帰るんだから!!」

 機体を整備する友人の顔が浮かんだ。
 歯を食いしばって前を見る。既に性能差は明らかであり、引けばその瞬間にやられる。
 ならばどうする? どうすれば打開できる?
 その答えはただ一つ。この上なく単純な解答。やるしかない。

(大尉、トウヤ、力を貸して!!)

 機体を横に飛ばして距離を取ると、90mmと左腕の75mmを連射。端から大したダメージになるとは思っていないし、敵の強固な装甲は既に承知している。やるならば、急所でも狙うしかない。
 だがそれは、この相手には至難の業である。

「たかが豆鉄砲。そんな玩具如きでこのガンダムは墜ちぬ!!」

 100mmマシンガンの牽制と、そして型シールドを弾避けに、こちらへと襲いくるそれ。
 装甲と機動力、何より腕に自信のある者の戦法。しかし、ユキも強引に距離を取る。木々が邪魔をして機体に負担がかかるが、今は忘れた。
 そして何度か逃げると素早く屈み、交互に放たれる90mmと75mm。
 煩わしい! 繰り返されるそれに相手のパイロットはそう判断したのだろう。こちらと同じく機体の負荷を無視し、一直線に飛び込んでくる。
 だが、それこそが狙いだった。
 突如、ガンダムの足元が爆発。これによってバランスを崩した。
 クラッカー。所謂、手りゅう弾だが、今回は相手の足元を狙った。相手からは見えない、無警戒だった下からの奇襲である。
 銃を交互にしたのも、機体を屈ませていたのも、弾を温存して銃弾を避け、粘るためではない。相手の動きを単調にさせ、こちらの意図を読ませない。そのための準備。
 そして何より、反撃の為にである。

「墜ちなさい!! 白いの!!」

 全速で近づき、振り下ろされるヒートロッド。しかし、ここで誤算が生じた。相手のリカバリーの早さである。
 胸部バルカン砲が吠え、脚部から取り出されたビームサーベルが木々の合間を奔る。
 並のパイロットならば、混乱によってまずやられていた状況。それをこの敵は乗り越えたのだ。

「大尉・・・トウ・・・ヤ・・・」

 腕が斬り裂かれて、至る所に銃痕が生まれる。そして無残にも崩れ落ちるグフ。 朦朧とする意識の中で、ユキは克明に記憶した。それを、確かに記憶した。右肩に記された、3本の交差した剣を。


 モノアイが光彩を失い、完全に倒れたグフを見下ろし、ジャン・ジャック・ジョンソン大尉は機体の足を進めた。
 厄介な相手ではあったが、あれだけ痛めつけたのだ。恐らくは生きてはいまい。これ以上は構うだけ時間の無駄だ。

「貧弱な機体で良くやったと言うべきか。だが、これくらいの損傷ならば問題あるまい」

 賞賛の言葉を口にすると、機体の足を前へと進めるジョンソン大尉。既に先程の戦闘など、彼は忘れ去さっていた。
 次の戦場へ。次の次の戦場へ。私がやらなくてはならないことは、山ほどあるのだ。 


 
―――次回、ジャブロー強襲―――



●今回の大雑把な結果
・ジオン
宇宙等から脱出するも、それなりの数がゲリラとして取り残される。
アプサラスⅡ並び、ギニアス直属の試験部隊の活躍。

・連邦
事実上のアジア奪還


今回の選択機体:MS-09ドム MS-07B グフ
当時の選択可能なジオンの機体(ただし、物によって、階級、記章などの制限あり)
・MS‐06J
・MS‐06S
・MS‐07B グフ
・MS‐07B-3 グフカスタム
・MS‐07H-8 グフ飛行試験型
・MS‐09  ドム
・MS‐09F/TROP ドム・トローペン
・アッガイ
・ズゴック
・ドップ



物凄く遅くなりました。第6回でございます。
今回、事実上の痛み分けで、引き分けということだそうです。
天秤は動かず、ジオン有利(機体の生産や兵数等に関係)とのこと。

でもって、とうとうトウヤが機体を乗り換え。
流石にザクだときついです。機体能力に限界があり過ぎるよ・・・。

さて、戦闘は混迷を極め、既に幾つかが史実とは異なる展開を見せております。
果たして、この先はどうなるのか? 更なる変化か? それとも、ただ単に史実をなぞるのか。

稚拙な文章で申し訳ありませんが、もしよろしければお付き合いくださいませ(ぺこり)

※尚、この回の結果は「ゲームギャザ 2000:9月号 vol.13(HOBBY JAPAN)」に収録されたものとなります。

読参~「機動戦士ガンダム 一年戦争史」~ 第5回 オデッサの風

2008年03月08日 | 読参小説(ガンダム 一年戦争史)
●月夜の終わりと日差しの始まり

 6機ものMSが、大地を震わせて突き進む。
 時は ルナツー作戦の頃より約2か月ほど経った頃。
 それは、大規模なオデッサ反攻作戦が展開されようとしている時期である。

「まだまだ先は長そうだ。トウヤ准尉、力を抜け。今、変に気を張る必要はない」
「諒解です、少佐殿・・・」

 抑揚のない声。それが部隊指揮官であるフェープ少佐へと返答される。それを聞き、少佐は胸の内でため息をついた。以前、地上でとある作戦を共にした彼は、トウヤが感情を表に出そうとしないことを知っている。しかし、今はその時以上だ。
 今回の作戦目的、それがトウヤを駆り立てているのが嫌が応にもわかる。
 彼らに下された命令。それは、独立特殊部隊によるレビル将軍への奇襲である。


 敵味方が入り混じっては乱れるルナツーの戦場。その中から帰還したトウヤには、為さねばならないことが幾つもあった。
 そして今、そのうちの最も過酷な義務をなさなければない。その時である。

「そん・・・な・・・嘘、ですよね・・・? 嘘、嘘・・・嘘だと言ってください!!? お願いだから・・・嘘と言って・・・」
 
 愕然とした様。それから更に段々と負へと転じていく感情。涙がこぼれ、その場所に崩れてしまった彼女へ、自分は何といえばいいのだろう。
 あの時交わした約束を果たすことができず、トウヤはただ拳を握りしめる。

「大尉、大尉・・・」
「・・・・・・すまない、ユキ」

 絞り出すように口に出せたのは、その一言。それ以上は、全て言い訳でしかない、そう感じた。


 あの時の苦すぎた出来事は、決して忘れることはないだろう。
 その後もユキとは何度も轡を並べたが、今はどうしているのやら。
 狭いコクピットの中で、トウヤはそんな事を考えていた。そして、頭を切り替えると、改めて機体データを見返した。
 今回の作戦のため、新しく支給された新機体。だが、果たして「新しい」と呼べるのかどうなのか…。

―――MS-06D デザートザク―――
 砂漠戦用に開発された、初期の地上専用機。
 今回は悪路の走破ということもあって駆動面での向上と、奇襲ということを考慮し、装甲の構造を変更、強化が施されている。
 武装には120mmと、戦車の砲塔を流用したマゼラトップ砲を備えさせた。これは、射撃が得意なトウヤの希望によるものだ。他のメンバーは、従来のザクバズーカや120mmを装備させている。
 
 しかし、この機体で果たして奇襲が可能なのか? その点においては疑問符が付くだろう。
 既にジオンは、新規の機体を幾つも開発、投入している。生産都合はあれど、それでも尚、今回のような作戦にこの機体を投入する理由は見当たらない。
 ならば、浮かぶものは2つ。ただの捨て石か、或いは囮か・・・。もし、本気で狙おうと考えるのなら、それは酔狂というものだろう。
 だが、トウヤにとってそんなことはどうだっていい。
 これは、与えられたチャンスなのだ。名実ともに連邦の象徴であるレビル。それを自分が討つ。それが実行できるのならば、何一つ不都合なことはないではないか。

(大尉、行きます。俺が、この手で、必ず・・・ッ!)


●戦場前の。

(トウヤ・・・今頃、どうしてるんだろう)

 幾つものMSが立ち並ぶ格納庫。その中で、思わず溜め息が出てしまう。
 ルナツー後も幾つかの戦場を共に回ったが、特別部隊の一人として彼は引き抜かれた。詳しいことは機密なので分からない。

(生きていて欲しい。大尉の時みたいなのは、もういやだよ・・・)

 ルナツー戦以降、トウヤは変わった。以前は若干取っ付きにくい程度の印象があったが、あの戦場を超えると、殆んど感情を投げ捨てたかのようになってしまった。
 そしてもう一つ。それは、率先して危険な任務を行っていったという事実。絶えず仲間の盾となり、誰よりも武器として動く。任務遂行のためには命など顧みない。
 それ故の高い戦果。一時は上官殺しと誹謗もされたが、それすら行動でねじふせた。引き抜かれたのも当然とも思える。
 しかし、それだけにユキは彼が心配でならなかった。

「…尉・・・准尉? 聞こえていますか?」
「えっ!? なんでしょうか?」
「もう、しっかりしてくださいよ。恋人のことで頭がいっぱいなんですか?」
「っ!? わ、私に恋人なんかいません!? ラサ曹長、ふざけてると怒るわよ!」
「はいはい・・・全く、こんな時でもそうやってられる准尉は肝が据わっているというか・・・」

 新しく配置された部隊。そこで知り合った同年代の整備兵、ラサ曹長が軽口をたたくと、すぐさまユキ准尉が口をとがらせて反論する。
 そんな慌てている准尉にさせて互いの緊張を紛らわせるのは、彼女なりの楽しみでもあった。

「折角新しいのが回ってきたんですし、壊さないようにしませんとね。以前のは、酷いぼろぼろというか・・・」

 やれやれと言わんばかりに肩をすくめる曹長。そして彼女は、回された機体に目を移した。

―――MS-07B グフ―――
 陸戦、そして格闘戦に特化させた青い機体。電磁鞭と5連装75mmマシンガンを標準装備。
 従来のザクよりも汎用性は低下しているが、それでもその性能はJ型の比ではない。
 オデッサ防衛の一環として支給された機体である。

「そうね。パイロットとしては、愛機が壊れるのは忍びないもの。でも、誰かを守れるのなら、別にいいかな」
「整備班をあんまり泣かせないで下さいよ~。無茶な使い方は程々に・・・」
「分かってるわよ。ちゃんと、戻ってくるつもりなんだから」

 沈んだ表情はもうない。良かった、いつもの明るい准尉だ。
 ちゃんと帰ってきてくださいよ? まだまだからかい足りないんですからね。


●ガードナー

 爆音。同時に地面が抉られ、そして1体のデザートザクが吹き飛ばされる。
 不意打ち気味に行われたそれに、フェープ少佐はすぐさま散開の命令を下すと、敵の射撃方向を確認する。

―――RGM-79(G) 陸戦型ジム―――
 並のジムとは異なり、頑強なルナチタニウム装甲を使用した陸戦特化のMS。
 3体で現れたそれは、内2体が180mmを装備している。
 
 護衛か、探索か。いずれにせよ厄介極まりない。オマケに、敵の攻撃地点はかなり距離がある。
 マシンガンにバズーカ。汎用性の高い武器を揃えたのが災いした。こちらもすぐに応戦するが、命中は期待できない。確実に当てるならばもっと近づかなければ。そしてそれは、相手がまず許さないだろう。
 更に一機のザクが破壊される。少佐は舌打ちをするも、突撃の命を下そうとした。
 相手のジムが崩れ落ちたのは、まさにその時であった。

「行ってください・・・この中で残るのは自分が適任です」


●示されたものへの敬意

 敵は3体。砲炎から見て、2体が長射程武器・・・こちらでそれに対応できるのは自分だけ、か。
 結論はすでに出ている。くそっ! クソ野郎!! この手で叩き潰したかったが、状況が許さないのかよ!!
 ああ、そうだ。あの人は仲間のために戦った。そして自分は、あの人の部下であり、大事なことを教わった。だから、だからこそ!!

「行ってください・・・この中で残るのは自分が適任です」

 長射程のマゼラ砲が更に火を噴く。先ほどとは違い、今度は当たらない。
 流石にもう油断等はしていない、か。

「何を馬鹿な。第一、准尉。君はその手で・・・」
 
 淡々としたトウヤの言葉に驚きつつも、少佐は冷静な声で彼に問う。
 今回の作戦に入れ込む理由、それをフェープ少佐は既にトウヤから聞いている。自分のために犠牲となった上官の敵討ちだと。そして、それにどれ程の押し殺した感情を込めているのかも。

「レビルの首を取る!! その想いは今でも変わっていません!! 
 ですが、仲間を見捨ててそれは絶対にありえません!! そして、この場で対処できるのは自分だけです!! 行ってください!!」

 もはや一刻の猶予もない。この場に居続ければ、増援が来る可能性もありうる。
 少佐は歯噛みするも、自分の任務を天秤に掛ける。何が最適で、何が最悪か。そして、何を優先するべきかを・・・。

「・・・分かった。残りの連中は私に続け!! 准尉の意地を無駄にするな!!」

 早口に激を飛ばす少佐。そしてもう一つの命令を口にした。

「死ぬことは許さんぞ! 危険と判断したらすぐに引け!!」
「・・・諒解!! フェープ少佐!!」
 
 少佐の命令が聞こえ、トウヤは僅かに目を開き、そして口元を歪ませる。
 当たることがないであろう援護射撃を放ちつつ、残った3機は更に足を進めていく。
 そして、それを見て相手の一機が前に突出して来た。2対1の状況。援護を受け、どうやら一気に潰す気らしい。
 
「いいだろう。相手をしてやる」

 援護をかわしつつ、残弾を向かってくる陸ジムに叩きこむ。一撃では崩れないが、それなりの被害が入った。
 次に重いマゼラ砲を投棄。120mmに切り替えると、機体を左右にぶらしながら、ひたすらに限界ぎりぎりの高機動を行う。急激なGに身体が悲鳴を発しているのが分かる。が、今は嫌が応でも聞かせてやる。
 後衛の180mmと、前衛の100mmマシンガン。それらが自機を襲う。幾つもの砲火が向けられ、けたたましい音が周囲を覆った。濛々と土砂が舞い上がり、周囲が茶の色に染められた。
 だが、当たらない。当たっても、致命傷は確実に避けている。そして、ダメージ軽減には、強化装甲も一役買っていた。

「こんなもんじゃない。ルウムもルナツーも!! この程度じゃなかったんだよ!!」

 ショルダーシールドを盾に、勢いのまま前衛を吹き飛ばすと、立ち直る前にコクピットへと弾を叩き込む。
 そして120mmを連射。ライン上に撃ち、土煙を隠れ蓑にしつつ、トウヤは残りのもう一機へと襲いかかった。
 結果は、既に付いているようなものだった・・・。

 3機のジム、その全てを撃破。だが、ここで状況が変わる。周囲に敵の増援が見受けられた。
 しかし、焦りはない。足元に転がっているジムの180mmを手に、トウヤは笑う。さも、当然のように。
 
「ありがたいね! こっちにくる分だけ、任務成功率が上がるんだからな!!」

 戦いは、まだ終わらない・・・。



―――――――――――――――――――――――――――――


 
 真っ暗な操縦室の中で、うっすらと意識が開かれる。どうやら気絶していたらしい。コンピュータを見るも、機体はボロボロ。損傷具合から撃破されたと見ていい。

「う・・・作戦は・・・どう、なった・・・」

 作戦の有無、次によく助かったものだと思うも、更に別のことが浮かぶ。
 どれだけ時間が経ったのだろう? そして、何故捕虜などにはならずに? 
 幾つかの疑問がよぎるが、まずは外へ・・・。
 そこに、一つの答えがあった。
 
 「こ、これは・・・っ!?」
 
 物言わぬ愛機を這い出て見た最初の光景。それは、あまりにも異形だった。
 解き放たれてはいけない力。
 中世紀の時代、2度、実際に使われ、そして多くの人を焼いた焔。
 幾つもの茸状に膨れた紅蓮と煙。それによって吹き荒れるオデッサの風は、戦慄と禍々しさを孕み、存分に数多の地獄を創りあげていた。
 南極条約によって禁止された兵器。「核」が使われたのだ。


●少女、戦い中

 電磁鞭が回路を焼き、崩れた機体に90mmマシンガンが打ち込まれる。
 残ったジムから銃口が向けられたが、それは弾をばらまく前に僚機によって潰された。
 ユキ准尉が巨大な雲を見ることになったのは、そんな戦争のまっただ中の時であった。

「核爆発・・・!? そんな!? ・・・うっ!? けほけほ・・・なに、この感覚!? 
 くっ・・・戦況は、一体どうなっているの!?」

 目の前で起きた光景に、吐き気のような感覚が沸いてくる。
 よくわからないそれを打ち払いつつ、ユキは僚機へとすぐさま確認を取る。そして、運よく答えは帰ってきた。

「准尉、作戦に変更が出たぞ。連邦が混乱しているうちに、全軍後退とのお達しだ。俺たちは、アジア方面へと移動する。
 しかし・・・全く、司令官殿はとんでもない物を持ち出しやがる! くそが!!」

 同僚のさも嫌そうな声を聞き、頭の中で同意する。
 目的のためには手段を選ばない。それが唯一のルールになるのならば、一時の勝利が戦争全ての敗北になりかねない。
 果たして、司令官殿はそのことを理解しているのだろうか。

「諒解です。・・・ん、もうちょっと頑張って。私のグフ」

 頭を振り、すぐに切り替え。どうするのかを考えなくては。
 そしてこの先、機体をさらに酷使するであろうことに対し、曹長の言葉がよぎる。
 またなんか言われちゃうなぁ・・・。でも、ちゃんと帰るって言った以上、その約束は守ってみせないとね!


●つわものどもがゆめのあと

 オデッサはジオンの敗北で幕を閉じた。しかし、まだこれが終わりというわけではない。
 あの後、トウヤはどうにか友軍に拾われアジア方面へと逃れた。それはある意味奇跡と言ってもよく、またこれから先も続くであろう戦争を考慮するならば、不幸ともいえるのだろう。
 しかし、トウヤ自身はそれを不幸だとは思わない。それは自分が為すべき義務だと考え、そして戦う。
 アジアへと逃れた際、一つの話を聞いてその気持ちは更に強固なものへと変わった。
 オデッサ反攻作戦、その中の一角。交戦中のとあるビッグトレーを中破させたという話だ。そしてそれは、壊れかけた2機のザクが護衛を振り切り、相討ち的に行ったのだという。 
 そしてもう一つ。オデッサ陥落後の一時期、レビル将軍が公の場に見られなかったという噂だ。
 確かな証拠はない。あるのは状況だけで、偶然なのかもしれない。
 しかし、トウヤは確信する。それは、紛れもなくフェープ少佐達だと。確かにその刃は届いたのだと。

(戦争は終わらない。だが、俺は生きている。ならば、何度でも戦うだけだ・・・何度でも! 何度でも!!)

 表面を覆う押し殺した感情。だが、胸の内では危うい程に滾るそれ。
 消えることのない意思を胸に、次の戦場へ、次の次の戦場へと、トウヤは目を向けさせた。
 

●今回の大雑把な結果
・ジオン
オデッサを墜とされるも、連邦に痛烈な打撃を与えることに成功。
このため、戦局は油断できずも、天秤はジオン側に有利となる。
(これの有利不利によって兵器開発・兵量などに影響あり)

・連邦
オデッサの奪還に成功。ただし、総数で約3:1だったので、勝てて当たり前とのこと。
レビル、負傷。
マ・クベの核が3,4発ほど実際に使用される。
エルランの裏切り発生。これの捕獲に失敗。


今回の選択機体:MS-06D、MS-07B
当時の選択可能なジオンの機体(ただし、物によって、階級、記章などの制限あり)
・MS-06K(ザクキャノン)
・MS-06S
・MS-06V(ザクタンク)
・MS-07B(グフ)
・MS-09 (ドム)
・ズゴック
・アッガイ
・ドップ
・マゼラアタック



 はい。かなり遅くなりましたが、オデッサ作戦をお送りいたしました。
 さて、今回、トウヤは極めて変な部隊におりましたが、これはユキギリの創作ではなく、「特殊返信」によるものです。
 この特殊返信ですが、結構貴重だったのか、読参時にお世話になったまとめサイト様にも載っておりませんでした。
 以下、原文になります。



★作戦終了後、母艦に帰投した君は上官に呼び出しを受けた。
辞令によるとオデッサ方面に配属され、新型機で編成される独立部隊に編入されるらしい。
「装甲を強化したザクの改良型を支給する。貴様はこれでレビルの横腹を突くのだ。戦果を期待している」
-撃破されるまで、“デザートザク”に搭乗できる。
データ/MS-06Dザク砂漠戦仕様(地上専用)。装備はザクシリーズのものを使用。
今回“部隊欄”赤で[奇襲]と記入の事



 ・・・初めての特殊返信でしたので、当時は嬉しいと思ったものですが、今見るとデザートザクはねぇだろと小一時間。
 もうドムも実装されてるんですよ? せめて奇襲部隊らしく、飛行型グフとかよこせよ!!(核)
 とまあ、劇中で捨て石だの何だのと言った理由はお分かりになられたと思います。
 また、微妙にカスタムされていた理由ですが、特殊返信に即してそれっぽいものを追加させていただきました。 
 「装甲を強化」とありましたしね。

 尚、今回トウヤが機体をやられておりましたが、これは返信で機体破壊判定を食らったことになります。
 また、劇中に描かれているビッグトレーとレビルの件は、ゲームギャザ本誌で実際に中破・負傷の描写のあった事を合わせてになります。
 それも含めまして妄想を重ね、こういう形になった次第です。
 ・・・しかし、初の機体破壊が特殊返信によるというのも実にアレですね(ぁー)
 
 次回はアジアとなります。
 天秤的にはジオン有利となりましたが、依然予断を許さない状況です。さて、結果は如何に?

※尚、この回の結果は「ゲームギャザ 2000:7月号 vol.11(HOBBY JAPAN)」に収録されたものとなります。

読参~「機動戦士ガンダム 一年戦争史」~第4回 月の兎

2008年02月14日 | 読参小説(ガンダム 一年戦争史)
●痛み止めの休息
「全く・・・傷の具合は大丈夫か、ドジ娘」
「あはははは・・・面目ないです」

 困ったような口調の大尉に、ユキはしゅんと肩を落とす。
 先の中東作戦。それは、小隊にとって順調に進んでいた。そう、途中までは。
 作戦半ば、小隊は思わぬ連邦の反撃にあってしまった。
 これによりユキの機体は中破。幸い当たりどころが良かったのと、カトゥー大尉とトウヤが即座に敵へ対処したため、どうにか負傷で済んだ。そして、今の今まで療養していたのだ。

「大人しくしてろ・・・といいたいが、ジオンは人材不足だ。すまねぇが、今回は負傷をおしてでも出てもらうぞ。
 ただし、お嬢ちゃんは死なせねぇ。前みたいにな。だから、安心しとけ」
「大尉の言うとおりだ。そこは、きっちりな」

 大尉の後を、トウヤが継ぐ。
 しかし、それがまずかったらしい。大尉はおかしそうに口元を隠した。

「このまんまじゃ、またひよっこが慌てかねねぇしな。お嬢ちゃんは気絶しててしらねぇだろうが、ひよっこはかなり慌ててたぜ?
 まあ、あれはあれで面白かったんだが」
「大尉!? それはあれほど仰らないでと!?」
「堅いこと言いなさんな。仲間同士なんだしよ」

 慌てるトウヤにユキは目を丸くした。普段はそこそこの話程度しかしないトウヤが、自分を心配してくれているのが意外だった。
 カラカラ笑う大尉。そしてそれに顔を赤くして反論するトウヤ。気易い空気がとても心地よく感じられる。

「分かりました。私は大丈夫です」
「ふん、いい笑顔だ。頼むぜ、曹長」
「・・・え?」
「言ってなかったな。中東でのことで、お嬢ちゃんとひよっこは昇進している。二人とも曹長だ。早くおぢさんを楽にしてくれるとありがたいねぇ」
「まだそんな年齢でもないでしょうに。 ・・・確かに少々老けてはいますが」
「んだとぉ!? けつに殻がまだひっ付いてるひよっこに、このNice男児の良さがわかってたまるかぃ!!」
「・・・大尉。それ、言葉が成立してませんよ。それに、自分はもうひよっこでは・・・」
「バーロー! まだひよっこで十分よ!!」

 目の前で繰り広げられる漫才じみたやりとり。
 おかしいと同時に、だんだん恥ずかしくなってくる。

「もう、二人とも。ここ、病院なのに・・・」

 顔を伏せてぽつりとつぶやく。
 赤らめるのは、今度はユキの番であった。

●準備期間

 喉と舌で精いっぱい味わった後、口元をぬぐう。安酒を片手に、大尉は実に陽気だ。そんな大尉の側に、トウヤが控えている。一人じゃつまんねぇよ、と引っ張られたらしい。酒をあまり飲まないトウヤには、少々迷惑であった。

「ユキは問題なさそうですね・・・よかった」
「なんだ? 案外、手が速かったんだな」
「な!? 何をおっしゃるんですか!? 自分は仲間として・・・っ!?」

 ええい、このおっさんは・・・。
 頭の中で毒づきつつも、酒の飲みあいなのだからと、予てから気になることを口にする。

「大尉、酒の席の戯言とお聞きください。
 大尉はその階級の高さでありながら、しかるべき部隊がいません。もっと上の扱いをされてもいいはずなのに・・・」

 しばしの沈黙・・・しかし、カトゥー大尉は笑う。そう、いつものように。

「・・・ふん。そいつは野暮ってもんだぜ。まあ、ザビ家様の覚えがおよろしくねぇと色々とあるってことよ」
「・・・大尉、あなたは・・・」
「俺たちは所詮一兵卒よ。出来ることは限られている。だがな、駒じゃねぇ。自分の意思で戦っている。
 そしてそれは、仲間がいるからこそ出来るんだ。分かるな?」
「・・・はい、それは理解しております」
「仲間を大事にしろ。MSパイロットったって、それを作る者、輸送する者、整備する者・・・他にも様々な連中がいて初めて動かせるもんだ。特別ってわけじゃねぇ。パイロットに限らず、自分が特別だと浮かれて、分かってねぇ連中が多過ぎるがな」
「大尉・・・?」
「世の中、自分一人じゃ何もできねぇってことさ。飲み過ぎちったかな・・・ほら、行くぜ? 酒が切れちまった」
「諒解。お供します」

 まだまだ飲むことになりそうだ。これから先のことを覚悟しつつ、足を外へ向ける。
 夜は、長い。


●第2の月に兎はいるか
 今回の目的は、ルナツーの偵察と破壊工作、この2点になる
 最近、新型の戦艦が入港したらしい。それも含めての偵察だそうだ。
 噂によると、かの赤い彗星や、悪名高い海兵隊も動いているとか・・・いずれにせよ、激戦になることはまず間違いないだろう。

「凄いな・・・」

 不意に言葉が口から洩れる。
 遠目からでも凄まじいまでの弾幕が窺える。まさに、ハリネズミの如し。もしかすると、かつてのルウムの時よりも恐ろしいのかもしれない。
 腐っても連邦拠点ということか・・・トウヤは更に気を引き締める。

『いいか、ひよっこども!? まずは敵を潰しつつ、対空砲火を黙らす。
 それから突っ込んで連邦の情報収集と破壊だ。実に単純よ! 行くぜぇ!!』
『了解!!』
『諒解です、大尉!!』

 大尉は特殊チューンを施した06Sを、トウヤとユキは06Fを吹かし、今まさに戦線へと突入する。
 魔女の窯底ですら生温い、その場所へと。


●月下乱舞
「煩わしい! 邪魔だ!!」

 先程から幾度となく向かってくるトリアーエズとセイバーフィッシュ達。今も1部隊を潰したところだ。
 幾つかの防衛網を抜き、これらを蹴散らしつつも、一向に減る気配がない。自然と息が荒くなる。
 連邦は、この岩の塊にどれだけの力を蓄えているのだろうか?

『ユキ曹長、援護を頼む!!』
『は、はい!?』

 トウヤの通信にユキ機からの援護の弾幕が張られるも、ばら撒かれるそれから1機が逃れる。
 闇夜の嵐をくぐり抜けたそれはユキへと牙を剥いた。幾つかのミサイルが放たれ、損傷を与えていく。

『下がれ、ユキ!』
『くっ!? 当たりなさい!』

 やるかやられるか、それが戦場の習い。肩のシールドでダメージを減少させると、ユキは自力で敵機を破壊した。
 対MSミサイルではなかったことが幸いし、損傷はそれほど酷くはない。だが、彼女の動きはやはりぎこちのないものである。
 やはり怪我が大きいか・・・。大尉はここで一つの判断を下した。

『潮時だな・・・お嬢ちゃん、引け! ここの時点なら、まだ安全ラインだ』
『大尉!? で、ですが、私はまだ戦えます!!』
『足手纏いだってんだよ!! 死なせねぇってことは、引き際を見極められるってことだ!! それとも、俺に部下殺しをさせる気か!?』
『ユキ、戦争はまだ長引く。無理をする必要はない。お前は怪我を押して十分戦った。恥じることじゃない』

 カトゥー大尉にトウヤ曹長、そのどちらもが仲間への想いで来ている。
 悔しさで下唇を噛むも、ユキは素直にそれに従った。

『・・・わかりました。でも! でも、無理はしないで・・・』
『はっ! 誰に物を言ってやがる!』
『ああ、諒解した』

 駆けていく2機の機影。
 後ろ髪を引かれる思いを胸に、ユキは前線を離脱していくしかなかった。


●痛みの中で
 完全な乱戦。敵味方が入り混じり、安全な場所などあるはずもない。
 帰還途中、母艦を目指してどうにかやり過ごしてきたが、ボール部隊が自機に狙いを定めている。
 回避行動を!? 手持ちの武器で牽制を行いつつ、機体のスロットルに力を入れる。
 ずきり、途端、無理な機動で傷が疼いた。痛みの感覚が一瞬、集中力を奪う。だが、戦場のそれは刹那の時で決まってしまう。
 一瞬! その一瞬の最中! 機体内に大嫌いなロックの警告音が鳴り響く。
 や、やられる!? 動悸が激しくなると同時に、ユキは一つの覚悟を強いられた。
 しかし・・・。

『アハハハハハハッ!! ぼやっとしてんじゃないよ!! 死にたいのかい!』

 嘲笑染みた声が駆け巡る。それは、特別な彩色を施されたザクからのものだ。

―――MS-06R-1M 高機動型ザクⅡ 海兵隊仕様―――
 高機動型ザクⅡに、更に軽量化を施した海兵隊専用の特別機。

 その声の主・・・それは、紛れもない海兵隊の長。女傑と恐れられるシーマ・ガラハウ中佐、その人である。
 中佐率いる海兵隊は、特別仕様の90mmマシンガンを持って瞬く間に周囲の敵を破壊し尽くした。
 そして用がないとばかりに消え去っていく。あとに残るはただの残骸と、呆然とするユキだけだ。

 あんな・・・女性もいるの!? 今まで見たこともないタイプの存在に、ユキは目を丸くする。
 だが、理由はどうあれ、自分は彼女によって助けられた。
 胸のざわめきを感じつつも、ユキは彼女へと感謝すると、背中に滲む汗を意識せずにはいられなかった。

「あれが、海兵隊の長の実力・・・」

●内にあるもの
 目の前にいくつもの光がを尾を引いて走る。それは新式のMAビグロ、そしてその前身であるザクレロのメガ粒子砲。
 幾重もの光線がルナツーへと向けられ、爆ぜるごとに確実に対空砲火が沈黙していく。

 ありがたい! 口の端を歪ませつつ、トウヤと大尉の機体はルナ2へと取りつこうとする。だが、敵もさる者。早々、楽には行かせてくれないらしい。
 地上でやり合った事のあるタンクもどき。それが移動砲台として砲火を向けてくる。

「連邦がぁ!! 宇宙で戦車を使うなああああぁぁぁぁ!!!!!!」

 機体を旋回しつつ、回避。そして同時にバズーカを打ち込む。敵の性能は、以前の時で理解している。打ち出されたそれ、ただの一撃で弾けてしまった。

『ひよっこ! ハッチの一つをぶち壊した! 突入するぞ!』
『諒解!』

 言うや、内部へと突入する二人。
 狭いルナツーの内部でトリアーエズをマシンガンで蹴散らし、大尉がアンカーを飛ばすボールを2丁のヒートホークで切り裂く。どうやらまだまだ敵の機体がいるらしい。

『厄介なことですね。弾が足りるのか・・・』
『足らすんだ。施設の破壊もある。無駄遣いすんじゃねぇぞ』

 そう言ってシュツルムファウストを構える大尉。
 2機のザクに閃光と爆発が奔ったのは、その時だった。
 これによりカトゥー機はマシンガンごと片腕を。トウヤ機は右肩をロストする。
 二人は目の前のそれらに焦りが浮かんだ。そこには、4体ものMSがいる。3機もの鹵獲型ザクと、内一機は、見たこともない機体。それは、紛れもなく連邦の新型MSであった。

―――RGM-79 実験型ジム―――
 ルナツーのMS工場にて製造された、連邦の新型MS。ただし、先行量産型ですらない、極めて実験的な機体。
 小さな銃を持ち、その大盾には、交差した3本の剣のマークが施されていた。

 今、まさに自覚しなくてはならない。その最優先事項は、非常事態であるということだ。
 先の先制により、戦いの勢いは完全に向こうにある。加えて、彼我の数と場所の両方。最早すべきことは決まった。迅速なる撤退である。
 そしてそれをするには…。

『・・・俺が盾になる。その隙に引け!』
『な、何を馬鹿な事を!?』

 大尉が即座にシュツルムファウストが放つ。正面のザクが後続を巻き込み、そこにトウヤが左腕のマシンガンで1機のザクに止めをさす。
 それと同時に、既に大尉の機体はヒートホークで切り込んでいた。灼熱の斧が、敵の大盾を焼き斬っていく。
 しかし、ここは敵の基地内部である。何時増援が来るとも知れない・・・。

『連邦の新型MSを確認! こいつに関する情報を持ち帰るのは任務!! そして仲間を守ることが俺の役目だ!!』
『ですが、大尉!!』

 更に閃光! ビームスプレーガンがトウヤの銃器を掠め、装甲を焼いた。武装は最早、何も無い。
 当ててきたそれは、どうやら隊長機らしい。くそっ、これが連邦のMSか!!

『仲間がいるからこそだと教えたはずだ!! この情報には仲間を救える価値がある! 行け! トウヤぁっ!!』
『くっ!! 了解!!!』

 やるせない思いに歯噛みしつつも、直ちに引き返すトウヤ。
 残りのザクたちが120mmと180mmバズを構えようとするも、大尉の機体がその隙を与えない。

『させねぇよ・・・。俺が馬鹿して仲間を死なせるのは、もう嫌なんでね!』
『だから自分が捨て駒に、か? 大した覚悟だ・・・スペースノイドにしておくには惜しいな。名を聞こう』

 その隊長機は、部下を下げて高らかに言葉を放つ。戦場ではなく、まるで舞台の一角の如く。

『俺はカトゥー・トン大尉! 地球だ宇宙だ、そんな変なカテゴリーなど、どうでもいいんだよぉ!!』
『私はジャン・ジャック・ジョンソン大尉。通称、J3だ。見知りおけ!!』

 いうや、J3は大盾を前に出しての突進。カトゥーも斧を握りしめて駆ける。
 火器のない今、近接で戦うしかない。そして近接なら俺に分がある!

「撃たせねぇぞ!! 悪いがなぁ!!」

 振り下ろされるヒートホーク。真空の世界に光が走り、幾度もの斬撃で盾が溶けていく。
 しかし、敵は甘くはなかった。大盾が焼かれる中、J3は一つの脆計を行う。
 死角からの攻撃。盾超しのビームサーベルが、瞬時に06Sを貫いた。

『貴様の技量、こうでもしなければ勝てんのでな。これが最大の敬意と思え』

 警告音が鳴る中で、ふと、大尉は自分の斧へと目をやった。そして笑う。いつもの様に。
 それが、負け惜しみであることも理解して。

『ふん・・・片腕をやられちまった時点で、俺のツキはなくなってたか・・・だが、無駄じゃねえ。トウヤが、きっと・・・』

 通信は、そこで途切れた・・・。




 大尉が盾となったこともあり、からくもルナ2を脱出するトウヤ。
 ルナツー防衛網の突破。対空砲火の嵐。そして内部での戦闘と、既に愛機は満身創痍である。
 しかし、何としてでもこの情報を持ち帰らなければならない。機体に最大限の火をいれ、母艦へと向かわせる。

「・・・しょう・・・畜生! 畜生!! 畜生ぉぉおぉおおおおお!!!!!」

 コクピットの叫びは、決して外へはこだましない。
 ただただ、あの人を救えなかった無念と未熟さ。そして、あのマークの入った敵への怒り。
 それらが収束されては吐き出され、何時止むとも知れなかった。



―――次回、オデッサ作戦―――



●今回の大雑把な結果
・ジオン
施設破壊と偵察など、おおよその目的を達成。

・連邦
MS工場等は防衛。
ホワイトベース、損傷するも地球へ降下。

今回の選択機体:MS-06F
当時の選択可能なジオンの機体(ただし、物によって、階級、記章などの制限あり)
・MS-05B(旧ザク)
・MS-06A
・MS-06C (耐核仕様ザク)
・MS-06F
・MS-06S
・MS-06R-1A 高機動型ザクⅡ
・MS-06R-1M 高機動型ザクⅡ 海兵隊仕様
・ビグロ
・ジッコ
・ガトル


・キャラ紹介
ユキ・イザヨイ
16歳の女の子。学徒動員でもないのに若すぎ(爆)
少しドジだけど明るい良い子。今回のことで、果たして彼女はどうなるのか・・・。



 はい、ルナツー戦をお送りしました。
 結果としては、双方の痛み分けということになりますね。豪州を完全に守り切った分だけ、連邦有利となっています。
 で、今回のガンタンク・・・要は前回にも出ていたやつですが、連邦サイドですと、宇宙で選択できました。まぢで勘弁してください(爆)
 トウヤのあの叫びは、ある意味ユキギリの代弁みたいなものです。そういえば、似たようなセリフがVガンダムにもありましたっけ(苦笑)

 尚、今回出てきたジムですが、読参では出てきておりません。読参と連動したゲームギャザの小説に、ジムの工場がちらりと出ていたので、それを膨らませて出してみました。
 「何機かは実験用に組まれてるのでは?」+「危機の際には使えるものは何でも使う」で、こういうのもありかなぁ、と・・・。

 しっかし、PCのMSを含めて軽く1000機以上参戦してるっぽいのですが、これで墜ちないルナ2はどんだけだと。
 史実のルウム戦役の際のジオンのMS投入数が約3000(ウィキペディア調べ)とあるので、どれだけ堅牢なのかお分かりになると思います。 
 まあ、撃墜制限があるし、これも仕方ないのかも・・・(はふぅ) 


 それと今更ながらにですみませんが、ハガキの返信結果等は細かくはリプレイに反映させてはおりません。
 戦果が大きかった際には相応の。逆に、低かった場合は低い活躍となっております。
 というのも、先に述べた撃墜数制限があり、トップの人でさえ最大撃墜数が「8機」ですので、文字通りお話にならないんですよorz
 ただ、負傷などは反映させております。今回のユキがそうですね。能力値が幾つかマイナス修正食らっとりました。

 で、次回はオデッサになります。ええ、マの人やレビルが激突するあの戦場です。
 うおおおおお、今考えると展開早いよー!!\(゜ロ\)(/ロ゜)/


※尚、この回の結果は「ゲームギャザ 2000:5月号 vol.9(HOBBY JAPAN)」に収録されたものとなります。

読参~「機動戦士ガンダム 一年戦争史」~第3回 重力下の戦争

2008年02月04日 | 読参小説(ガンダム 一年戦争史)
●戦場前の斜めな時間
 強い日差しが降り注ぎ、灼熱の大地は砂塵を巻き起こす。
 地上に降りて以来、もう幾日か経つ。今、トウヤがいるのは、アフリカの大地である。
 次の攻撃目標は中東方面。そこを奪取し、アジア方面への布石とするのが目的だ。

「慣れねぇなぁ・・・この重力てのはよ」
「贅沢はなしですよ、大尉。とはいえ、それには自分も賛成ですが」

 先の降下作戦での活躍により、カトゥー・トン中尉は大尉に。そして、トウヤ伍長は軍曹へと昇進していた。
 そしてそれに伴い、トウヤは新たな機体へと乗り換えるよう辞令を受ける。
 受領した機体はMS-06J。地上専用に特化させたザクである。

「自分としては、この重力よりも気温や塵等の方が気になりますね。どうしてこう不便なのやら」

 スペースコロニーには、極端な寒暖差などまずない。何故なら、それは不要だからだ。また、エネルギー効率の点からでも無駄なだけである。
整い過ぎた環境に慣れ親しんだスペースノイドのトウヤには、自然のそれは、偉大というよりも、ただの乱雑極まりないものに映って見える。
 しかし、それがはるか昔から住んでいた人間の当然の環境だと思うと、何とも奇妙な感覚に落ちいってしまう。
 他の仲間たちもそうなのだろうか?

「で、だ・・・今回のことだが、何やら厄介なものが敵さんにも出始めているらしい。
 俺たちはそれと闘わなきゃならねぇらしい。ふん、面倒なこった」
「・・・成る程、一筋縄ではいかない、ということですね」

 意図的に言葉を伏せるカトゥー大尉。
 MSで厄介なものと対峙する。そこから先のことは、トウヤも口にすることはできなかった。
 それを口にするのは憚られる、そう思えた。しかし・・・。

「それ、どういうことですか?」

 場違いな明るい声が響く。
 この度、大尉のもとに配属されたユキ・イザヨイ軍曹である。
 明るい笑顔にショートカットの黒髪が、学校出たての少女といった様を一層強くしている。軍曹という言葉がこの上なく似合わない。

 とりあえず、トウヤとカトゥーは胸の内で思った。
『空気読んでくれ』と・・・。



●荒廃大地
(砂漠というのは不便極まりない・・・・よくもこんなところまで住めるものだ)

 砂に機体の足を囚われ思わず愚痴がこぼれる。
 不便なのは降りて以来感じていたが、行軍となると更に実感する。
 中には頓挫して行軍不可の部隊も出ているという。処罰ものだろうが、それもいたしかたないという気もする。

『ただし、そんな間抜けにはなりたくないけどな』
『うぁ、それってあたしへの皮肉ですか?』

 どうやら声が漏れていたらしい。
 既に先程頓挫しかけたユキは、トウヤへと口をとがらせる。
 この子は偶に感がいいときがある。これもその一環か。トウヤは苦笑すると、彼女に対して素直に詫びた。

『そんな気はなかったんだ。しかし、そう聞こえたのならすまなかった』
『・・・くすっ、いいですよ。素直に謝ってくれましたし』
『ったく、ひよっこ同士、仲がいいねぇ。おぢさんも混ぜてくれ』
『ッ!!? な、何をおっしゃるんですか、大尉!?』

 慌てるトウヤに大尉は相も変わらず気安そうに笑う。
 戦場でも笑っていられる。それはまだ余裕があるということだ。
 願わくば、このまま行きたいねぇ・・・小隊の指揮官は、そんな風に思う。



●砂塵の向こうに
 小隊は足を進ませる。
 既に何度か61式戦車やセイバーフィッシュなどと接触していたが、別段問題もなくこれを撃破していた。
 しかし、それも状況が変わった。
 モニターに映る3機の巨大な人工物、それの存在により。
 大尉が話していた厄介な物、あれがそうなのだろうか? 戦車にMSの上半身をくっつけた、不細工な格好だ。

――――RX-75 ガンタンク先行量産型―――――
 連邦がこのたび、防衛用へと急遽持ち出した射撃特化のMS。
 4連ランチャーと対空砲等を装備した、戦車の延長ともいうべき機体である。

 しかし、その横にある存在。連邦の戦車もどきよりも、それから与えられた衝撃の方が遥かに大きい。
 あれは・・・ザク!? 間違いない。その肩と巨大な盾には、連邦のマークがしっかりと刻まれている。

「鹵獲機・・・しかも、2機だと!? しかし、それを用いるなど・・・」

 時期が経ったとはいえ、未だMS:ザクは研究されていてもおかしくはない。それだけMS開発には差が付いている。
 研究サンプルは多いに越したことはないのだ
 それを戦線へと投入する。つまりそれは『活用可能なぐらいに鹵獲した』と見るべきだろう。

「・・・・・・どこぞで大負けしたみたいだな。くそっ!」

―――RMS-79(J) 鹵獲型ザク―――
 先のオーストラリア降下作戦での失敗により、連邦軍が手にした機体である。
 砂漠戦を意識したであろうそれは、大盾にザクマシンガン。そして砂漠用のカラーリングが施されていた。

 砂だらけの大地を踏みしめつつ、敵はザクを前面に押し出してきた。
 それに戦車もどきの援護が続く。近くの地面が抉れ、兵装の威力はザクよりも高いと分かる。
 しかし、そのザク達の動きはぎこちなく見える。そう、まるで乗り始めの自分を見るかのように。

 成る程、まだ慣れていないみたいだな。運用も、そしてそれを扱うパイロットも。
 敵の援護射撃機を、こちらも射撃で牽制しつつ、トウヤは大尉に笑いかけた。
 砲弾の降る中のそれは、短くも激しい実戦経験が彼にさせたものだ。

『大尉、厄介な戦車もどきは俺が相手をします。射撃と鬼ごっこならお任せを。
 それと見たところ、向こうのザクは操縦に習熟していないようですね。まあ、無理もありませんが』

 そういいつつもガンタンクにバズで牽制。タンクへの嫌がらせは怠らない。当たりはしないものの、回避行動から見た目通り鈍重だと分かる。
 突進するザク達を狙いながら、ユキもそれに続いた。目標に向かうも、その大盾で防がれる。

『ですね。満足なMS訓練期間なんて向こうにはありませんから』
『ああ、そうみたいだな。ザクマシンガンは厄介だが・・・ふん。素人になら格闘戦、だな。いいぜ、乗ってやる。好きにやってみろ。
 嬢ちゃん! 嬢ちゃんは俺の援護だ! 敵のザクの足元を狙え。この地形だ。バズをかませばすぐによろける。俺に当てんなよ? 行くぞ!!』
『諒解!!』

 いうや、大尉とトウヤはスロットルを最大にし、敵との距離を一気に短縮させる。
 片や、トウヤは機動性を生かした回避と牽制を交えての変則突撃。片や、大尉はユキの援護もあってショルダーシールドでダメージを抑えつつの吶喊。前に出てきたザクは、不慣れとユキの攻撃により、トウヤの方には回れない。
 そして、ガンタンクが連邦ザクを援護しようにも、トウヤがそれを許さない。
 余所に狙いを変えれば撃ち落とされる距離。それが目の前に迫っているのだから。


 より距離を詰めていた大尉と連邦ザクが、まず接触した。
 ユキの援護によりふらふらとしているそれに、急激に接近した大尉の機体。通常機と違う、S型ザクだからこそ出来るその勢いのまま体当たりを行うと、連邦ザクは耐えきれずに体勢を完全に崩す。構えた盾も、衝撃により落とされた。

 残されたもう一機が援護に入ろうとするその時、思わず無防備となるそれ。

「当たって! このぉっ!!」

 そしてそれは、すかさずユキのバズによって潰される。

 慣れぬ操縦と仲間がやられた。そして今の状況が拍車をかける。
 向こうのパイロットは、完全にパニックに陥ってるのだろう。近接用のビームサーベルを取り出すも、満足に扱えてはいない。
 そして、それを逃す大尉ではなかった。
 見慣れぬサーベルには驚いたものの、上手く使えないのでは何一つ意味がない。

「どうやら、ひよっこですらなかったな!! なあ、連邦パイロットさんよぉ・・・っ!!」

 サーベルを持つ腕を切り裂き、返す刀でコクピットに一閃。
 勝敗は、圧倒的な差を持って片がついた。


 そして、同様にガンタンクの方もけりがついていた。
 射撃に特化したその機体は、アウトレンジでその真価を発揮する。ただし、その分、小回りや機動性という代価を払っていた。
 そしてそれは、接近されると余りに脆い。既にそのアドバンテージは失われ、弱点のみが佇んでいる。

「墜ちろおおぉおぉぉぉおおおお!!!!!」

 彼我の距離は十分! 残弾数の乏しいバズーカを投げ捨ててマシンガンを構えると、トウヤはそれを一気に解き放つ。
 光の弾幕が降り注ぎ、そしてそれが誘爆を起こし、砂の世界が舞い踊った。
 熱砂の大地を響かせて、ゆらりと単眼の巨人が振り向いた。赤く輝くその単眼が、敵であったものを睥睨する。

『よくやった、ひよっこ! この調子で行くとしようぜ!!』


―――次回、ルナ2強襲作戦―――





●今回のおおざっぱな結果
・ジオン
中東の奪取に成功。今後の布石に。
北米からのパナマ等の奪取には失敗。今後、島嶼攻略作戦や、ジャブローを一気に狙う特殊作戦など、作戦自体に荒が出てくる事に。

・連邦
中東方面でボロボロにされ、その地域を奪われる。
パナマ周囲はぎりぎりで死守。これにより、北米からのジオンとのラインは現状維持。


今回の選択機体:MS-06J
当時の選択可能なジオンの機体(ただし、物によって、階級、記章などの制限あり)
・MS-05B(旧ザク)
・MS-06A
・MS-06C (耐核仕様ザク)
・MS-06F
・MS-06J (陸戦型ザク)
・MS-06S
・MS-07A(試作型グフ)
・マゼラアタック
・ドップ
・ゴッグ
・アッガイ


 はい、第3回でございます。
 オーストラリアでの失敗は、確実に戦線に影響を及ぼし始めました。その目に見えて大きなものは、鹵獲ザクと先行量産型ガンタンクですね。
 読参やっていた時は驚いたものです。連邦とジオンの初のMS対決は、ガンダム対ザクではありませんでした。

 で、ご覧のとおり、トウヤはアフリカ方面です。北米からのパナマなどを狙う方でも良かったのですが、まあ、何となくということで(オイ)
 
 また、本編に書いてはいませんが、中東に攻め上がる際、水陸両用機が大暴れしております。
 ミノフスキー粒子と近接戦闘が可能な水陸両用機の前に、水上艦は鴨であり、また、敵の後方へ上陸して遮断、包囲という基本かつ重要なこともやってのけました。
 ・・・この回、トップガンも水陸両用機の方でしたし、そっちのがよかったかもしれませんね(オイ)

 尚、今回新規参入されたユキですが、彼女も読参組です。序に、ユキギリ初の女性のキャラともなります。
 ・・・しっかし、キャラが一人加わっただけなのに、文字数増え過ぎだ(爆)



※尚、この回の結果は「ゲームギャザ 2000:3月号 vol.7(HOBBY JAPAN)」に収録されたものとなります。

読参~「機動戦士ガンダム・一年戦争史」~第2回 地球へと・・・。

2008年01月31日 | 読参小説(ガンダム 一年戦争史)
「地球降下作戦、でありますか・・・?」
「レビルのやつが連邦上層部を煽ったからな。ルウムでけりがつくと思ったんだが…」

先のルウムでの戦い・・・。
戦略目的を果たせなかったものではあったにせよ、ジオンは圧倒的な数の連邦艦隊を打ち破ったという大きな武器を得た。
そして、それを用いての休戦条約が調印されるという正にその時、レビル奪還の報が入る。
そして、そのレビルによる演説が配信された。後にいう「ジオンに兵なし」の演説である。

「・・・・・・・・・この戦争、長くなりそうですね」
地球降下作戦の実施。それは戦線が恐ろしく広くなることを示唆する事実。
果たして、落とし所をどこにするのか? 戦争は、始めるよりも、いかに収めるのかが遥かに難しい・・・それは、歴史が証明している。

「だが、それを短くすることも出来ないわけじゃねぇ。全ては俺達次第よ。
 そのときには、ひよっこなんて呼べないぐらいになっていて欲しいもんだがな」
からからと笑う中尉に、トウヤは口をとがらせる。いい加減、ひよっこは勘弁してほしい。
しかし、経験の差が違い過ぎた。その願いも虚しく、中尉はたやすくあしらってみせる。

「トン中尉、自分はひよっこでは・・・」
「そう言ってるうちは、まだひよっこよ。鷹は、わざわざ口にせずとも鷹なんだぜ? 
 たった数回でベテランの顔をされちゃ困りますな、伍長殿?」
「ぐっ!? それは・・・」
そう、まだトウヤは多少の戦争を経験したお坊ちゃんにすぎない。
認めざるを得ないそれを、悔しそうにはいと答えると、中尉はまぁ頑張れやと肩を叩いた。




●盾として・・・
「なんて数だ・・・だが、愚痴ってもいられないんだよ!!」

愛機・06Fからの弾幕に、セイバーフィッシュは、その名、あたかも魚の如く宇宙の海を逃げまどい、そして次々に撃ち落とされていく。
射撃の得意なトウヤは、今回、装備を2丁の120mmとしていた。理由は、地球降下部隊の露払いにある。
対艦には向かないが、小魚どもには勝手がいい。
連邦は、先のルウムの艦隊喪失と、無防備となる降下部隊のこともあり、セイバーフィッシュやトリアエーズなどの航空機で大挙することが予想されていた。
2丁の120mmはこの為だ。
これにより、先程から撃墜スコアは確実に伸びている。

「向こうが数なら、こちらも数。弾幕で勝負してやる。紙切れ装甲じゃ耐えられまい」

だが、そんな事を気にしていられるほど、今のトウヤに余裕はない。必死にならなければならない訳がある。
敵は、なんと防衛機を無視してまでHLVを狙ってきているのだ。恐らく、そんな命令が出ているのだろうが・・・正気の沙汰ではない。
だが、その無謀過ぎる行動が、少なからぬ被害を与え、それ故にトウヤも何度も煮え湯を飲まされていた。

ふと、視線を彼方へと向ける。縦横無尽の光芒。そして、その中におけるそれぞれの攻防。
連邦も、ジオンの降下作戦に対してルナ2から艦隊を出している。
ルウムでほぼ壊滅させたと思っていたが、決してその数は少なくはない。報告によると、むしろ、予想されていたものよりも遥かに多い。
そして、そのことは同時に向かってくる航空機群も同様だ。
既に幾度かドラムマガジンを交換しているが、果たして弾は足りるのだろうか? 

ジオンにはない、圧倒的な物量。
甘く見ていた。くそっ! これが連邦か!! 
苦虫を噛むような思いをするその最中、一つのHLVが降下していく。

「いいぞ、そのまま上手く降りてくれ・・・」

戦場での小さな望み。自分のなすべき任務の一つが遂行されていく。
だが、それは叶わぬものとなった。
突如奔った数条の光。それが、宇宙の闇を切り裂く。降下し始めたHLVは、無残にも爆散する。

「戦艦だと!?」

サラミス級巡洋艦。連邦宇宙艦隊の主力ともいえる存在。
どうやら損害を無視して強引に突出してきたらしい。所々に破損が見える。
狩りの獲物としてなら美味しいであろう、それ。しかし、降下部隊を抱える今には危険すぎた。
そして何より、目の前でまた仲間がやられたことに殺意が沸く。

『ひよっこ! 聞こえるか!! 今からあいつを叩き潰す!! 対艦には厳しいだろうが、援護しろ!!』
『諒解!!』

バズーカを構えた06Sの中尉機が合図を送る。同時に、何機もの鉄の巨兵がそれに続く。
トウヤはブースターを最大限に噴かし、機体を左右にぶらしつつの吶喊させた。
急激なGが負荷となって襲うも、構ってなどはいられない。
しかし、運悪く砲火により右腕を吹き飛ばされた。警告音が鳴り響き、冷たい汗とともに焦りが走る。

「片腕をやられた!? だが貴様は落とす! 俺の銃はまだ残っているぞ!!」

しかし、為すべきことがそれを打ち消した。気にしてなど、いられない!!
すぐさま、もう片方に握られたそれが目標へと向けられた。
音の聞こえぬ静寂世界。その中で、音が鳴り響いて壊れていくように感じる敵の対空砲火。
そして・・・。

『中尉!』
『おうよ! 仲間の敵だ!! てめぇも落ちてどっこいだろぅがッ!!』

敵のガードはこじ開けられた。あとは急所を狙うのみ。
トウヤ達の援護により、既にとりついていた中尉の機体。それに力強く握られた2丁のヒートホークが、躊躇うことなく艦橋を切り裂いた。



―――次回、「南米/地中海作戦」―――


●今回の結果
・ジオン
損害を出しつつも、各地への降下、占領作戦を果たす。
ただし豪州降下は失敗、部隊は壊滅。
捕虜はジオン側も連邦兵を多数得ていたので、速やかな交換が行われる。

・連邦
降下部隊に打撃を与えることに成功。
また、オーストラリアの防衛に成功。
結果、幾つものザクを鹵獲と、兵の余剰分が他へと回されることに。
加えて、MS研究施設が幾つか豪州に疎開される。

また、これにより連邦の一部機体が早期ロールアウト。
(第3回に反映)


今回の選択機体:MS-06Fザク
当時の選択可能なジオンの機体(ただし、物によって、階級、記章などの制限あり)
・MS-05B
・MS-06A
・MS-06C
・MS-06F
・MS-06J
・MS-06S
・マゼラアタック
・ドップ
・コムサイ
・ガトル


はい、第2回でございます。
HLVによる地球降下作戦。当然それは数多くの護衛がなくては務まりません。
そんなわけで、この回は護衛へとトウヤをまわしました。

まあ、物語的には地球に降りて暴れまわる、とかいう方が好まれそうですけどね(オイ)
次回は「南米/地中海作戦」となります。さあ、地上戦ですよ~。



※尚、この回の結果は「ゲームギャザ 2000:1月号 vol.5(HOBBY JAPAN)」に収録されたものとなります。

読参~「機動戦士ガンダム・一年戦争史」~第1回 巨兵達の宴

2008年01月26日 | 読参小説(ガンダム 一年戦争史)
●戦う意思を
「落ちつかねぇ、みてぇだな。ひよっこ」

飄々とした様子で現れたカトゥー・トン中尉が、トウヤ・ユキギリ伍長の肩を叩いた。
どうやら、不安が外に漏れていたらしい。普段ならひよっこといわれて多少の反発をするが、今は平静を装って取り繕うだけで限界だった。
しかし、浅黒肌のこの中尉殿には、そんな物は無駄である。

「中尉。自分は・・・」
「無理すんなよ。仕方がねぇこった。実戦はこれが初めてみてぇだしな。誰だって初めは怖いもんさ。俺だってそうだった」
「中尉・・・」
「ふん。なぁに、安心しとけ。俺たちの乗る物はなんだ? 連邦にはないMSよ。
既にMSは結果を叩きだしている。びびるこたぁ、何一つありゃしねぇ」

軽くおどけたその様に、思わず気が緩む。そして、同時に楽となった。

≪パイロットはMSデッキへ。繰り返す。パイロットはMSデッキへ≫

反射的に見上げる二人。流れた艦内放送が、やがて訪れる戦争をさらに感じさせる。
戦いは、近い!!

「来たかい・・・行くぞ、ひよっこ! これを乗り越えれば一段落だ。ちゃっちゃと戦争を終わらせるぞ!!」
「はい!!」

先程までの不安は既にない。あるのは次第に強くなる戦闘意思。
全てはこの人が吹き飛ばしてくれた。
トウヤは胸の内で敬礼をすると、中尉とともにMSデッキへと向かう。
戦いの場所、ルウムに備えるために。



●ルウムの海
「戦闘機か!? くっ、落ちろぉーーーーー!!!!!!」

敵機からの機関砲!? 
耳障りな警告音を無視し、トウヤは愛機・MS-06Fの120mmマシンガンを乱射させる。
その何発かが目の前の戦闘機、セイバーフィッシュへと注がれ、爆と散らせた。
レーダーの発達により、最早、来ることはないであろうと言われた有視界戦闘。しかし、ミノフスキー粒子がそれを可能にした。
その恩恵を存分に受け、縦横無尽に飛び回るMS達。それは、従来の宇宙空間での戦闘概念を覆した象徴である。
更に迫りくるセイバー。バズーカで軽くけん制し、マシンガンで薙射。そこに仲間からの援護も加わり、次々に駆逐していく。

『大丈夫か。焦り過ぎだぞ』
『はい、ありがとうございます!!』

ガシャン、敵が見えなくなった後、接触回線による通信だ。軽口のように聞こえるも、通信相手には顔に汗が浮かび、若さが見える。
同じく新兵なのだろう。
恐らく、自分もあんな顔なのだろうかと軽い親近感を感じつつ、次の行動へと操縦桿を傾ける。

(コロニーさえ上手く落とせれば、こっちの勝ちだ!!)

ブリーフィングルームでの作戦概要が頭をよぎる。
今回の戦略はコロニー落下によるジャブローの消滅。
資源の乏しいジオンには、常道では勝ちようがない。連邦との物量の差は30:1とも言われている。
向こうが完全に戦争へとシフトすれば、あっという間に潰されるだろう。
その前に、有利な戦況で戦えるうちに、これを一気に叩く!!


―――――しかし―――――


『生きてたな、ひよっこ!! それはそうと作戦変更が出た!! コロニーはもう無理だ!!』
『なんですって!!?』

ヒートホークを2丁装備した機体が現れる。
よく見なれたそれは、格闘に特化させたトン中尉の機体だ。

『だからその分の代金はレビルに払ってもらう。ツケは高いぜぇ!! 行くぞ!!』

勝利の女神は、そう簡単に微笑んではくれないらしい。
歯噛みしつつ、トウヤは更に死地へと機体を走らせる。そう、中尉の言うとおり、ツケは高い。
その分は是が非でも払わせる! それが無理なら力づくで奪い取ってやる!!


―――――次回、地球降下作戦発動



●今回のおおざっぱな結果報告
・ジオンサイド
コロニーの落下に失敗。
レビルを黒い三連星が捕獲。

・連邦サイド
ルウム戦役で散るはずだったカニンガム提督が生存
艦隊が大幅な打撃。
レビル捕獲。後、脱出し、「ジオンに兵なし」の演説で戦争継続

南極条約が締結される。




とまあ、ほぼ史実通りの結末だった第一回でございます。
それはそうと、カニンガム提督って誰やねん。今でもそう思うときが(オイ)

・キャラクター紹介
トウヤ・ユキギリ伍長
19歳の新米。
怖がってたけど、なんだかバシバシ撃ってた人。バキューン!!

カトゥー・トン中尉
浅黒肌のおっさん。
射撃もできるけど、格闘スキー。



※尚、この回の結果は「ゲームギャザ 1999:11月号 vol.3(HOBBY JAPAN)」に収録されたものとなります。