『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  127

2013-10-18 13:10:54 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 陽が開宴を促す位置に輝いている。茜に天をこがすまでには、少々まだ間がある。
 『お~おっ!』『ワオ~ッ!』『ウオ~ッ!』の声が聞こえる。彼らは声をあげながら、語らいながら、シマについていく。イリオネスは、客人たちを案内している。アヱネアスは、久々の儀式を意識して緊張の面持ちでいる。イリオネスはアヱネアスに声をかけた。
 『統領、全員集まりました。客人の皆さんもシマに案内しました。始めましょう』
 『おう、そうか。始めよう』
 彼はつかつかと歩いて、祭壇に面して立った。目を上げた、正面に陽はさんさんと輝いている。頃合い時である、陽はひときわ、燃える体を大きくしていた。
 アヱネアスは、全身に猛々しさをみなぎらせた。抜き身の剣を高々とかざす、陽に映える、一閃した。白黒の羊の首は体から離れていた。場を制していた緊張と静寂が破られた。耳をつんざく大歓声が沸きあがった。
 太陽が夕空を茜に燃やしている。その太陽に対峙して、アヱネアスは、鮮血の滴る剣を高く差し上げて声をあげた。荒々しい儀式の催行が場を圧していた。それは圧巻の光景であった。
 アヱネアスは、朗々と叫んだ。彼の率いるトロイの民族の『これから』を祈りあげた。海賊掃討に快勝した感謝の言葉をも述べた。続けて、客人たちの『これから』も祈りあげた。
 彼の行った儀式は、少々型破りの感があったが、場を圧して無事に終えた。句読点の大歓声が場にどよめいた。
 軍団長が声を上げて開演を告げた。全員が手にしている酒杯に酒が満たされていく、囚われの身である女たちも場にいる。彼女たちは忙しそうにサービスに動き回っている。場に華やいだ雰囲気を醸し出していた。
 軍団長から統領に声がかかる。
 『統領!乾杯の声がけを、、、』
 『おっ!よしっ!』
 アヱネアスは、客人と目であいさつを交わし、場を見渡した。
 彼は大声をあげて叫ぶ。 
 『乾杯っ!』
 場の者たちは、大歓声をあげて杯を干した。酒杯が宙に舞った。またまたあがる大歓声であった。
 この光景で宴の幕があがった。
 空は茜色に燃えている。陽は宴を燃えあがらせた。場に集っている者たちの顔も茜色に燃やし輝かせた。