『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  135

2013-10-30 08:22:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 今日は広場で全員がそろって朝食をとる手筈になっている。その準備にオロンテスはじめ部員たちが大わらわで当たっていた。昨夕の宴のたき火跡に焚き火をしてシマができていた。すでに主食のパン、副食材が配されている、乾杯用の酒も用意されていた。
 朝食を知らされる木板が打ち鳴らされる、皆がそろうのに時間はかからなかった。アヱネアスの言葉で朝食が始まる。
 『諸君っ!おはよう!』
 一同から歓声が上がる。一同が手にしている杯に酒が注がれていく、アヱネアスが一同を見渡した。
 『我々は、今、ここに新しい場に立って、新しい朝を迎えた。新しい第一歩を踏み出す朝だ。力強く第一歩を踏み出せっ!乾杯っ!』
 彼は、声高々と雄たけびをもっての檄を叫んだ。一同は一気に飲み干す、間髪を入れず、歓声で答える、歓声が轟きこだました。アヱネアスは言葉を続ける。
 『諸君に伝える。我々は、こちらの皆さんにえらくお世話になった。スダヌス浜頭とその浜衆、この地の土豪の頭ガリダ殿、ダルトン、ハニタス浜頭、皆さんありがとう。心から礼を言います。また、スダヌス殿、昨日は祝いの品をいただき誠にありがとう。深く礼を言います』
 言葉が終わるか終らないうちに一同の大歓声が轟いた。
 『さあ~、一同!朝食をいただこう』
 この一言で朝食が始まった。朝食のパンは、日常口にするパンとは違い、丹念に焼き上げられたオロンテススペッシャルであった。
 『これは、旨いっ!』スダヌスの大声の第一声で始まった。ダルトンが言う、『お前、遠慮のない大声だな。お前の言うとおりだ。このパンは旨い!』
 『旨いっ!』『旨いっ!』の言葉が朝食の場にとびかった。旨いパンを食しての笑顔の交歓である。
 この朝食はスダヌスにとって、旨いパンを口にする至福のひと時であったのである。