yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

人魚姫 4

2015-04-09 18:56:16 | 人魚姫








翌日、智の姿は


どこにもなかった。




何で


何で


何で



翔にはわからなかった。


確かに智に人魚であると告げた時
智の様子はおかしかった。


でも翔は、智が人間であろうと人魚であろうと
そんな事はどうでもよい事だった。
智は智であることに変わりはないし
智がたとえ人間でなかったとしても
好きであるという気持ちに変わりはない。


ただ助からなかったであろう命を
救ってくれた智への感謝と
そして好きだという思いを伝えたかっただけだ。


でも、智は?



翔は思い出した事を
そしてそれを智に告げてしまった事を
心底後悔していた。


そして告げた後、真っ青になり具合悪そうにしていた
智を疲れているものだと勘違いし
すぐに小屋へ帰してしまったことを
悔やんでも悔やみきれないほど後悔していた。







何で


何で


何で、智に伝えてしまったのか


何で、そのまま帰してしまったのか


いくら後悔しても取り返しがつかない。


智は一体どこに行ってしまったのか。


来る日も来る日も智を探す。


だがどこをどう探しても探しても


智は見つからなかった。

















『智は人魚だったんだね』


翔が静かな目で自分の事を見つめながら言った


その言葉が智の胸の奥に突き刺さる。






あの日


智が人魚だと気づいた翔が何を思い


自分に伝えてきたのかはわからない。


ただ、人魚だったことが知られてしまった限り


もうここにはいられない。


この人ともう二度と会うことはできない。


それだけだった。






朦朧としながら小屋に戻ると
ベッドに倒れこむように横になった。
そして夜、マサキが寝たのを見計らって家を出た。


痛い足を引きずるように目的もなく


ただひたすらに真っ暗な道を海岸に沿って歩いていく。


やがて自身の身体は海の泡となって消えていくのだろう。


智は人間になった時から既に覚悟は出来ていた。




どれくらい歩いたのだろうか。
空は少しずつ薄明るくなってきていた。
足はパンパンに腫れ上がり
痛みで思うように動かすことができない。


あまりにも疲れきって立ち止まると
そこにあった大きな石に腰掛け目を閉じた。












「見かけない顔だな」


突然の声に目を覚ますとそこには
やけに整った顔立ちの青年がいた。


“まだ海の泡となって消えなかったのか”


智は自身の手を見つめた。


あまりの疲労と足の痛みでそのまま
眠ってしまっていたらしい。
そんなことを思いながらぼんやりと上を見上げると
男が不思議そうに見つめてきた。


「お前、誰だ?」

「……」


怪訝そうな顔で話しかけられるが
声を出す事ができない。
答えることができず俯いた。


「シカトかよ」


男は機嫌悪そうにフンと鼻を鳴らす。
智は慌ててブンブンと首を振った。


「……」

「……」


男は不思議そうな顔で智を見つめる。
お互い無言のまま見つめ合った。


「……もしかして だけど」

「……」

「もしかしてお前、口が聞けねえの?」


男が聞く。
智は小さく頷いた。


「まじかよ」

「……」


男がため息混じりにそう言った。
智は申し訳なさそうに小さく頷く。


「これからどこに行くんだよ?」

「……」

「っていうか、どっから来たんだよ?」

「……」


男は矢継ぎ早に質問してくる。


「って、喋れねえんだっけ」

「……」

「なんだか、足もすげえ痛そうだし
疲れているみたいだな」

「……」


話すことができないことを思い出すと
整った顔立ちの男は智の足を見つめた。


「……」

「……」


そして男はどうしたものかと智の顔を見ながら
考えるような顔をした。


「こんなところで寝てるってのもな」

「……」

「ウチくるか? なんだかあんた綺麗だから危ないよ」

「……」


綺麗? 危ない?
意味は分からなかったが
疲労も強く足の痛みも限界だった。
智は小さく頷いた。












男に連れてこられた家は古くて小さな家だった。
男は父親らしき人と二人で暮らしているようだった。


「なんかあんた放っとけない顔してんだよな」


男が作ってくれたご飯を一緒に食べながら
男がそう言った。


「俺んち金もねえし家もこんなだけど
あんたさえよければ、ここにいてもいいよ」

「……」


潤が作ってくれたご飯を食べながら
そう言ってくれたので智はこくりと頷いた。


そして食事をしながら智は翔の事や
お世話になったマサキの事を思い出していた。
自然に涙が頬を伝う。


潤はその智の姿を優しく見つめた。


「事情は分かんねえけどうちは
いつでもいていいんだからな」

「……」


潤は照れくさいのかぶっきらぼうにそう言った。
智はこくんと小さく頷くと
潤はそれを見て優しくふふっと微笑んだ。















潤の仕事は漁師だった。
夜が明ける前に船に乗り出発する。
そしてひと通り釣り上げるとそれを売り
家に帰ってきて朝ごはんを食べひと眠りする。
そんな生活だった。


一緒に住んでいる潤の父親は病弱で
たまに調子のいい時に一緒にご飯を食べる以外は
ほとんど床に伏っていた。


智が顔を見に行くと優しく微笑んでくれる。
なぜかその潤の父親の顔を見ると優しくしてもらった
マサキのことが思い出され智は涙が出た。


そして数日がたち旅の疲れが取れると
智も潤と一緒に船に乗るようになった。
潤は家にいてもいいと言っていたが
それでは智の気がすまなかった。


船に乗って海へ出る。
それはとても不思議な感覚だった。
自分が生まれ育った海。


家族は今も海底で生活している。
そして自分も少し前まで同じように生活していた。


海を見ながら家族の事
そして翔やマサキやお城の人たちのことを思い出し
また涙が出た。



潤は何も言わず優しくその姿を見つめていた。









お城では毎日智を探していた。
でもどこを探しても見つからない。


翔も手当たり次第に探していたが見つからなかった。
そして智に似た人がいると聞けばどこまでも探しに行った。
そして別人だとわかると落胆しながら帰ってくる。
そんな毎日だった。


もしかして海に帰っているのかもしれないと
何度も海にも通った。


でも智の姿はどこにもなかった。


翔が絶望的な表情で海を眺める。








その姿を海からカズは見ていた。




カズも智の身を心配していた。


最近智の姿を見ていない。


どうしたのだろう。


まさか海の泡となって消えてしまったのだろうか?




でも、だったらあの人の悲しそうな表情はなんだろう。















智がふと唇に何か触れたような気がして目を覚ますと
潤の顔が目の前にあった。


「……?」

「……ごめん」


智がびっくりして潤の顔を見つめると
潤が照れくさそうにごめんと言った。


「……?」

「……智」

「……」


意味が分からず潤を見ていると
潤が切なそうに智の名前を呼ぶ。
智は、起き上がり、なんだろ? と潤を見る。


「俺、智が好きだよ」

「……」


潤が智の顔をまっすぐ見ながらそう言った。
智がびっくりして潤を見つめる。


「智」

「……」


潤の手が智の頬に触れる。
そして角度を付けゆっくり顔を近づけてくる。
もうちょっとで唇と唇がくっつくといった瞬間
智は思わずそれを避けた。



「……ごめん」

「……」


潤はまた謝った。
智はこんなに良くしてもらっているのに
応えることができなくて申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「……智」

「……?」

「もしかして好きな人がいるの」

「……」


潤が聞く。
智は小さくこくりと頷いた。


「やっぱそうか。わかってたけど、残念」


潤は今言ったことは気にしないでくれと言って
照れくさそうに笑った。



















おまけ  VS嵐







「何を呑気に初めてやったよ俺、とか言っちゃってるんですか」

「……」

楽屋に戻るとすぐにリーダーを捕まえそう文句を言った。
大野さんはなんのことかわからなかったのか
きょとんとした顔で見つめてくる。
可愛いんですけどね。


「今日のチュウの事です」

「あ~あれ? だって本当にそうなんだもん」

「そうなんだもんじゃありません」


こちらの気持ちを知ってか知らずか
その可愛らしい顔でヘラヘラ言ってくるから
つい口調が強くなる。


「にの怖い~」

「当たり前です」

「だってぇ~だんだんそういう雰囲気になってきたからさぁ」

「まあ、そうですけども」


そう確かに。
狙ってるのかと思うくらいに ね。


「だから、この空気はやるべきとこなのかなぁって思って」

「やるべきとことか言ってる場合じゃありません」


もう、この人は。
空気読めないふりする時もあるくせに
こういう時は憎たらしいくらい空気を読む人なんだから。



「それに~みんなもしてるし」

「みんなはいいんです。でもリーダーはいけません」

「え~」


そう言うと、大野さんはえ~っと言って
納得がいかないって顔をした。


「な り ま せ ん」

「なりませんってナニ?」


そう言うと大野さんは可愛らしい顔でクスクス笑う。
くそっ。
3歳年上とは言え、ムカつくほどカワイイ。


そしてチュウされている顔は
憎らしいくらい綺麗で可愛らしい顔だった。
その時の事を思い出して、またムカつく。


それにしても本当にこの人は自分の唇を狙っている人が
どれだけいるか全然わかってない。
もし、これを許してしまったら
後から後から…


そしたらJは怒りだすだろうし
翔さんは卒倒するだろうし


イヤ、想像するだけでも恐ろしい。


幸か不幸か本人はさっぱりわかっていないところが
また困ったところではあるけどね。


「いいですか、よく聞いてください」

「え~ 何?」

「まず、ああいう状況にはならないようにすること」

「え~ でも、もしそういう雰囲気になっちゃったら」

「もしそうなったとしても空気を読めないふりして逃げること」

「え~難しいよ。だったらニノが助けてくれればいいじゃん」

「助けたかったけど助けられない状況だったでしょう」

「そうだっけぇ」


そうだっけぇって。


ホントわかってない。


あん時は柵があって…


って考えてみるとそれを狙ってたのか?
許すまじ


「いいですか? 一番は誰も手足が出せないようなところで
そういう雰囲気にならないようにすること」

「え~」

「え~じゃないでしょ。
じゃないと妨害しようにも妨害できないんですよ」

「う~ん。そっかぁ」


そう言うとわかったようなわからないような顔をする。


「わかりましたか?」

「ん~なるべくそうする」


そう言ってとても3歳年上とは思えないくらい
可愛らしい顔で笑った。
くそっ。
やっぱりカワイイ。


あまりにも可愛くてちょっとムカついてきたので
その可愛らしい唇めがけてチュッとキスをする。


「にの?」


突然の事にきょとんとした顔で見つめる。


「これは、消毒です」


そう言って相変わらずきょとんとしたまま呆然としている
カワイイその人にそう言ってウインクした。







大宮でした。



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2 コメント

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悲恋では (ぷーのすけ)
2015-04-09 19:50:37
きらりさん、こんばんは☆
泡になっちゃうのかと3話のあと気になって気になって
とりあえずホットしました。続き楽しみにしてます。

おまけのニノのリーダーはいけませんと消毒に
ニマニマしてしまいました。
返信する
ぷーのすけさんへ (きらり)
2015-04-10 18:08:40
ぷーのすけさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

そして気にしてくださってたのですね。嬉しいです。
悲恋…原作は悲恋の話ですがここでは
またまた優しい感じの話になるかなと思います。
続き楽しみと言って下さって嬉しいです。

おまけのはどうも違う話にいくとそっちにのめり込んで
続きものを忘れさってしまうので、こんな時にとは思いましたが
おまけとして一緒にアップしてしまった分です~。
ニマニマしてくださって嬉しいです。
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