私たちが生まれると同時に 「 倶生神 」 ( くしょうしん ) という方が
私たちの両方の背中にのっかているそうです。
( 残念ながら見ませんが )
そして、私たちのしたことを逐一 「 閻魔帳 」 に書き込んでいるそうです。
亡くなって 「 三十五日 」 には閻魔さまの前へ行きます。
そしたら、 「 倶生神 」 が閻魔さまに自分たちが記録してきた
閻魔帳を閻魔さまの前に差し出します。
正岡子規が 『 墨汁一滴 』 というなかに、
正岡子規が閻魔様と出会ったことを戯曲にして書いています。
ちょっと面白い内容でしたので紹介します。
閻魔さまがど~んとテーブルの上に構えておられる。
その閻魔さまに、正岡子規が、
「 お願いがございます 」
というのです。そうしますと閻魔さまは、耳をつんざくような声で、
「 なんだ ! 」
という。そうしますと正岡子規が、
「 もう私は毎日毎日苦しい日々だ。
早くお迎えが来てほしいんですが、いっこうに来ません。
閻魔さま、早く迎にきて下さい 」
と。そうしますと閻魔さまが、いやな顔をせずに帳面を調べるわけです。
そして、
「 お前は、明治三十四年と三十五年に、すでに閻魔帳には
名前が出ている。
なんでそこにいるんだろうか 」
と。閻魔さまが数珠玉のような汗を流して、困惑するのです。
そうだまてよ、お前を明治三十四年に迎にいったのは、五号の青鬼だな。
そこで青鬼を呼び出して、
「 お前は、なんであの正岡子規をこちらのほうへ連れてこなかったんだ 」
そうしましたら、五号の青鬼が、
「 正岡子規を迎にいったんですが、
道がくにゃくにゃ曲がっていて解らなくなってしまいましたから
戻ってきました 」
「 その次に迎に行ったのは誰だ。十一号の赤鬼だな。
お前は、なんで正岡子規をこちらへ連れてこなかったんだ 」
「 ええ、火の車で迎に行ったんですが、
道が細くて通れませんので、引き返してきました 」
と。それを聞いて閻魔さまは、はなはだ当惑してみえる。
そうしましたら、傍らにいました地蔵さんが、
「 それでは、事のついでに、
もう十年ばかり命を延ばしてやりなさいな 」
と言うわけです。それを聞いて正岡子規が、
「 滅相もない、痛くて痛くてたまらない日々だ。
病気でない十年ならいいけれど、
痛み通しの毎日だから、一日も早く迎えが欲しいです 」
そうしましたら、閻魔さまはたいへん同情されまして、
「 それなら、今夜すぐに迎にやろうか 」
ちょっと正岡子規がびっくりして、
「 今夜はあま早うございます 」
「 それなら、明日の晩か 」
「 そんな意地の悪いことを言わずに、
いつとはなく突然に来てもらいものです 」
閻魔さまは、せせら笑って、
「 よろしい。それでは突然にやる。
しかし、突然というなかには今夜も含まれている
ということを承知しておけよ 」
「 閻魔さま、そんなに脅かしちゃあ困ります 」
閻魔さまがからから笑って、
「 こいつ、なかなか我儘な奴じゃなあ 」
といわれるのです。
よく、 「 もう、いつでもお迎えが来てもいい 」
ということをよく聞きますが、
それでは、明日にでもお迎えをよこしますから、
と言われると、
それはあまりにも早すぎる、では10年といわれると、
病気をしてたら、その苦しいのは、ちょっと辛い、
もう少し早めに、
ではいつ頃といわれると、
と困ってしまいます。
思いもかけないことに、よく出会います。
突然、予想しないことが起きるのです。
ま~ 明日あさってはないだろうと、高括っていますが、
いつ、赤鬼何号さんが呼びにこられるか分からないのです。
明日あさっても困るし、そう長くも生きたいわけでもないし、
「 どないしたいんや !! 」
と、言う声が飛んできますが、
その、ちょうどいい頃がわからないのです。
お任せするしかありませんが、
いつ来てもいいように、そろそろ準備でも …
明日かもしれませんよ