本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

六根清浄

2023-05-11 21:18:26 | 十地経

「慚愧懺悔 六根清浄」

という言葉を

山伏の方々は修行の時

唱えながら歩かれる

ということです

一人が発すると

それに呼応するように

次々と山々にこだまし

とても荘厳な感じです

 

ふと考えてみると

この「六根清浄」という

こともおかしいのではないか

六根という眼耳鼻舌身意

ということは

ただのハタラキです

 

目が見るのではなく

目は見るというハタラキ

それをたとえば花だと

認識するのは「意」の

眼識です

 

座っているとランチが

運ばれてきました

見るからにおいしそう

そういうふうに見るのは

目のハタラキ

それを美味しそうと

感じるのは眼識のハタラキです

おいしそうな匂いが

それは鼻のハタラキで

そう感じるのが鼻識です

食べてみると

なるほど美味しい

それは舌のハタラキです

 

そういうはたらきを

清浄にするとは

どういうことでしょうか

眼耳鼻舌身意の六根は

そういうことを感じとるだけ

美味しいとかいい香り

というのは眼識、舌識が

そうしているのです

 

さらに

これはまずいとか美味しいと

言い出すのは六識の次にある

末那識(マナ識)なんです

この意識が問題で

自他差別心とも訳されます

自分と人とを差別する心

また自分にとって

このことは損か得か

または都合がいいか悪いか

常にそろばんをはじいている

心です

 

自分は人を差別しない

と言っている人は

認識不足です

誰しもこの末那識という

こころはあるのです

意識するしないにかかわらず

いつも働いているのが

この末那識です

 

ですから

六根清浄というより

末那識清浄といったほうが

いいのかもしれません

しかし

そういう人間に

自分はさておき他人のために

何かしてあげたいという

心が起こるのも

この末那識のハタラキです

 

ある面では六根というのは

窓口かもしれません

そこから感じ取ったことを

分別していくのが

末那識という心です

 

そして

その感じたり行ったことを

貯金箱のように蓄えていく

そういう心が阿頼耶識

アラヤ識というのですが

アラヤというのは蔵という

ことで良いことも悪い事も

全部自分の中に納めていく

そういう心です

 

自分が意識するしないに

かかわらず蓄えていく

そこに怖さもあるのです

自分がさほど意識しないのに

阿頼耶識はちゃんと貯金

しているということです

 

お釈迦さまは

出家されてから

人目を避けるように

森に入りただひたすら

静寂を求めて修行されました

さとりを得てから

弟子たちには

死体置き場、墓場で瞑想し

そこで寝泊まりをしなさいと

仰っておられます

 

メメントモリです

死を忘れるな、死を思え

ということです

このことを忘れると

つい人間は有頂天になり

自分がいつまでもあるように

錯覚してしまいます

 

生まれて

やがて死んでいくのではなく

仏教は死から出発します

死から生を見るのです

死のない生はありません

こういうことを

講義では

 

「有限の身において

無限を行ずる。

永遠を有限において行ずる。

そこに休息はありえない。

法の世界は永遠である。

しかし人生は短い。

法は不生不滅である。

人間は生じ滅する者である。

 

我々が時においてある

ということは、

それは何のためかというと

人間が法の機となるという。

永遠を証明するために

時間というものがある。

 

法の機となるために

短い人生が与えられている

のである。

時を超えた道を

時において行ずるのが

道である。

法を行じている者、

それが最も正しい

人間のあり方である。」

 

ということですが

そういうことからすると

六根を清浄にしていく

というも

あらゆる雑音や誘惑から

自分を守っていく

一つの方法であれば

「慚愧懺悔 六根清浄」

と唱えることも

六根の窓口を塞ぎ

集中して三昧に入っていく

ということで

意味のあることなのでしょう

そこには根底に

メメントモリという

死を思うということが

なければいけないように

思います。

 

 

 

 

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