宇宙(そら)を見上げて

謎の天文機材技師 ☆男(hoshiotoko)のブログです。

65cmF12と10cmF78は同じ性能なのか?

2018-03-30 11:27:00 | 撮影機材
このところ極限等級について多くのコメントを頂いています。
星爺さんによれば、望遠鏡の極限等級は焦点距離のみによって
決まり、口径やFとは無関係とのことです。

吉田正太郎先生のご著書
天文アマチュアのための
望遠鏡光学・反射編
誠文堂新光社

P-48 12望遠鏡の実視極限等級

から引用します。

-------- 引用ここから ----------

望遠鏡で、やっと見える恒星の等級を、極限等級(limitting magnitude)
と言います。瞳孔径7.0mmの人が6.0等星まで見えるとすれば、
望遠鏡の極限等級Mは、つぎの式で計算できます。

M=5logφ+1.774(等)・・・・(2・24)

φの単位はmm、logは常用対数です。
以上は実視極限等級ですが、写真の場合は感光材料の種類、露出時間、
ピントの良否などにも関係するので、実測してみるほかはありません。
ただし、その星像は円形で、黒さが均一でなければなりません。
オムスビ形やコンマ形の小さな像は、星像にはかぞえません。

------- 引用ここまで -----------

P-49には、
表2.1 望遠鏡の有効径と性能の一覧表

が記載されています。

また、望遠鏡の光学的な性能は、ほとんどすべて口径によって
定まりますから、望遠鏡の大きさは口径で表示します。
たとえば30cm望遠鏡といえば、口径(有効径)30cmの望遠鏡の
ことです。

と書いてあります。

では、65cmF12と10cmF78の望遠鏡は同じ性能なのでしょうか?

<65cm望遠鏡>

分解能:0.178"角
実視極限等級:15.84等星
集光力:8622倍

<10cm望遠鏡>

分解能:1.160"角
実視極限等級:11.77等星
集光力:204倍

両者間には、5段プラスの露出倍数(43.1648倍)もの差があります。
65cmF12で600secを適正露光とすれば、10cmF78では7h10mもの時間を
要する計算です。
10cmF78の望遠鏡があったとすれば、理論的には1カット7h10m露光
すれば、65cmF12で600sec露光した時と同じ極限等級を得られる
というのが星爺さんのおっしゃられていることです。

また、
このM51は何センチの望遠鏡で撮影したのですか? ではなく、
このM51は何mm望遠レンズで撮影したのですか?

と聞くようになることが必然だと言うことです。
確かにカメラの世界では、このF22は何ミリ望遠で撮りましたか?
のような聞き方をしますね。
しかし望遠鏡の世界では、このM51は何センチの望遠鏡で撮りましたか?
と聞きます。

論点は、

焦点距離が同じ場合、適正露光であれば極限等級は同じであり、
得られる結果は同じである・・・

と言う点です。

星爺さんのコメントに、

>星や銀河自体のフォトン数が重要なのは当然です。
>銀外自体とは=単位面積ということですね。
>星は点像なので口径が大きいと短時間露出でも良く
>写りますが、飽和まで露出する(=適正露出)場合は
>口径が小さい(=Fが暗い)とバックグラウンドが暗い
>ので飽和までの露出時間を長くでき、結果として
>最微光星は焦点距離が同じなら同じになります。
>露出が不足した場合は面積体は良く写らないで星ばかり
>写ります。こうした写りの状態を見て
>「大口径は良く写る」と感じやすいのでしょうかね?

>例の公式は、相反則不規のないデジタルになればより
>算数になるので、結果はより正直で理論と現実の乖離は
>フィルムよりも少なくなります。

>これらの概略がどういうことかというと、
>①口径が大きいほど良く写って
>②露出が長いほど良く写って
>③焦点距離が長いほど良く写ります。
>すなわち、望遠鏡の大型化は永遠のテーマです。
>が、①②③は相関関係にあるということです。

とあります。

ハイ、「大口径は良く写る」と感じます。
それは、65cm鏡の場合8622倍もの集光力があり、
7800mmという超々望遠レンズでもF12という現実的な明るさ
を得られるからです。
また、最近の画像処理技術の進歩により、
日本のシーイングでも、前出のM51程度の画像はアッサリ撮影できて
しまうというブレイクスルーもあります。

”日本のシーイングでは1”角以下は期待できない”
”日本のシーイングでは30cm以上の口径は無意味”

本当でしょうか? 様々な画像復元処理法、
ラッキーイメジングやスペックル干渉法によって、
もはやそのような常識は崩れました。
やはり、望遠鏡は口径が大切です。
口径が大きければ、結果的に焦点距離が伸びて限界等級も上がり、
現実的なF値に収まって、実用性が確保できるのです。

焦点距離が同じ場合、適正露光であれば極限等級は同じであり、
得られる結果は同じである・・・

これは正しい理論かもしれませんが、10cmの分解能は1.160"角です。
6cmでは1.933"角しかありません。
大口径、長焦点、明るいF、微細撮像素子、補償光学系、
様々な画像復元処理を使えるならば、口径こそ望遠鏡の性能指標
という考え方は間違っていないと思います。

コメント (30)
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天文リフレクションズというサイトについて

2018-03-30 09:45:00 | ノンジャンル
なんか最近急にアクセス数が増えていると思ったら、
天文リフレクションズというサイトからの訪問が多いようです。
http://reflexions.jp/tenmon/articles.html?uniqueTag=NywuGCxxZe
記事を更新するとブログトップに現れることから、検索エンジンに
登録されているのだと思いますが、一言連絡をするのが礼儀では
ないかと思います。
私のブログはリンクフリーともダメとも明記していないですが、
ただのリンク程度ならとにかく、検索エンジンに登録するなら
ひとこと了承を受けた方が良いと思いますよ。

このサイトが何の目的で運営されているのか知りませんが、
天文ガイドと似たようなレイアウトで記事があるので、
誠文堂新光社と関係があるのでしょうか?
”編集部”とあるので営利目的なのかな?
良く分からん。
ネットであっても挨拶はマナーだし、
”お前のブログを検索エンジンに登録してやったぜ”的な考えは
有難くないです。
メディアのおごりを感じてしまい、あまり気持ちの良い物では
ありません。
サイトの内容は面白いし有用だと思うので良いのですが、
つまらない所でトラブらないように気を付けてた方が良いでしょう。


コメント (4)
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