地元にとってはとても大事な本なのですが、長らく手に入らないままだった本、津本陽著『天狗剣法』が文庫化されて、ようやく手に入るようになりました。
これも発売元のPHP研究所が、今まではどちらかというとノンフィクション中心で、フィクションをカバーする領域がなかったところPHP文芸文庫という新しいラインナップを出し、受け皿ができたおかげかもしれません。
以下、文庫版カバーより引用
法神流は、上州(群馬県)赤城山で楳本法神が創始した実践的剣法。数ある門弟のなか、法神が二代目として育てたのが須田房之助である。若き日から無敵を誇り、法神の苛烈な指導を経て人間ばなれした強さを得た房之助だったが、江戸へ出て開いた道場が隆盛を誇ると、他流から執拗かつ卑劣な陰謀を仕掛けられる。そのとき房之助は・・・
末流が昭和まで剣名をとどろかせた流派の、最強剣士の生涯を描く。
実際にいきた事件を取材して書かれた小説なので、わたしたちは地元贔屓で見がちですが、講談話のような誇張があるわけではありません。
是非、群馬県下中をはじめ、より多くの方に読んでもらいたい本です。
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津本 陽 | |
PHP研究所 |
天狗剣法 法神流 須田房之助始末 | |
津本 陽 | |
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(法神流は目指す剣法とは)
一日二十里(約80キロ)を歩いたのち、戦場で敵とわたりあえるだけの、基礎体力を養うことである。
陰体というのは、夜間の稽古である。法神流には百夜鍛錬という稽古があった。百日間、夜起きていて昼間に眠る。その稽古をおさめると、夜中も昼間も同様に行動できるようになる。高弟になると、多人数を相手に刃引きの真剣を用い型稽古をする。この危険きわまりない稽古は昼間ばかりでなく、夜間も行われた。夜稽古は、打ちこまれる刃の刃風を聞いて応対しなければならない、正気の沙汰ではないすさまじさであった。
上州には、有名な馬庭念流もありますが、どちらも実践的な剣法で、江戸の名門道場の剣士たちを軽くあしらって負かした話も多い。
現代に受け継ぐ道場も開かれています。
アンビシャスMIYAMAさんのブログに詳しく活動が紹介されています。
【追記】 残念ながら、2016年末時点で『天狗剣法』は品切れ中です。
その替わりというわけでもありませんが、アンビシャスMIYAMAさんから、以下のすばらしい本があることを教えていただきました。
間明修二(まぎらしゅうじ)著
『我思う、故に我幕末にあり』 文芸社
『我思う、故に我幕末にあり』 文芸社
定価 本体800円+税
なかなか史実をよくふまえたフィクションであるとの紹介でしたが、読んでみて驚きの作品でした。
構成、ストーリー、史実の織り交ぜ方、人物描写、どこをとってもとても完成度の高いものです。
わたしは、名の知れた作家でさえ、現代作家の場合は満足できる作品に出会うことは少ないのですが、本作品はとても気持ちよく一気に読み通すことができました。
フィクションとはいえ、中沢琴の生きた時代、歴史の境遇も実に活き活きと描かれています。
残念ながら、このすばらしい著者については石川県出身、神奈川県在住ということ以外、情報がありません。
NHKのBSプレミアムで放送のドラマ「花嵐の剣士」をみて中沢琴や法神流に興味を持たれる人がいたら、是非おすすめしたい1冊です。
(以上、正林堂ブログ「正林堂 本の気休め」より加筆転載)
追記
法神流発祥の地、旧赤城村内の深山の里を訪ねてきました。
最初に八坂神社と八幡宮のお宮があり、その右には法神流の伝来碑
その左手からさらに上に上がる階段があります。
さらに、この右の階段をさらに200段ほど登ります。
刀を形どった木が手前に奉納されてます。
格子の間から中を覗くと、手前のアンテナが邪魔してますが、すごいものがありました。