6,パンチ穴を通してリボンを表側へ
かつて若い頃、電車中で読書をする機会が多かったときは、私にとってブックカバーはなくてはならないものでした。ところが、ほとんど家の中でしか本を読む機会のない今の暮らしでは、原則としてブックカバーを利用することは滅多にありません。カバーがかかったままでは、それが何の本か分からなくなり、必要な本が行方不明になってしまうことが多いからです。
それでもごく稀にですが、カバーを必要とすることがあります。
それは、やはりカバーとしての機能を求める時で、読んでいる間、少しでも大切な本を痛めたくない場合や、タイトルを他人に見られたくない場合、あるいは表紙デザインのつまらない本を見せかけ化粧をするときなどです。
既製商品のブックカバーで一番のお気に入りは、この正倉院宝物のブックカバー。
デザイン、使い勝手、手触りともにとても良いです。
以前はお気に入りの本屋のブックカバーをよく使っていたものですが、いつからとなくそれまでのお気に入りの本屋のブックカバーも飽きてきてしまいました。
どうしても業務で作られブックカバーというのは、不特定の人に利用してもらう都合からか極端に好みが分かれるようなデザインは使えず、どちらかというと地味な味わいが求められるからです。
そこで、ちょっとだけ踏み込んだブックカバーデザインはできないものかと十年以上前に試作してみたのが、下の王羲之の書をあしらったもの。
気に入ったデザインをただ切り貼りして色紙にコピーしただけのものです。
そうしたやり方で何種類か作ってみた記憶があります。
でも、これは紙質や色など間にあわせのものであったため、あくまでも試作の域にとどまるものでした。
それがあるときから急に、試作の域を超えたレベルのブックカバーを手にできるようになりました。きっかけは、ポスターやチラシなどのデザインを考えているときに大量に出る試し印刷、色校正の紙です。
次の写真のカバーデザインは、日本美術の中でも私の一番のお気に入り。世界美術史の中でも最高峰に位置するのではないかと思ってる本阿弥光悦と俵屋宗達の最強コンビによる傑作。
これを家の障子に使おうと思って、ネットで検索した画像を印刷したものです。
その中で、障子の桟に寸法がぴったり合わなかったものなどをブックカバーにしました。
本来の使用先はこちら
その後、ポスターやチラシのデザインをするたびに、校正などで何度も印刷訂正したものがたまり、もったいないので、それらをブックカバーとして使うようになりました。
どんどんブックカバーの種類が増えるのは、様々なデザインの印刷物をつくる機会が増えたこともありますが、それ以上に、あくまでも個人で使用するものなので、どんな意匠・デザインを使おうが著作権を気にすることなく利用出来ることにもあります。
おかげで、これまではなかなかなかった攻めのデザインを使えるようになりました。
このカバーの元は、
拡大印刷したら、写真がピンボケだったものです。
気がつけば、今の私のライフスタイルでは原則としてブックカバーは使わないと言っていたのが、いつの間にか幾つものブックカバーをタイトルがわからない不自由を感じながらも使用するようになってしまいました。
いくつかのプリンター設定の違いを使いこなせていないので、幸か不幸かこのところブックカバーは増える一方です。
カバーをかける新しい楽しさを発見することができましたが、カバーだらけの本が並ぶ本棚など実用性はないので、今後しばらくの間は新次元の攻防が続くことになりそうです。
雑誌付録のカレンダー、日本美術襖絵を利用したブックカバーなど、身近にある気に入ったデザインのものをいろいろ試してみるのも楽しい。
なにかと雑多な活動をしている私の場合、その都度、自分をどう説明するか
名刺の使い分けには苦労しています。
仕事や活動分野に応じて何種類かの名刺をつくり使い分けたりしていましたが、
どうも何種類も持ち歩くことも面倒で、なかなかうまく活用できないものです。
そこで十年ほど前に、すべてを一枚にまとめようと、4つ折り10面の名刺を作ってみました。
シミのついた色褪せた紙の写真をデザインとして地に印刷。
作るたびにデザインは少しずつ手直しを重ねてます。
裏表カラー印刷で、折り作業とかもあるので
かなりの手間とコストがかかっています。
その後、もう少し手間をはぶける二つ折りの枝折り使用の名刺をつくりました。
でもこちらは、持ち歩く機会も少なく、ほとんど活用はできませんでした。
ところが、十年も経てば仕事の軸足も活動スタイルもかなり変わります。
そこでまた新しく作り直すことにしました。
前回は両面プリントアウトの手作業で作りましたが、ネット印刷に出した方が安いかもしれません。
2021年改訂
正林堂とタヌキ会議を大幅に変えて、QRコードを入れました。
表面版下
裏面版下
二つ折りくらいの名刺はしばしば見ますが、四つ折り10面の名刺というのは、まだ見たことがありません。
はたして受け取った側はどう感じるでしょうか。
管理のし難さから迷惑がられるかもしれませんが、世の中全体が
一つの仕事や一つの活動で自分を表現することが難しくなり出しているので、
もしかしたらこれからは次第にこういったスタイルの名刺も特殊ではなくなるかもしれません。
私自身、仕事に限らない自己表現のスタイルは大事な課題なので、
手間を惜しまずにさらに練りこんでいきたいと思っています。