とうとう大国アメリカの衰退の時代が到来し、これまで日米同盟依存体質からの脱却などという話をしようものなら、現実をわきまえない議論だと袋叩きにあっていたものですが、ようやく堂々と語れるときがきました。
かといって覇権大国アメリカの地位は低下しても、世界の国ぐにのなかでは、依然アメリカが、等分はロシア、中国などとならぶ大国であることに変わりはありません。
しかしこのような時代にこそ、本来の独立国家としてのそれぞれの国ぐにのあり方や、覇権に左右されない国際協調のあり方などが真剣に議論されるべきだと思います。
ここでこれからの時代の日本の姿をとらえなおすうえでも、日本の実像というものを再度、冷静に見ておくことはとても重要なことです。
まず、日本という国の客観的な姿について、以前、どこかで引用したことのある文ですが、基本的なことなので、再度ここに掲載させていただきます。
北緯45度31分(宗谷岬)から20度25分(沖ノ鳥島)および東経153度58分(南鳥島)から122度56分(与那国島)まで、そのうちに広大な海洋を抱えるとはいえ、この日本の範囲は、南北約3500キロメートル・東西約3000キロメートルにおよぶ。
より具体的に日本の国土面積は約37万8000平方キロメートル、そこに約1億2600万の人口を擁する。
国の長さが3000キロメートルを超す国は、中国やロシア・アメリカなどの超大国を除けば、インドネシア・チリ・アリゼンチンなどしかない。
また世界191ヶ国のうち日本は、面積でも上位ほぼ四分の一に近い54位、人口は8位にランクされる。
これは第二次大戦後、アジア・アフリカに小さな独立国は急増したことにもよるが、面積的に見ても、むしろ日本は大きな国の部類に属している。
身近な東アジア周辺で較べれば、台湾の面積はほぼ九州程度で、北朝鮮の人口は首都圏のそれに近似する。西欧でも、面積はフランス、スペイン、スウェーデンに次ぐが、人口で日本を超える国はなく、例えばオーストリアは、面積・人口とも北海道に等しい(『日本国勢図会』2000年度)。
つまり日本は決して小国などではなく、経済的にも物理的にも大国なのである。
原田信男『いくつもの日本 1 日本を問いなおす』「まえがき」より
岩波書店 2002年
さらに主要国の基礎データを『日本国勢図会』の2008/09年版から
面積 人口 65歳以上人口割合 就業者数
(千k㎡) (千人) (%) (千人)
日本 378 127,770 21.5 63,820
中国 9,597 1,314,480 8.1 737,400
韓国 100 48,297 9.9 23,151
インド 3,287 1,117,734 4.8 ・・・
シンガポール 0.7 4,484 8.2 1,797
タイ 513 65,306 7.0 36,345
インドネシア 1,905 222,051 4.8 95,177
マレーシア 330 26,640 4.3 10,275
イギリス 243 60,587 16.0 28,166
フランス 552 61,353 16.3 24,919
ドイツ 357 82,370 19.3 37,322
イタリア 301 58,880 19.9 22,988
スペイン 506 44,097 16.6 19,748
オランダ 42 16,346 13.9 7,784
ロシア 17,098 143,150 13.9 68,834
アメリカ合衆国 9,629 299,398 12.4 144,427
カナダ 9,985 32,980 13.1 16,484
メキシコ 1,964 104,874 5.0 42,198
ブラジル 8,515 186,771 6.1 84,596
オーストラリア 7,692 20,701 13.0 10,154
ヨーロッパ主要国の生産人口はどこも日本のおよそ半分程度。
この生産人口や国土の広さから考えると日本と韓国との実力の差はそれほど感じられませんね。
これだけ大国としての基礎条件を備えていながらも、日本の労働生産性は、決して高い方であるとはいえないことも再度、強調しなければなりません。
OECD加盟諸国のなかで、日本の労働生産性は19位。
製造業はオイルショックやドルショックなどの試練をその都度乗り越えて、しっかりと効率的に儲ける仕組みをつくってきたのに較べて、非製造業の立ち遅れが指摘されています。
こうした数字を見比べてみると、保有資源と生産者人口の面で、中国、ロシア、アメリカ、インドの圧倒的優位(?)は当面変わらないものの、圧倒的多数の世界の国ぐにから見れば、たしかに日本は大国といっても過言ではありません。
九州や北海道クラス、あるいはそれ以下の大きさの国ぐにのほうが、むしろ平均的な国家像でるといえるかもしれません。
にもかかわらず、世界競争の主軸が製造業中心の時代からサービス業重点に移っていくにしたがって日本の国際競争力が衰え続けている流れは否めません。
日米同盟中心の発想もそうですが、人がどこに所属しているか、何になら参加できるかで判断できる時代は終わり、自分が他人に対して、あるいは社会に対して、何をすることができるのかをシビアに問われる時代に世の中全体はすでに変わってきています。
今の国会にこうした議論を期待することはできそうにない悲しい現実もありますが、日本という国が、市場縮小の流れの時代のなかでどう自立してなおかつ競争力のある社会を築いていくかを考えるためには、ソフト分野でのイノベーションがとても大事になってきます。
人口が多い、国土が広い、資源が豊富であるといった基礎数字だけではない、真の魅力ある社会と国家像を見据える議論がしたいものです。
かといって覇権大国アメリカの地位は低下しても、世界の国ぐにのなかでは、依然アメリカが、等分はロシア、中国などとならぶ大国であることに変わりはありません。
しかしこのような時代にこそ、本来の独立国家としてのそれぞれの国ぐにのあり方や、覇権に左右されない国際協調のあり方などが真剣に議論されるべきだと思います。
ここでこれからの時代の日本の姿をとらえなおすうえでも、日本の実像というものを再度、冷静に見ておくことはとても重要なことです。
まず、日本という国の客観的な姿について、以前、どこかで引用したことのある文ですが、基本的なことなので、再度ここに掲載させていただきます。
北緯45度31分(宗谷岬)から20度25分(沖ノ鳥島)および東経153度58分(南鳥島)から122度56分(与那国島)まで、そのうちに広大な海洋を抱えるとはいえ、この日本の範囲は、南北約3500キロメートル・東西約3000キロメートルにおよぶ。
より具体的に日本の国土面積は約37万8000平方キロメートル、そこに約1億2600万の人口を擁する。
国の長さが3000キロメートルを超す国は、中国やロシア・アメリカなどの超大国を除けば、インドネシア・チリ・アリゼンチンなどしかない。
また世界191ヶ国のうち日本は、面積でも上位ほぼ四分の一に近い54位、人口は8位にランクされる。
これは第二次大戦後、アジア・アフリカに小さな独立国は急増したことにもよるが、面積的に見ても、むしろ日本は大きな国の部類に属している。
身近な東アジア周辺で較べれば、台湾の面積はほぼ九州程度で、北朝鮮の人口は首都圏のそれに近似する。西欧でも、面積はフランス、スペイン、スウェーデンに次ぐが、人口で日本を超える国はなく、例えばオーストリアは、面積・人口とも北海道に等しい(『日本国勢図会』2000年度)。
つまり日本は決して小国などではなく、経済的にも物理的にも大国なのである。
原田信男『いくつもの日本 1 日本を問いなおす』「まえがき」より
岩波書店 2002年
さらに主要国の基礎データを『日本国勢図会』の2008/09年版から
面積 人口 65歳以上人口割合 就業者数
(千k㎡) (千人) (%) (千人)
日本 378 127,770 21.5 63,820
中国 9,597 1,314,480 8.1 737,400
韓国 100 48,297 9.9 23,151
インド 3,287 1,117,734 4.8 ・・・
シンガポール 0.7 4,484 8.2 1,797
タイ 513 65,306 7.0 36,345
インドネシア 1,905 222,051 4.8 95,177
マレーシア 330 26,640 4.3 10,275
イギリス 243 60,587 16.0 28,166
フランス 552 61,353 16.3 24,919
ドイツ 357 82,370 19.3 37,322
イタリア 301 58,880 19.9 22,988
スペイン 506 44,097 16.6 19,748
オランダ 42 16,346 13.9 7,784
ロシア 17,098 143,150 13.9 68,834
アメリカ合衆国 9,629 299,398 12.4 144,427
カナダ 9,985 32,980 13.1 16,484
メキシコ 1,964 104,874 5.0 42,198
ブラジル 8,515 186,771 6.1 84,596
オーストラリア 7,692 20,701 13.0 10,154
ヨーロッパ主要国の生産人口はどこも日本のおよそ半分程度。
この生産人口や国土の広さから考えると日本と韓国との実力の差はそれほど感じられませんね。
これだけ大国としての基礎条件を備えていながらも、日本の労働生産性は、決して高い方であるとはいえないことも再度、強調しなければなりません。
OECD加盟諸国のなかで、日本の労働生産性は19位。
製造業はオイルショックやドルショックなどの試練をその都度乗り越えて、しっかりと効率的に儲ける仕組みをつくってきたのに較べて、非製造業の立ち遅れが指摘されています。
こうした数字を見比べてみると、保有資源と生産者人口の面で、中国、ロシア、アメリカ、インドの圧倒的優位(?)は当面変わらないものの、圧倒的多数の世界の国ぐにから見れば、たしかに日本は大国といっても過言ではありません。
九州や北海道クラス、あるいはそれ以下の大きさの国ぐにのほうが、むしろ平均的な国家像でるといえるかもしれません。
にもかかわらず、世界競争の主軸が製造業中心の時代からサービス業重点に移っていくにしたがって日本の国際競争力が衰え続けている流れは否めません。
日米同盟中心の発想もそうですが、人がどこに所属しているか、何になら参加できるかで判断できる時代は終わり、自分が他人に対して、あるいは社会に対して、何をすることができるのかをシビアに問われる時代に世の中全体はすでに変わってきています。
今の国会にこうした議論を期待することはできそうにない悲しい現実もありますが、日本という国が、市場縮小の流れの時代のなかでどう自立してなおかつ競争力のある社会を築いていくかを考えるためには、ソフト分野でのイノベーションがとても大事になってきます。
人口が多い、国土が広い、資源が豊富であるといった基礎数字だけではない、真の魅力ある社会と国家像を見据える議論がしたいものです。