下牧人形浄瑠璃の練習風景を見させていただきました。
地方に伝承される人形芝居のなかでも、三人遣いの本格的な浄瑠璃人形です。
昨年は練習期間中来ることが出きなかったので、1月になってから、もうそろそろ始まっているのではないかと電話で確認し、早速、お邪魔させていただきました。
その日の練習演目は、「阿波の鳴門」
これは、阿波の鳴門で使用するものではありませんが、よく見ると本格的なつくりであることがわかります。
「阿波の鳴門」は、阿波藩のお家騒動を題材にした物語。
もとの話は十段あるようですが、現在は通常、八段目のみが上演されています。
短いながら、見せ場も多い作品です。
内紛に揺れる阿波藩のなかで、家老桜井主善のあずかる玉木家の重宝、国次の刀が何者かに盗まれる。
桜井主善は、元家臣である十郎兵衛に刀を探すように頼む。
十郎兵衛と妻のお弓は、娘のお鶴を祖母に預け、刀を探し始めるが、その方法は名前を変えて盗賊の仲間になり、質屋などの蔵に忍び込み探すものだった。
ある日、お弓のもとに追っ手が迫っているので早く逃げるように知らせが来る。
そこへ巡礼姿の女の子が門口に立つ。
娘の方言が気になり「国はいづく?」と訪ねると、なんと阿波の徳島だと言う。
自分も徳島だが、どうして父や母と一緒に巡礼しないのかと訪ねると、
「イエイエ、その父様や母様に逢ひたさ故、
それでわし一人、西国するのでござります」
この娘が我が子であることに気づくが、盗賊となって追われる身ゆえ名乗りでることができない。
「これほど親を慕う子を
何とこのまま去なされう
いつそ打ちあけ名乗らうか」
泣く泣く別れ行く跡を
見送り見送り延び上がり、
「コレ娘、ま一度こちら向いてたも
ま一度こちら向いてたもいの」
上演では黒子の人たちの真剣な表情がとてもいい。
なんとかこの人形のすばらしさ、それを支える人たちの姿を、もっと多くの人たちに伝えたいものです。