お月さまは、いついかなるときでも、地球の方に正面(?)の顔を向けています。
満月や三日月と姿かたちは変えながらも、
決して横向きになったり、裏側を見せたりすることはありません。
寸分の狂いも無く、常に地球の方に顔(?)を向けています。
相当な恥ずかしがり屋なのか、
どんなことがあっても裏側は見られたくない相当な事情があるのか。
現代科学は、そのあたりの研究が未だにちっとも進んでいません。
寸分の狂いも無くと書きましたが、
実際には「ひょう動」といわれる揺れがあり、
首を上下・左右に振るように見えるため、
59%くらいの表面は、地球側から見ることができるようです。
ということは、何十億年という間、正確にまわっているとはいえ、
必ずしも同じ状態が続いているわけではないということです。
実際に、月は少しずつ地球から離れていくわけだし、
他の天体の影響も無いわけではない。
意地になって地球には絶対裏側は見せないと言い張ってきた月も、
もしかしたら、
ちょっとした気のゆるみで、
少しだけ・・・
てな日もあるかもしれません。
もちろん、何億年もの間、信念を貫いてきた月ですから、
安易に油断することなど、滅多にあるものではありません。
私たちは気づいています。
満月や三日月など、世の人びとが美しい月に注目しているときになんて
絶対にそんなすきを見せることはありえません。
新月のような誰も気づかないようなときでなければ、
長い緊張を解いてくれることなどありえないのです。
しかも、私たちは、そのときを真剣に注視して見続けたりしてはいけません。
誰も注目などしていないよう月に思わせ続けなければならないのです。
それはとても根気のいることです。
それでも、月からすれば、
万が一にもそんな油断した瞬間を見られてしまったなら、
もう何億年来、守り通した立つ瀬がなくなってしまうわけですから、
あたし、もう金輪際「地球とはツキ合わない」
といって火星あたりに飛んでいってしまうかもしれません。
そんなことになったら大変です。
我われはもう、うまい酒が呑めなくなってしまいます。
ですから、わたしたち月夜野町の住人は、
決して月に悟られることのないように、
静かに、
静かに、
休むことなく
月をながめ続けるのです。