花の四日市スワマエ商店街

表参道スワマエ商店街会長のひとり愚痴

貸本屋の時代⑤前谷惟光

2024年08月27日 | レモン色の町

戦後の焼土からの立ち上がりに“笑い”は、大切なものだった。貸本の世界でも“ユーモア作品”は珍重された。杉浦茂の“猿飛佐助”はひょうひょうとした画風で、亀の甲羅のように布団をかぶって一言。「寝るより楽は無かりけり」のセリフが忘れられない。

さて、前谷惟光の“ロボット三等兵”もよく読んだ。前谷惟光は大正6年生まれで、太平洋戦争で徴収され、ビルマ戦線では九死に一生を得ている。

路地で、板塀を背に 二人の男がアイスキャンディを売っている。一人の男がアイスを食べたくなった。売り物に手を付けると売り上げに響く。そこで持ち合わせの5円で、隣のキャンディを買い求める。と、それを見ていたもう一人が、あまりおいしそうだったので、手元にあった5円で、隣のキャンディ1本を買い求める。お互いが、こうして相手のキャンディを食べ尽くした。箱の中を見るとからっぽである。「さぞかし今日はよく売れた」と財布を見たら、一人は5円で、もう一人はゼロだった。バカバカしい笑いは、子供たちの心を平和にしてくれた。

 

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