TATSURO SHIBUYA + ARCHITECTURE LANDSCAPE DESIGN STUDIO

アーキテクチュアは建築、ランドスケープは景観。風景を生かす建築環境デザインに取組んでいます。

愛知県立芸術大学/時を経て魅力が増したエイジング建築の好例

2010-11-20 23:50:03 | サステナブル建築
東京藝大の元倉先生にお誘いいただいて、愛知県立芸術大学の見学会に参加してきました。
言わずもがな、吉村順三さんの代表作です。

キャンパスマスタープランは南北に軸をとり、広大な敷地の中にそれぞれがお互いに見通せるような適切な距離感を保ちつつ、のびやかに配置された建物群。

設計にも関わられた三沢浩さんの「痩せ型の建築」をつくろうとした。という解説は非常にわかりやすかったです。
ムダをそぎ落とし、非常に抑制の効いた機能的なデザイン。そして、自然光と身体性にあふれた室内環境は、とても心地よい落ち着く空間でした。

設計者の息づかいが聞こえるようなきめ細やかなディテール。
内装の木材の使い方。そして色使い。
全てがやさしく調和していて美しい。
竣工して約40年を経てもけっして古さを感じさせないような空間の力にとても感動しました。

ひとつひとつの校舎、ひとつひとつのディテールが全て教材になるようなキャンパス。
こんなキャンパスで学べる学生は非常に贅沢だなぁとつくづく感じました。

お天気にも恵まれ、にゃんこも気持ちよさそうに日向ぼっこしていました。

愛知芸大では、新校舎の建設が暫時進められていますが、こんなにもすばらしい既存の計画を全く無視したようなマスタープランとどうしようもない新校舎の建築には非常に落胆しました。

単純に経済的価値だけでは計れない社会的、文化的価値がこの建築にはあります。保存運動も行われており、構造的な問題や改修費用の捻出など、これからが正念場だと思います。

短期的な費用対効果で安易に建て替えをするのではなく、長期的価値観を持つこと。
「優れた建築を自分たちの子供の世代に残した!!」ということを誇れるような大学になってほしいと思いました。

こうした「残したくなるような魅力的で美しい建築」という価値観を建築に関わるひとりとして、これからも伝えていきたいと強く思いました。

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