さっそくゼンショーがプレスリリースを出した。小川賢太郎会長の「3K」発言についてだ。「本日の朝日新聞記事について」
さて末尾に「「日本人はだんだん3Kの仕事をやりたがらなくなっている」という部分については、記事(5月17日号の東洋経済の記事「誤解だらけの介護職~もう3Kとは言わせない」と題した特集記事)にそういう趣旨が書いてあったと述べたものであり、小川の所感を述べたものではありません。
また、文脈としても「すき家」のことではなく日本の労働市場全般に関する一般論を述べた中で語ったものです。」
さてまず第一に、私は朝日ではなくて15日のFNNの記事でした。ここでも朝日新聞と同様の批判がされているのですが、朝日だとなぜ反応するのでしょうか。朝日の記事は読んでいないので何とも言えないのですが、このFNNの記事に至っては会長と社長を取り違えていますね。
基本的に朝日だから反応したと思われたらその時点で、負けでしょう。ゼンショーは右に偏っている、そう思う人を増やすだけです。おまけに「国民を搾取する悪辣な資本家」という考えは左だけのものではありません。「国民の安寧を願う陛下のおこころを無にする資本家」と言う文脈も作れます。ほんと左と右は裏表だね。
この点は「報道機関において弊社会長の言葉を恣意的に引用する例があり、記者会見でのやり取りを全文掲載いたします。」これで良かったと思います。
2番目に、小川賢太郎会長という現代の立身出世伝を持つ、彼がここまで劣化したのかと驚いたと言うのが私の意見です。会長職なので、自社以外にも世の中全般を考えながら会社の方針を導いて行く立場なのでしょうが、それにしてもあんまりです。
それでは会社のテーゼはなんでしょうか。
「世界から飢餓と貧困を撲滅する」と言う理念に基づき、食で社会に貢献します。
これは有名な社の方針です。このために力を持たなければ行けないという宿命も背負い、更に我々は社会インフラになるという方針があるわけです。社会インフラとしての責務は、食の安全・緊急時での食の提供・そしてどこでも早く安くおいしくだせれるシステムの構築です。
この事は、ここ5年でようやくコンビニ業界やイオンなどの巨大流通小売りが気がついた事を、創業以来やっている会社でもあるのです。この壮大なテーマは一店舗目からあったというのだから、会長は凄い人です。
この応答の最後の方にある「インフラとして機能させていく」と言う言葉は、この文脈の中にあるのです。ただこの会見で、この「インフラ」が逆転して働くと思うのです。この食の提供と職の提供と言う考えは素晴らしいものですが、職のあり方と言う考えにまでは至っていなかったのかなと考えます。
貧困対策のみだったらいいわけです。しかし、日本ですから誰でももう少しいい仕事をしたいと思うわけです。そこのはある程度の裁量権があるわけで、その中でいいサービスをしたいとか考えて行くのが日本のサービス業だと思うのですが、「すき家」のシステムにはそう言ったものは全くないように感じています。
これも業界の厳しい競争の結果、システムを研ぎすませていったから起きた事だと思います。この会見でもマクドナルドと比較した質問でしたが、マクドナルドのオペレーションは、チーム全体で動くシステムです。声かけが重要なポイントになっています。ところが牛丼業界では、一人でも出来るオペレーションに深化してしているのが現状です。ここに根本的な何かがあったから、今回の人手不足騒動になったと思っています。
ただそれでは、貧困対策のインフラとして成り立っていたのかと言えば、全く成り立っていないわけです。それは賃金の話ではなくて、一人で「すき家」のオペレーションを出来るほどの人だったら、他でも出来るわけです。実は優秀なバイトを欲しがっていたと言うのが実態で、貧困対策では全くないと言う事なのです。
ここが企業理念が逆転して行く、と言う事です。
3番目ですが、会長が引用した記事を明快にしないで発言したのは失言です。この記事に同意していると見なされるからです。なので他のマスコミも同様の反応をしているのではないのでしょうか。
実は最近同様の例を見ているわけです。「ワタミ」騒動ですね。現在「ワタミ」から離れている渡邉美樹元会長ですが、社員の過労死事件の際にトンチンカンな事ばっかりしゃべっていたのでかなりな批判を受けました。これが現在の「ワタミ」の評判の悪さに繋がっていると思います。
ただこのトンチンカンにはある筋があったと思います。それは「ワワミ」の企業理念でした。今現在更に壮大になっているのではじめは何だったか思い出せないのですが、「たくさんの“ありがとうを集めるグループになろう」だったと思う。今では世界で一番がつくのだが、この企業理念が会社を蝕んでいるように感じます。
さてなぜ失言かと言えば、浮ついた高所の意見になっていたと言う事です。会長としてゼンショーグループのリアルな情報が入っているはずです。でも東洋経済の記事がすぐに出てくるようでは、そうとう浮ついているのか、もしくは孤立しているのでしょうか。そう受け止められる、企業広報でした。
5/17追記
今回の件では、若年人口の減少で人手不足が起きている。デフレ型の企業経営からインフレ型の攻めの企業経営に移行するべきだとか、様々言われている。だが考えなければ行けない動きがある。ワタミとユニクロの正社員拡充計画だ。ワタミは地域限定正社員制度を、ユニクロは地域限定社員と国内限定社員と海外エリート組と3つのカテゴリーを用意し、その間の流動性まで認めようと言う大胆なものだ。
特にユニクロは1万6千人を正規雇用すると発表した。柳井会長の発言は大きな波紋を呼んだ。
冒頭の部分を引用する。
最高の商品、最高の店舗、最高の接客、顧客の最高の体験…それらを通じて世界一になる、そのためには従業員には努力してもらわないと行けない。だからそれに見合った待遇を与える。個性やライフステージによっては地域限定から国内限定に移る事も可能だし、グローバル人材への転換も可能なシステムにしますよ、って実はハードルが高い目標だ。昔のユニクロは急成長したので、バイトから正社員へとか、パートから店長へとかかなり雇用体系の流動化が多かった。それが安定して以降流動性も失われつつあるのではないのか。それを打破するために様々な手を打って来たと思うが、今回のこの決定が最大だろう。
ワタミとともにブラック企業批判から逃れるためと悪口を叩かれたが、実際の所は職の内容を見つめ直した展開になっている。ワタミの場合にはもう少しレベルが低いが、実際問題としてマネージャークラスが少なすぎるのが問題だったわけで、その改善を狙い、店舗の魅力を引き上げようと言うのが本来の主旨だと考えている。
ゼンショーグループはその点で行くと、企業買収などで更に拡大している。それが足下を見失わせていたとも考えられる。
イオンのすき家だが、結局開店・閉店時の店頭前の看板の出し入れすらめんどくさがるアルバイトがいると言う事だ。その程度のバイトだからすぐに人が辞めて行く、そうとも言える。
記者)たとえばマックなどは「ない」と言っているんですけども、24時間というのが大変なのか、定着率とか、そういうところにも問題があったのか・・・
回答)おっしゃるように、24時間営業、深夜というものはいちばん難しいですね。24時間営業をやっているコンビニとか、スーパーマーケットとか、そうとう地方でもいま大変だという話をうかがっています。「日本人がだんだん3Kをやりたがらない」と昨日どこかの記事にも載っていましたけれども、労働力のミスマッチですよね。事務職にはなりたい人がいっぱいいて、だけど現場の仕事はミスマッチでやりたい人が少ない、という現状は確かにあると思います。
ただまあ、それを言っていてもしょうがないので、その中で経営努力をしてきたわけですし、これからもしていくということで、インフラとして機能させていくということが我々の責任だと思っています。
さて末尾に「「日本人はだんだん3Kの仕事をやりたがらなくなっている」という部分については、記事(5月17日号の東洋経済の記事「誤解だらけの介護職~もう3Kとは言わせない」と題した特集記事)にそういう趣旨が書いてあったと述べたものであり、小川の所感を述べたものではありません。
また、文脈としても「すき家」のことではなく日本の労働市場全般に関する一般論を述べた中で語ったものです。」
さてまず第一に、私は朝日ではなくて15日のFNNの記事でした。ここでも朝日新聞と同様の批判がされているのですが、朝日だとなぜ反応するのでしょうか。朝日の記事は読んでいないので何とも言えないのですが、このFNNの記事に至っては会長と社長を取り違えていますね。
基本的に朝日だから反応したと思われたらその時点で、負けでしょう。ゼンショーは右に偏っている、そう思う人を増やすだけです。おまけに「国民を搾取する悪辣な資本家」という考えは左だけのものではありません。「国民の安寧を願う陛下のおこころを無にする資本家」と言う文脈も作れます。ほんと左と右は裏表だね。
この点は「報道機関において弊社会長の言葉を恣意的に引用する例があり、記者会見でのやり取りを全文掲載いたします。」これで良かったと思います。
2番目に、小川賢太郎会長という現代の立身出世伝を持つ、彼がここまで劣化したのかと驚いたと言うのが私の意見です。会長職なので、自社以外にも世の中全般を考えながら会社の方針を導いて行く立場なのでしょうが、それにしてもあんまりです。
それでは会社のテーゼはなんでしょうか。
「世界から飢餓と貧困を撲滅する」と言う理念に基づき、食で社会に貢献します。
これは有名な社の方針です。このために力を持たなければ行けないという宿命も背負い、更に我々は社会インフラになるという方針があるわけです。社会インフラとしての責務は、食の安全・緊急時での食の提供・そしてどこでも早く安くおいしくだせれるシステムの構築です。
この事は、ここ5年でようやくコンビニ業界やイオンなどの巨大流通小売りが気がついた事を、創業以来やっている会社でもあるのです。この壮大なテーマは一店舗目からあったというのだから、会長は凄い人です。
この応答の最後の方にある「インフラとして機能させていく」と言う言葉は、この文脈の中にあるのです。ただこの会見で、この「インフラ」が逆転して働くと思うのです。この食の提供と職の提供と言う考えは素晴らしいものですが、職のあり方と言う考えにまでは至っていなかったのかなと考えます。
貧困対策のみだったらいいわけです。しかし、日本ですから誰でももう少しいい仕事をしたいと思うわけです。そこのはある程度の裁量権があるわけで、その中でいいサービスをしたいとか考えて行くのが日本のサービス業だと思うのですが、「すき家」のシステムにはそう言ったものは全くないように感じています。
これも業界の厳しい競争の結果、システムを研ぎすませていったから起きた事だと思います。この会見でもマクドナルドと比較した質問でしたが、マクドナルドのオペレーションは、チーム全体で動くシステムです。声かけが重要なポイントになっています。ところが牛丼業界では、一人でも出来るオペレーションに深化してしているのが現状です。ここに根本的な何かがあったから、今回の人手不足騒動になったと思っています。
ただそれでは、貧困対策のインフラとして成り立っていたのかと言えば、全く成り立っていないわけです。それは賃金の話ではなくて、一人で「すき家」のオペレーションを出来るほどの人だったら、他でも出来るわけです。実は優秀なバイトを欲しがっていたと言うのが実態で、貧困対策では全くないと言う事なのです。
ここが企業理念が逆転して行く、と言う事です。
3番目ですが、会長が引用した記事を明快にしないで発言したのは失言です。この記事に同意していると見なされるからです。なので他のマスコミも同様の反応をしているのではないのでしょうか。
実は最近同様の例を見ているわけです。「ワタミ」騒動ですね。現在「ワタミ」から離れている渡邉美樹元会長ですが、社員の過労死事件の際にトンチンカンな事ばっかりしゃべっていたのでかなりな批判を受けました。これが現在の「ワタミ」の評判の悪さに繋がっていると思います。
ただこのトンチンカンにはある筋があったと思います。それは「ワワミ」の企業理念でした。今現在更に壮大になっているのではじめは何だったか思い出せないのですが、「たくさんの“ありがとうを集めるグループになろう」だったと思う。今では世界で一番がつくのだが、この企業理念が会社を蝕んでいるように感じます。
さてなぜ失言かと言えば、浮ついた高所の意見になっていたと言う事です。会長としてゼンショーグループのリアルな情報が入っているはずです。でも東洋経済の記事がすぐに出てくるようでは、そうとう浮ついているのか、もしくは孤立しているのでしょうか。そう受け止められる、企業広報でした。
5/17追記
今回の件では、若年人口の減少で人手不足が起きている。デフレ型の企業経営からインフレ型の攻めの企業経営に移行するべきだとか、様々言われている。だが考えなければ行けない動きがある。ワタミとユニクロの正社員拡充計画だ。ワタミは地域限定正社員制度を、ユニクロは地域限定社員と国内限定社員と海外エリート組と3つのカテゴリーを用意し、その間の流動性まで認めようと言う大胆なものだ。
特にユニクロは1万6千人を正規雇用すると発表した。柳井会長の発言は大きな波紋を呼んだ。
冒頭の部分を引用する。
まず、世界一を実現するために、あなたたち一人ひとりが考え方を変えないといけない。私も変えます。あなたも変えてください。
(中略)
この最高水準(のモノ作り)は、一足飛びには実現できません。少なくとも3年や5年はかかる。あるいは、一生作り上げられないかもしれません。けれども、それでも作り上げる。そのために働き方を変えないといけないと思います。
ここに集まった4000人以上、そして世界で働く7万人以上の人の夢を叶えるために、会場に集まった人たちがどう変われるか。
我々はベンチャービジネスで、しかも将来に夢を持っています。そんな会社は世界に何社もないでしょう。日本でも何社もない。そして我々は、グローバル企業になりたいと思っている。そのためには、一人ひとりの夢が叶わないとダメだと思います。
そのために商売の仕組みを変える。チェーンストア(経営)や製造小売業から個店経営や個人経営。そういった変化です。独立自尊の商売人に変わっていく。そういうことを、一人ひとりがやっていく。
最高の商品、最高の店舗、最高の接客、顧客の最高の体験…それらを通じて世界一になる、そのためには従業員には努力してもらわないと行けない。だからそれに見合った待遇を与える。個性やライフステージによっては地域限定から国内限定に移る事も可能だし、グローバル人材への転換も可能なシステムにしますよ、って実はハードルが高い目標だ。昔のユニクロは急成長したので、バイトから正社員へとか、パートから店長へとかかなり雇用体系の流動化が多かった。それが安定して以降流動性も失われつつあるのではないのか。それを打破するために様々な手を打って来たと思うが、今回のこの決定が最大だろう。
ワタミとともにブラック企業批判から逃れるためと悪口を叩かれたが、実際の所は職の内容を見つめ直した展開になっている。ワタミの場合にはもう少しレベルが低いが、実際問題としてマネージャークラスが少なすぎるのが問題だったわけで、その改善を狙い、店舗の魅力を引き上げようと言うのが本来の主旨だと考えている。
ゼンショーグループはその点で行くと、企業買収などで更に拡大している。それが足下を見失わせていたとも考えられる。
イオンのすき家だが、結局開店・閉店時の店頭前の看板の出し入れすらめんどくさがるアルバイトがいると言う事だ。その程度のバイトだからすぐに人が辞めて行く、そうとも言える。