家の家庭菜園が困ったことになっている。猫害が発生しているのだ。水遣りを頻繁にしても、禁避材を巻いてもやってくる。二日連続には参ってしまった。
猫を捕まえてもいいのだが、そうしたところで飼い主からクレームが来るだけだろう。あのひとはウチのカワイイ子をいじめた、と。写真を撮って飼い主にクレームをつけてもきっと「これはウチの子ではない、ウチの子はこんなことはしないお利口さんだ。この写真だけでウチの子と決めつける、お前の頭はおかしい」そう言われることだろう。一応手段としては猫が足を踏み入れないような、スパイク付きの防護シートがある。それを大々的に敷けばいいのだが、「猫がそこにおしっこするくらいで何を大げさな、猫が痛がったり怪我したりするのはかわいそうなのではないか?そんなことをするひとは性格がよほど捻じ曲がっているに違いない。そんなひとが近所に住んでいるなんて恐ろしいことだ。」そうなるかもしれない。
禁避材を進入路に多めに蒔いた。それでもダメだったら不織布でベタ掛けにしてしばらく様子を見よう。それでもダメだったらネコ避けの超音波バリアーと電気柵でも用意しよう。
「かわいいネコちゃんと、植物ととちらが大切なのかわかっていない。だいたい菜っ葉類は買ってくれば済むものでしょう。それをわざわざ自分で育てるなんて貧乏人だわ。貧すれば鈍する。そんな装備をするんだったら買ってきた方が安いのにわざわざそこまでするなんて気が知れないわ。やっぱりあの人おかしいのよ。きっと変態に違いないわ。きっとロリコンよ。そうに違いない!」
何をしてもダメになりそうな気がする。なお本当の変態のロリコンはともかくとして、2次元系ロリコンはかわいいというところに反応する傾向があり、かわいい小動物=ネコであり、美少女+ネコという組み合わせを開発してすでに40年以上経っている。なぜか美少女+イヌや美少女+ハムスターや美少女+リスは開発されていない。美少女+ウサギはないわけはないが、それは一時的なキャラ展開であって固定されたものではない。どうしてもお姉さん+ウサギ=ウホウホであって、かわいいからは除外される。その意味でロリコンのかなり多くは猫好きである。
こう書くことによって、さらなる世間からの誤解を生むのだろう。
まあここまでおかしなオバサンは近所には、いないわけでもないがなんとかなりそうな人だ。まあいない。とはいってもこの想定問答はよくある話だ。かわいいネコが粗相をするというのが思い至らないのと、ネコはかわいいという価値観が最上位にあるからこうなる。ただこういったところはわかりやすいが、食のブームになると全く分からなくなる。
みのもんたが、ココアは健康にいいと言い出した瞬間にココアがスーパーの棚から払底した事件があった。1)みのもんたという主婦の権威が、2)学術研究成果を踏まえて言い切った。というのことで起きた。実はここで重要なのはみのもんたが言ったからではなく。2)の裏付けがあるということだ。
フードファディズムという現象だが、ココアの時には誰もが砂糖のことを忘れていた。そこで次のチョコブームの時にはカカオ90%という極端な商品が発売された。さすがにそこまでではないが今でも70%の製品はある。この場合は、健康に悪そうだったココアとチョコが健康にいいという、以前は罪深い食品だったのが科学的なお墨付きを得て解禁されたというところもある。
そしてなのだが、だいたい健康に良さそうな食品というコンセンサスがある。ポリフェノールの抗酸化作用で、ブルーベリーの効能は宣伝されていたし、そういった前哨戦があった。ポリフェノールブームでワインもブームになった。トマトのリコペンもそうだが、色素が意外な役割を持っていたというのは、食物繊維の発見とビタミン類の発見以来の成果かもしれない。
私の周りの男性では、こういったファディズムとは少し距離を置いている人が多い。ただなぜか確認するかのように聞いてくる人が多い。血液中の活性酸素が話題になった時に、それを話題にしてきた人がいた。「まず呼吸しないことが大切です。スポーツは厳禁です。寝ているのが理想です。次に血中酸素量を減らす必要があります。定期的に400cc献血で赤血球量を減らすことで解決できると思います。次にビタミンCの大量摂取が考えられます。ポリフェノール類もあります。ただ絶対安静で仕事もできないし筋肉量の減少の障害の方が圧倒的に悪影響になります。筋肉と血液循環の関連もあります。ベネフィットとしてはどうなのかと。その前にそういった生活でのストレスの方が大きすぎるのではないのかと思います」。彼はその答えを求めているわけではなく、私がどう答えるのかを楽しみにして話題を振ってくる人だ。こういった人は楽しい。
よくあるのは、「ココアって健康にもんた言っているよね。買おうとしたけどなかったんだけど、女房からせっつかれてさ。で、本当に健康にいいの?」
ネタ振りでしかないやつだ。「健康に良くても1日100g摂取するのはどうかと思いますよ。酒だって健康にいいのは少量でしょう」「だよね~だよね~」「今日はホットチョコを作ってあげてごまかしたらいかがですか。原材料は同じですから」「それいただき!」
ところがだ、アトキンス・ダイエット法の紹介があって以降、なにか男がおかしい。私の周りにも二人実践している人がいるが、医者をつけてやっている。成果は出ているが、そういった成功例があるせいなのだろうか、低糖質が話題になりやすい。そこで極端なのが出てきた。
「この前読んだ本なんだけど、白米って健康に悪いんだね。血糖値を急速にあげてインシュリンを急速に多く出させて、それで他のホルモンバランスが崩れてしまう。それが原因でアルツハイマーになったりするらしいんだよ。だから急速な血糖値上昇を防ぐためには、チャーハンのように米に油分がくるまったほうが健康に言っていうんだ。」
「かといってオリーブオイルのチャーハンって嫌だよ。ラードは美味しい。その前に脂の摂取量はどうなるの?」と別な人が言ってくれた。
「こういった議論は散々聞いてきたが、血糖値上昇で血管内でメイラード反応が起きると言い出すんじゃないでしょうね。37度でメイラード反応が起きて血管が硬化するというためには、どの程度の血糖値上昇が必要なのですかね」と私。
「糖尿病の増加も原因は白米だというんだよ。ガンもその急激な血糖値の上昇とホルモンバランスで起きるんだよ。うつ病もこれが原因だ」
「日照と自殺率の関連性は指摘されています」
「それでは北東北三県の自殺率と、秋田と岩手の自殺率が大体同じというのは説明つかないだろう。
「日照時間では北欧と南欧の自殺率ほどの差を話しているつもりです。北東北三県では高齢化に伴う自殺率が問題です。孤独死の問題もあります。経済的な問題もあります。どちらにしても高齢者が閉じこもってしまえば自殺する可能性はあると思います。その条件が北東北にはあるということでしょう。」
この方は、オバサンのような飛躍した知性の持ち主ではない。体型も推定身長175センチ体重68キロだからダイエットの必要もない。とは言っても血糖値が高めらしい。その不安はあるのかもしれないが、普段の理論性に対して、なぜここまでこの立ち読みした程度の本に固執するのかがわからない。
白米が悪いのだったら、月に10キロ白米を食べる私はとっくにアルツハイマーで、動脈硬化で、がんまみれだはずだがそういった兆候は今の所ない。
アメリカでは反知性というグループがある。あの進化論否定者が科学的言説と聖書の引用でわけのわからないことをいうやつなのだが、神ということではある程度の一貫性はある。
ただわかると思うが、ここではそれなりの知的な会話があるのだが、それ以上には決してなり得ないものがあった。
大阪の話は、その意味では面白かったかもしれない。橋本さんは攻撃的知的遊戯をエンターティーメントにできる人だったが、その周圍はどうしょうもない人たちだった。
そして彼はなぜ小泉元首相の方法論を単純に使ったのか。
そして彼は知的なはずなのに、なぜ半知性的にならざるを得なかったのか。その権力獲得意識を隠そうとはしなかったのか。
そこが今後考えさせることだ。
さてここで、健康法と長生きのパラドクスを紹介したい。60歳以降ガンになる可能性は増大する。血管障害も増大する。脳障害も増大する。長生きすればするほどリスクは大きい。痴呆症もある。60歳までで大体死ぬ社会では、このリスクは無くなる。
半知性とは、死に対する曖昧な態度から起きていると思う。