ナショPといっても普通の人はわからないだろう。ナショナルが作っていた業務用ストロボのことだ。PEシリーズで光量が60と48のものがあった。光の質は48の方が良かったのだが、これの60のシリーズを使い続けている。
どういった用途かといえば、30人程度の集合写真やロケでの商品撮影とか人物撮影に使われた。私も大体そういった用途だ。よくある小型ストロボが最大でも光量36程度なので、それらに比べれば3倍くらい大きいのだが、出力の大きさが魅力で、おまけに安かった。その上とても丈夫だった。今でも発行管が焼けていなければ、高電圧での放電で光るので電極の金属がその高熱で蒸発して石英のチューブに黄色い色をつけてゆく、特に昔は放電管からの紫外線を嫌ったので最初っから黄色に着色していたのがさらに強くなる、それさえなければ、いや当時のナショPはほとんど問題なく外部電源で動く。かなり丈夫だった。
実際のところ電池で動く大出力ストロボは、他にミニカムというメーカーがあったのだが、いかんせん高すぎた。ナショPより大出力で発光部は小型でも、電源部がそれなりの大きさと重さだったのだが、安定性が求められる写真館くらいしか使えなかったのではないのか。私は警察の鑑識が使っているところしか見たことがない。
ナショナルの時代はでっかい積層電池を使うもので、この積層電池が生産量が少なくなり価格が上がり、さらに製造中止でナショナルのシリーズから、パナソニックの時代のPE60-SGに変えた。10年以上は使った。今度は単2電池で動く。かなり軽量化できる。それをスペーサーを使って単3電池で使っていたから、もっと軽くなった。光量は60でも48のデザインで小さくなったし、可愛くなった。
直管の放電管2本で最大出力と最小出力で、光の色が変化することを最小に抑えたつくりは立派。ただ光を反射させる部分が小さくなって幾分光が硬くなった。そこが難点だったが、10年以上使って、いやナショPだから当たり前なのかもしれないが、色はおかしくならなかった。
今回壊れたのは電源部のインバーター回路だと思われる。7.2Vを数千ボルトに昇圧する回路の何処かが壊れたのだ。製造終了から年月がたちすぎた。修理が可能かどうかの前に、とりあえず今の仕事をこなさないといけない。
そこでゴドックス。しかも旧タイプのAD360。価格はセットで4万5000円なり。周囲でも使っているので割と安心しているが、何せ中国製。とはいえ中国製。真面目によくできています。操作系がかなり使いやすい。使いやすいが故になんかの拍子で設定が間違うことがあるのが怖いくらいに簡単。
ナショPだと意思を持って設定を変えないといけないくらい、硬く操作しなければいけなかった。言い過ぎかもしれないが使っている最中に何かに触って動かないようになっていた。あとは本当にロケの乱暴な使い方に耐えられるかだ。スタジオで使うAC電源のモノブロックストロボを外に持ち出せるようにしたものだから、発行管の交換とかアクセサリーの交換とか多様性に富んだ使い方ができる。ここが優れたところなのだが、外に出すことをまだうまく作れていないような気がする。そこに不安がある。あとはコンデンサーや電源部の部品がどの程度の耐久性なのか、そこが不安だ。
だがナショPより安いのだ。5年使えればいいのかなと考えている。中国製と思われるリチウム電池だが11.1V4.5Aというこなれた値のものだから、信用できるだろう。ただインバーター回路との間にシーリングがないので、水やゴミが入らないようにビニールテープでも巻いた方がいいかもしれない。
中国製だからパチモンだという向きはあるかもしれない。実は日本のサンパックがこれに近い商品を作ったことがあった。ただ出力が小さかったことと、いい商品だったがプロ以外ではその商品の魅力が伝わらなかった。なので製造中止になるのが早かった。
業務用特殊用途ですよ、という形のミニカムもいい商品だったのだが、少し蛸壺に入ったようなニッチすぎたものになっていた。
一番欲しかったのは、ガイドナンバー80以上のできるだけ小型の多様な用途の、そういったものだった。ナショPはその点限定的だった。サンパックの商品は帯に短し襷に長しで残念な結果になった。アマもプロもこういった商品が欲しかった。もちろん今の流行に乗った商品ではあるが、ど偉く低価格だ。
同じ写真を並べやがってと言われると思う。手前の睡蓮の花に影が出ていると思う。それと右奥がわずかに光が足りなくなっている。花弁の白が強調されている。カメラより1メータ程度の左斜め上からのライティングだ。点光源に近いチューブとリフレクターがいいのだろう。かなり柔らかい光だ。
もちろん写真の好みは上と下で違うと思うし、ライティングの技術とか露出の当て方とかもある。でもこれはかなりいい結果なのだ。
真面目に、日本が安めのストロボ市場から撤退してゆくのに、中国がいい商品を作ってくる、そうゆう時代だ。