鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

No.163 (高齢者紹介ビジネス)

2013-08-27 17:51:34 | 日記
朝日新聞からです。増える続ける単身あるいは夫婦のみの高齢者世帯の住まいと
して、サービス付高齢者向け住宅など、高齢者向け施設の建設ラッシュが続いて
います。これら高齢者に医療は不可欠であり、それに目をつけた仲介業者が患者
を紹介する見返りに、医師から仲介料を頂くというビジネスが横行(?)してい
るという記事です。

訪問診療(往診)を敬遠する医師が少なくない中、このような話にのってしまう
医師がいることにむしろ驚きます。余程、経営的に苦しいのでしょうか。

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高齢患者紹介ビジネス横行 「先生いい話あります…」

http://www.asahi.com/national/update/0825/TKY201308250022.html?ref=com_top6_1st

高齢者施設で暮らす患者をまとめて紹介してもらい、見返りに診療報酬の一部を
紹介業者に支払う医師が増えている。訪問診療の報酬が外来より高いことに着目
した「患者紹介ビジネス」に加担している形だ。法令の規制はなく、厚生労働省
は「患者をカネで買うような行為は不適切」として規制の検討に乗り出した。

 紹介業者は高齢者施設の患者を一挙に大量獲得し、訪問診療をする開業医に
話を持ちかけることが多い。紹介料の相場は、患者1人あたり診療報酬(月約
6万円)の2割だ。

 兵庫県の診療所。毎週金曜日、午前の診察が終わると、待合室で製薬会社や
医療機器メーカーの社員らが医師に次々と自社製品を売り込む。昨夏、ひとり
の営業マンが「患者を紹介したい」と切り出した。医師は意外な提案に驚き、
順番を後回しにして最後に彼だけを応接間に招き入れた。

 「先生にいい話を持ってきました。喜んでもらえると思います」
 営業マンは医師と患者を「マッチング」させていると言った。「これからは
在宅医療の時代ですね」と笑顔で話し、高齢者施設で暮らす患者を紹介するか
ら訪問診療してほしいと提案した。そして続けた。

 「収入(診療報酬)が入ったら、2割をコンサルタント料として頂きます。
ウチは完全成功報酬制です」

 さらに診療所のリストを見せ、「たくさんのお医者様にも契約して頂いてい
ます」と続けた。関西の医師50人ほどの名がある。訪問診療をしている医師
をインターネットで調べて営業していると明かした。1時間粘ったが、医師は
断った。

 福岡県の診療所にも別の業者が来た。医師は不審に思い、ひそかに録音した。
営業マンの声は柔らかい。

 「コンサルタントフィーという形で、毎月税込み合わせると1人1万575
0円をちょうだいさせて頂きます。検査で先生の報酬がどんどん上がっても、
うちは1万5750円と固定にさせて頂いているんですよ」

 ただし、紹介者が20人を超えると、紹介料は1人2万円に上がると付け加
えた。1回の訪問で診る患者が多いほど、効率良く診療報酬を得られるからだ。

 「この市場はちょっとしたバブルでして。パイの取り合いというか、いろん
な業者が参入してきて大変なんですよ」

 営業マンは「今のところグレーゾーン。規制が入るかもしれない」と危機感
を見せる一方、「いくらなら折り合えますか」「顔を見てもらえるだけでいい
と言う患者さんもいます」と食い下がった。30分後、断る医師に「あきらめ
てません。またうかがいますので」と言うところで録音は終わっている。

 朝日新聞の取材に少なくとも医師6人が業者と契約したことを認めた。紹介
先はサービス付き高齢者住宅や有料老人ホームの入居者がほとんど。一度に多
く診ることができる場所だ。

 ある医師は疑問を感じつつ、話に乗った。診療所を開いて数年。「患者を得
るため業者を利用してしまった。外来だけでは経営が苦しかった」と打ち明け
た。

■厚労省、規制を検討
 厚労省は(1)医師が過剰な診療をする可能性がある(2)患者が医療機関
を選ぶ自由を奪うことから「不適切な医療」と判断し、情報収集を進めている。
担当者は「想定していなかった。医者がそんなことをするはずはないと思って
いた」。業者の規制は難しく、医師への規制を検討し始めた。

     ◇

 〈訪問診療〉 緊急時に患者の求めで行く往診とは異なり、医師が通院困難
な患者が住む自宅や施設へ定期的に出向く診療。1人を診て得る訪問診療料は
1回8300円。これに処方箋(せん)料や検査料などが上乗せされる。24
時間体制の診療所から月2回以上訪問すると月4万2千円加算され、医師が得
る合計は月6万円を超す。

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No.161 ( 一緒に学ぼう 社会保障のABC:第14回)

2013-08-27 10:04:39 | 日記
国民健康保険がどのような経緯で社会保険方式を採用し、その際問題となる低所
得者への扱いをどうしたのかについて解説しています。

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国民皆保険・皆年金(13)国民健康保険の内容
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 <国民皆保険・皆年金(7)「国民年金の創設」>の回で、国民年金制度がな
ぜ社会保険方式になったのか、また、保険料を払えない低所得の人の扱いはどう
したのかについてご紹介しました。そこで今回は、国民健康保険制度の場合はど
うだったのかについて、見ていきたいと思います。

■社会保険方式を採用

 国民健康保険制度は、1938年(昭和13年)に始まりました。当時のこと
を記した文献(「国民健康保険二十年史」、全国国民健康保険団体中央会、19
58年)を読むと、次のような記述があります(読みやすいように要約・意訳し
てあります)。

 <(大正から昭和にかけて)被用者を対象にした健康保険制度ができ、相当の
成績を上げていたが、医療保険制度がない農山漁村の住民は大きな医療問題を抱
えていた。都市部に比べ、農山漁村には医療機関が少なく、診療には多額の費用
がかかるため、多くの住民は「経済的な重圧」に苦しんでいた。

 そうした状況を解決する方法として(1)無料診療所(2)軽費診療事業(3)
共済保険医療事業があった。だが、(1)は、病人には一切負担を求めないため、
巨額の税金が必要となり、国や自治体がその費用負担に耐えられるか、はなはだ
疑問である。(2)は、医療費軽減に相当の効果は見込めるが、軽減はどこまで
も軽減なので、個人の経済的重圧の根本的な解決にはならない。

 (3)は、健康保険制度や共済組合制度などのことで、この制度は、相互共済
の精神にのっとり、加入者が負担するから、巨額の税金が必要になることはない。
また、加入者は負担の見返りの「権利」として、給付を受け取ることができる。
給付が確実に受けられるようになれば、病気による生活不安は除かれ、日常生活
は安定する。また、単なる救済や補助は、国民の気力を減退させる恐れもある。
リスク分散という機能を持つ保険制度では、多額の医療費を多人数の負担によっ
て賄えるため、医療費の重圧からの解放も見込める。このような思想から、国民
健康保険制度は立案されたと思える>

 つまり、税方式で行うと莫大な税金が必要と見込まれること、また、社会保険
方式の方が給付の権利性が強いと考えられたことなどがうかがえます。

 国民健康保険制度が成立するまでの間、何度も要綱案が作られ、内容が変わっ
たところもありますが、社会保険方式については、当初の段階からぶれがありま
せん。その理由としては、上記に挙げた要素のほか、既に実施されていた被用者
対象の健康保険制度が社会保険方式で行われていた影響もあるのかもしれません。

■低所得者の扱いは

 社会保険方式で全ての人に医療を保障する場合、問題となるのは、保険料を払
えない低所得者をどうするかです。

 国民健康保険法ができた当初は、運営を行う組合の設立は任意で、加入も原則
として任意でした。組合が設立され、例外的にその地区の人が強制加入とされた
場合でも、被用者保険に加入している人と並んで、「特別な理由のある人で、組
合の規約で定める人」は適用除外の対象とされました。具体的には、多額の収入
のある人や、低所得者などです。多額の収入のある人は保険に加入する必要はな
いし、低所得者は、「保険料を拠出して給付を得る」という社会保険の原理から
見て、加入する能力がないと考えられたためのようです。ただし、この適用除外
は、加入を望んだ人まで拒むものではない(任意加入はできる)ものとされまし
た。その後、適用除外対象者から、高額所得者は外れました。

 低所得者の場合は、任意加入が可能といっても、現実に保険料を払うのは難し
いといえます。実際、組合に代わって保険の運営者が原則として市町村となった
後も、地方税(住民税)を免除されているような低所得者は、ほとんど例外なく
除外されていたようです。

 しかし、「国民皆保険」を達成するために、全市町村に保険の運営者になるこ
とを義務付け、被用者保険に加入していない住民は全て国民健康保険制度に加入
することを定めた1958年の国民健康保険法の全面改正後は、低所得者の扱い
はどうしたのでしょうか。この問題については、次回、見てみたいと思います。

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