鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

日本クリニカルパス学会:報告2

2014-11-17 17:16:25 | 日記



学会2日目に、丸谷先生ご登壇のパネルディスカッション「地域連携パスのアウトカム評価とバリアンス分析」が行われました。

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パネルディスカッション 「地域連携パスのアウトカム評価とバリアンス分析」
座長:重田由美氏、下村裕見子氏
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・大腿骨頚部骨折地域連携パスのアウトカム評価・バリアンス分析
 青森県立中央病院整形外科 伊藤淳二氏

 パス登録数:1357例(適用率:77%)
 中間アウトカムにより予後を予測し、最短時間で目標に到達できるようにパスを活用
 約80%が元の生活環境へ戻れた
 再骨折予防には骨粗鬆症の治療は不可欠、今後の課題!

・前立腺がん地域連携パスのバリアンス分析に基づいた課題
 武蔵野赤十字病院 医療連携センター 田中良典

 前立腺がん地域連携パス:医師会との二人主治医制による循環型地域連携パス
 312例中、247例が継続されていた
 運用上のバリアンスは、受診なし、受診遅れ、早期受診
 →現場では気づけないので連携センターが介入した
 連携が継続できる要因の関連性は、連携の「実績」と「主治医」であり、専門性、治療などは関連しない。

・医師会完全主導の脳卒中と認知症の地域完結型地域連携パス
 広島市立安佐市民病院 神経内科 山下拓史氏

 脳卒中パス、安佐地域完結型、医師会の協力で運用
 維持期(かかりつけ医):106医療機関
 登録数:715名 適用率 30%
 在院日数:急性期:32.9、回復期、82.0日、維持期:3年間フォロー

 認知症地域連携パス
 医師会、行政、専門医療機関、地域包括支援センター、ケアマネ、介護職などで共有する
 「脳の健康パスポート」(手帳で情報共有)を発行し、運用している。

・疾病管理を目指した脳卒中地域連携パスのデータ分析
 鶴岡市立荘内病院 神経内科 丸谷 宏氏

 地域の脳卒中患者をほぼ全登録、維持期までIT化し、リアルタイムにデータベース化して管理
 初期のデータ解析から、30%が再発、70%に高血圧症
 →「再発予防」と「ADL低下防止」をアウトカムとして疾病管理型地域連携パスを運用
 年1回、データマイニング委員会で集計表を作成し、バリアンス分析を行っている、
 データ解析から、維持期パス群で、非パス群に比し、早期再発率が低い傾向にある
 また、心房細動が脳卒中のリスクとして有意に高いことが分かった
 近年、患者向けあるいは介護系職種との情報共有ツールとして私の健康ノートを作成し、運用を開始した。

・医療ICTを介して糖尿病地域連携パスと疾病管理マップの開発
 香川大学医学部附属病院 内分泌代謝内科 村尾孝児氏

 かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)を利用し、
 5年間、糖尿病の地域連携パスの普及に取り組んだが、その必要性に疑問が残った
 疾病管理マップを導入し、糖尿病患者をミニマムデータセットで層別化し、
 重症化、透析予防に取り組んでいる


地域連携パスは作成しただけでは十分ではありません。評価分析し疾病管理に活かしていくことが重要になります。5つの病院~地域から、大腿骨骨折、脳卒中、認知症、糖尿病の地域連携パスの報告があり、パネルディスカッションが行われました。

地域連携パスのデータをきちんと分析している地域は全国的にも限られているのが現状です。また、データ分析も個人の努力に負っているところが多く、鶴岡のようにデータマイニング委員会を組織して取り組んでいるところは聞いたことがありません。改めて、鶴岡地区に地域連携パスの先進性を再認識しました。

以下はパス学会における地域連携パス関連の演題数の推移をみたもの(ストロハット社作成)。
地域連携パスの報告数は年々減少傾向にあるようです。
また、山形県(鶴岡)からの報告数は突出しています。

https://drive.google.com/file/d/0BzItwTwB_6zeWnVMQ0diNTQyUWM/view?usp=sharing

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日本クリニカルパス学会:報告1

2014-11-17 16:56:41 | 日記


11月14-15日に福井県やわら温泉で行われた第5回クリニカルパス学会に参加してきました。

http://www.f-gh.jp/jscp15/

温泉地を利用して学会を開催するのは初の試みとのことで、4つの温泉旅館を会場として利用し、その間はシャトルバスでの移動という学会でした。参加者は、1200名ほどでしたが、ユニークだったのは懇親会。全員参加型の懇親会は会場の都合でできないため、それぞれが宿泊している旅館毎に懇親会が行われました。300-400人のお座敷による懇親会は壮観でかつ盛り上がりました。


さた、今回は庄内南部地域連携パス推進協議会から、シンポジストとして2題、ポスター展示として6題の計8題を報告しました。順次報告します。

シンポジウム 「患者さんから見た地域連携パス」
座長 石田陽一氏、三原美雪氏

・基調講演
 患者の治療継続を支援する道具としての地域連携クリニカルパス
 北里大学医学部精神科学 下村裕見子氏

・二人主治医制の循環型がん連携パスは患者に役立っているか
 武蔵野赤十字病院 泌尿器科 田中良典氏

・患者さんからみたがん地域連携パス
 福井県済生会病院外科 宗本義則氏

・脳卒中地域連携パスにおける患者用パスとは
 産業医科大学リハビリテーション医学講座 高畠英明氏

・患者さんのメリットを考えて循環器地域連携パス
 トヨタ記念病院 内科 石木良治氏

・CDD地域連携パスの効果と問題点
 富山市立富山市民病院 看護部 浦田千賀子氏

・「わたしの健康ノート 作成における事務局としての関わり」
 鶴岡地区医師会地域医療連携室 遠藤貴恵氏

・患者の生活を支える地域連携パス
 多附輿風会医学研究所 北野病院腎臓内科 米本智美氏


 地域連携パスが各地で運用されているが、本来あるべき患者視点での地域連携パスとして機能しているのかというテーマでのシンポジウムで、7人のシンポジストからの報告がありました。当地区からは、遠藤さんが「わたしの健康ノート 作成における事務局としての関わり」と題して、当地区の地域連携パスの歴史を踏まえ、会の運営や私の健康ノートなどのツールの作成における事務局機能の重要性について講演しました。

「患者さんから見て良かったと思う地域連携パスとは」という座長の問いに対するシンポジストの意見を列記しておきます。

 関わる人が一丸となる
 患者満足度が目的であることを忘れてならない
  一方で、患者の満足度を評価することは難しい
 ハイブリット制(二人主治医制)を継続すること
 患者がとってもっと満足できるよう考えていきたい
 患者さんの不安を取り除くこと、多職種が活動していくことが大事
 患者さんの視点という点では、まだまだだと思う



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