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江戸期の学問

2005年08月27日 | 歴史
江戸時代270年は、サムライはむろん学問をする階級だったが、庶民の子弟も、将来商家の支配人となったり、商船の船長になったりするためには文字や算術を身につけねばならず、自費で寺子屋に通った。
江戸時代末期、識字率は7~80%だったといわれている。また大阪という都市で発行されている初等教育の教科書が1万種ほどもあったといわれている。

この時代、武士の時代のように思われがちだが、じつは圧倒的に商人の時代でもあった。とくに中期以降、日本中が商品経済という大きな潮流によって大小の渦を巻いていたという時代だった。
このため、学問は実証的になった。
本来、中国学の学者だった荻生徂徠(おぎゅうそらい1666-1728)や政治家でもあった新井白石(1657-1725)の学問は、ほとんどこんにちの人文科学に近いものになった。これは圧倒的な商品経済の輻射熱によるものだ。
小説家である井原西鶴(1642-93)の目も、文体も、商人のソロバンの音のように物質的でクールだった。
思想の面でも、多くの面白い文章作品が登場した。
たとえば、大乗仏教の経典は釈迦とは何の関係もなく、後世の作者たちの創作であると、歴史的に、また比較哲学的に論証した富永仲基(なかもと1715-46)の『出定後語(しゅつじょうごご)』がでた。
富永仲基は商人の子だったが、同じく商人の支配人として生涯を送った山片播桃(やまがたばんとう1748-1821)は、財政家でもあり、天文学者でもあった。さらには、徹底的な神秘主義の排撃者で、この世に神秘は存在しないという無神論を『夢の代』という著作で展開した。

また一方では、江戸期のひとびとは自分の口語言語を訓練するために、共通した方法をもっていた。
武士階級は、必須教養として謡曲を習った。能の脚本を文学作品として見、多少の節をつけて学び、言葉遣いが下品にならぬよう心がけた。これに対し、商人階級は浄瑠璃を学んだ。それによって言葉を洗練させるとともに、他人と交渉する場合の修辞のために役立てた。
謡曲も浄瑠璃も、早期資本主義という殺風景な社会で、精神の栄養になった。

. 「司馬遼太郎が考えたこと⑭文学から見た日本歴史」より
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5 コメント

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TBありがとう (よーさん)
2005-08-27 18:28:46
江戸期の庶民の識字率は世界の中でも抜群に高かったのですよね。

近々、寺子屋について書こうと思っていますので、そのときTBさせて貰いますね。
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コメント有難うございます (JASMINE)
2005-08-28 13:52:50
iinaさん、コメントどうも有り難うございます☆

武士階級も商人階級も、言葉を重んじていたというのに惹かれます。

年を重ねる毎に、言葉の持つ力や言葉遣いの大切さを思うようになりました。

iinaさんの『ことば遊び』、楽しく読ませていただきましたよ。



司馬さんの作品の説得力は素晴らしいですよね。

『自分が知りたいことを調べたものを文章にしました』というような事を書いていたので、なるほど、と思ったことがあります。(それにしても恐ろしく謙虚な人ですね。)

個人的には彼の人物描写も好きです。登場人物の考え方は、実生活でも参考にしています。

iinaさんは司馬さんがとてもお好きなのですね。

『街道をゆく』、いつか読んでみたいです。(全43巻!!)



>ちょうど『司馬遼太郎が考えたこと 』全15巻を読み上げたところです。

司馬作品は、古文書等々から生の手紙まで含めて読み敷いて考えたところを綴っているので、説得力がありますね。

『街道をゆく』全43巻も、1巻はさりげない様子で始まって、最後は「濃尾平野」なので信長の生涯について触れて、それが読みに読み敷いていて息もつかせぬ勢いで筋にひきつけますよ。最後は圧巻ですね。氏の早すぎた死で、突然終わってしまって残念ではあります。
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トラックバックありがとうございました。 (ガチャ☆ピン子)
2005-08-28 14:57:54
また寄らせてもらいます。

トラックバックさせていただきました。
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Unknown (吉松ひろむ)
2005-08-29 13:57:20
司馬遼太郎がある火あぶり刑に服した人間の死後の行動について、検死の役人が梯子を登って確かめようとした時、焼け死んだはずの獄人がいきなり検死役人の刀に手をかけて刺殺し、恨みを晴らした。ことについて、私はその行為を信ずる、と書いたが、仏教的なこの思想について、つまり生命の永遠性について深く考えさせられたのだった。



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TB (よーさん)
2005-09-08 09:37:22
TB重複

すみません。TBさせてもらって、このページ確認にきたら、TBされていなかったので、再度、TBしたら、ダブっています。一つ、削除して置いてください。
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